ひよこ日記 素材殺しの女
地獄のクローゼットチェックを終え、部屋は洋服とアクセサリーと靴とバックで泥棒が入ったのかな?くらいに散乱した状態になっている。
ヨハン先生は洋服類が散乱する中、ベッドカバーやファブリック類を手で撫ではじめた。お洗濯表示か何かを確認している。
ヨハン先生が部屋からでてバスルームの確認に行ったのを確認してスタイリストさんは服の上からササッとメジャーでサイズを測っていった。スタイリストの先生は下着のアドバイザーでもあるらしい。
ヨハン先生。こっちは買い替え必須ー!て叫ばれた。
なーぜ?バスルームから声がする。
サイズあってないの。もったいないわ。お胸とおしりつぶしちゃってる。
ドアがバーンとあいた。
…あんたね…
だからそこそこなのよっ!!
ところで…ひよこ。あんたちゃんと寝れてる?と聞かれた。
ベッドカバーとか枕カバーとか変えたほうがいいんじゃない?あと、お洗濯洗剤とかも。
たまに首とか肘の内側とかポリポリ掻いてるわよね?あれ、気になってたの。クセなのかなとも思ったんだけど。疲れたり、体調不良のときとかお洋服とかチクチクしたりカユカユになったりしない?それにさっきのプチプラアクセサあんたあれしてる時耳をやたら触って耳を掻いてたわ。夕飯に誘った時につけてたそのゴールドのピアスのときはそんなことしなかったわ。
!!
食べ物やその他のアレルギー検査は来る前にしてもらってきたじゃない?あんたを引き受けないといけないこちらとしては大切なことだからだからなーんかおかしいなっておもってたの。
…マジで?
服は新しいもの買う必要は今はないわ。
靴もバックもアクセサリーもよ。
スタイリストの先生に今ある手持ちの服の中だけで組み合わせてもらいなさい。十分すぎるほどに洋服あるからこれ以上は今はいらないわ。
買わなければならないのはベッドカバーや枕カバーやパジャマ、下着、タオル。洗剤にも気をつかいなさい。
ヨハン先生はいきなりエンジンがかかったのかブワァーと喋りだした。
質が良いものをえらびなさい。あんたにふさわしいモノしか手に取っちゃダメっ!!
それが消耗品であろうとも!!
くうう…
事務所に戻ってメイクアップアーティストの先生にわたしに似合う髪型を提案してもらった。
ショートならこれ、ボブならこれ、セミロングならこれ、ロングならこれ。
わたしはヘアアレンジが壊滅的にできない女なのでそれを正直に話した。ボブなら
だいたいのシチュエーションの服に対応できそうだとウィッグを被せてくれてイメージしやすいように見せてくれた。
結果胸まで伸び放題だった髪はボブヘアに生まれ変わった。そしてメイク。
一回みんなやってみたかったラノベ転生令嬢お決まりの
これがわたし?(キラキラキラキラ)ごっこを一緒にやってくれたのだった。
なぜ流行りのメイクがミリも似合わないのかメイクアップアーティストさんが懇切丁寧に説明してくれ。それから使い方も教わった。
聞けば聞くほどわたしは自分に合わないことばっかりを選択してやっていたらしい。
もうマジで絶望しかない。
がっくり肩を落としたわたしに
ヨハン先生は追い討ちをかけた。
素晴らしいくらいに素材を活かせない女よね。むしろ素材殺しに長けてるわ。
そんなあだ名もらいたくない。
全部買い換えるとなるとものすごいお金がかかる。それに加えてクリニックの治療やスポーツトレーナーさんの施術に伴走してランニングフォームを確認します。とかインソール作れとかどーしたらいいのかわからなくなってきた。それに定期預金解約するのは許さん!とフレデリック大先生からキツくいわれている。
良いのはわかる。でも買えない。ジレンマがすごい。
散々悩んだ挙げ句にわたしはパリの自宅に恐る恐る電話をかけたのだった。
もしもし?
どうしたんだ?自宅にかけてくるなんてなんかあったのか?
あったどころじゃねーよ。こんな話したくない。
あのその病院にかかりまして…
はっ?!病院?
その、なんていうか。いや具合が、悪いわけじゃなくて。話せば長いというか…
自宅電話をスピーカーホンにしていたのかアルベルトが電話をひったくったぽい。
何があったの!ひよこちゃん!
いやその、大事な話がありまして。
フレッド!チケット!
今取った。明日あさイチの便2枚
え…
ヤバいぞ。ヤバいぞ。来ちゃうじゃん!!
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