緩和医療と終末期医療

もう15年以上になります、80代後半の患者さんの主治医をして。。。

5年前に見つけた膀胱がん、手術をして頂きましたが昨年再発が確認されました。当該施設で治療適応外とのことでBest supportive careを勧められ、当院へ戻ってきました。もともと、2005年に中部閉塞性肥大型心筋症MVO-HCMの診断をつけ生検も行い、外来で見てきました。どれほどの病気を乗り越えてきたでしょうか?10では治らないです。いろいろなことがありました。その都度相談しながら、その時に最善と考えた治療・方向に進んできました。現在、ICD、PTGBDチューブ、膀胱癌再発による尿道閉塞のためバルーン留置、BSC目的にポートが作成されています。これまで何度となく心不全の危機的状況を乗り切ってきました。しかし、膀胱がん再発、肉腫の進展を認め大学病院でBSCを勧められて以後、PTGBDを留置したぐらいで、もうできることがありません。家族と本人、往診医やMSW、薬剤師など全員で相談して、緩和ケア目的に転院、最後は望み通り在宅での看取りを往診医にお願いしておりました。

 が、先日、当院へ救急入院されました。少しずつ尿量が減ってきて全身の浮腫が目立ってきた段階で、往診医が「癌ではなく、心臓で死ぬよ。」と言って当院受診を勧められたからとのこと。これまでも私が何度も「なんとかしてきた」からだと思います。往診医も家族も何とかなると思ったのでしょう。が、しかし今回は訳が違います。見るからに悪液質となっており呼吸促迫、全身浮腫、膀胱がんに伴うリンパ節腫大など。。。

前回当院を退院する前のカンファレンスで説明した最終段階がきたのです。そこを在宅で見ていって欲しいと、癌も心臓もいずれも末期であって入院して改善する余地がないことも、大切なのは最後を迎えるまでの穏やかな日常であることも。。。家族や本人と相談して決めた「最後の着地」であったはずなのに、なぜ当院への入院を往診医は勧めたのか?巷では評判の緩和ケアを生業としている医師ですが、ひょっとすると心不全には緩和医療が結びつかなかったのかも知れません。昔ながらの癌末期=終末期医療、緩和ケアであったのでしょう。

あと数日も持ちません。在宅にも返せません。本当に残念です。もっともっと緩和医療のあり方を広めるべきです。ACPとかADもいいですが、それよりもまず、近隣の先生方に終末期医療、緩和医療を学んでほしいです。もちろん、我々も、もっともっと深く考えていく必要がある分野です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?