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両肩に勢いよく手がのっかってくる。左にすこし重さは振れてチャリが傾きそうになった。なん…
地下鉄のホームは温くて湿っぽかった。 なかなか開かない線路沿いの扉の前で立ち尽くしてい…
きっと意味のないところで鳥は鳴かない。 そう教えてくれた人の想い出はぼんやりと、竹と…
目の前にいたその女は画面とは別物だった。 画面からそのまま飛び出た姿を何度となく思い…
ゆっくりと静かに開かれた扉からは女性が出てきた。このタイプの扉であれば多少は金属の擦れ…
「雪が降ったら火の元注意」という小学生が絵を描いたらしいポスターの横に「毎週あなたを待…
身体が温まると目の前にいるわたしが見えなかった。多分見えるはずの私は毛をむしられた鶏皮のような肌の色をしていて規則性なくむやみやたらに押された小さい黒子が並んでいる。赤い絵の具の筆を水につけた時くらいにほんのりと火照って水滴がいくつかついているであろう顔はきっとそそり勃たせるような艶かしさを孕んでいると私は思う。 今日は一週間ほど前の春の陽気は何処へやらと天気予報を伝える勘所の悪そうなキャスターが傘をさしながらそれはいかにも寒そうだと言わんばかりの薄手のワンピースに短尺
カレーが先に出てきた。飲み物よりも何よりも先に。スプーンより先に出てきたことには逆に気…
道端に靴下が落ちていた。 昼間、車通りの多くない住宅街にポツンと置かれた小さな畑の小…
空は曖昧だ。 晴れた日はどこまでも青で、視覚で捉えることのできるくっきりとしたオブジ…
稲熊と申します。 自己紹介早稲田大学 文化構想学部 文芸・ジャーナリズム論系 芳川泰久 創作…