「月見の歌会」のふりかえり
9/10(土)17:00−20:00、中秋の名月に神戸市にある須磨寺で行った「月見の歌会」。今年から一般公開となり、蓋を開けてみるとびっくり!100名を越える方にお越しいただきました。ありがとうございます!
この記事では当日の様子、演出秘話(模索)、今後の抱負について、まとめています。
参加者の感想
当日ご参加いただいた方が早速、体験レポートを発信してくださいました!司会者も観客席もないなか、お越しいただいた方が、思い思いにお月見を楽しんでくださったようです。
さて、一般公開をするにあたって、
わたしたちが懸念していたことが3つありました。
心配だったこと
順に解説していきます。
①灯係の誕生 ←事情を知らない方がお越しになった時に、事情を知らないことで悪者になってしまわないか
一般公開することで、不特定多数の方がいらっしゃいます。
事前にHPを見て、歌会の趣旨をご理解いただいてお越しになる方もいらっしゃれば、人の流れで「あれ、今日、須磨寺で何かやってる?」と、ふらっとお越しになる方もいるかもしれません。
須磨で長年コミュニティづくりに携われている方から、ご指摘とアイデアをいただき、これは演出に加えようと思いました。
必要最小限の仕草と言葉で、HPに書いてある趣旨をそれとなく伝える。
かくして、灯係が誕生しました。
・入口で線香に火を灯すよう促す
・4人1組で会場まで行燈の灯でご案内する
リハなし、初めまして、当日ぶっつけ本番にもかかわらず、灯係のみなさんの力で形にすることができました。事情をご存じない方も安心して、お月見を楽しまれたのではと思いますが、いかがだったでしょうか。
②目を閉じる時間 ←みんながフラッシュ撮影を始めて、闇夜の魔法がとけてしまわないか
月見の歌会は、月明かりと包み込むような闇夜を、みんなで分かち合う場所です。ですので、貴重な闇を削らないように、人工照明を一切使いません。須磨寺さんご協力のもと、境内の明かりもほぼ全て消灯し、行燈の明かりだけで、ライトスケープをデザインしました。
ですが、ひとつ懸念点がありました。フラッシュ撮影です。
フラッシュ撮影があると、一瞬で、闇夜の魔法がとけます。場が白ける、とも言えます。なので、いかに当日、フラッシュ撮影を行わない雰囲気・合意を参加者の間で作れるか、わたしたちは悩みました。
暗くなれば、行燈の案内だけで、写真をパシャパシャ撮る場ではないことを暗に伝えられるかもしれません。今年の日の入は18:14。歌会の開始が日の入30分後の18:40ごろだと、何の問題もありません。
でも、わたしたちには門限がありました。
20:00には歌会を閉じないといけない。日がすっかり落ちてからご案内すると、およそ1時間弱しか歌会の時間がありません。これでは、ゆっくりとお月見ができません。
明るい時間でも、闇を感じる時間をどうにか作れないか。それが、階段に登る前にご協力いただいた、目を閉じる時間でした。
目を閉じることをお願いしたことで、「音に敏感になって、気持ちがとても整った」という感想をいただいた一方で、「目を閉じることに強制感を感じた」というお声もいただきました。
目閉じることがどれくらい寄与したかわかりませんでしたが、フラッシュ撮影はほとんどなかったと記憶しています。わたしがフラッシュを当てられたのはたった一回です。
一般公開前でさえ、フラッシュ撮影される方が一定数いらっしゃいました。100人を越える方が「闇夜を大切にする」という趣旨にご賛同いただき、撮影よりも眼で月を愛でる時間を一緒に作れたことは、とても尊いことだと思います。
この目を閉じる時間で明るい時間に闇を作れたか、必要な時間だったのかについては、来年までに、よく吟味したいです。
みなさんの感想をぜひ聞かせてください。
③音と光をつけて、消す ←始めと終わりを明確にすることで、思い思いの時間を壊してしまわないか
お越しになる方の自主性を大切にしたいので、月見の歌会では、明確なアナウンスをしません。司会もいなければ、観客席も、タイムスケジュールもありません。好きな時に会場にお越しいただき、好きなタイミングでお帰りいただく。いつの間にか始まっていて、いつの間にか終わっている。これが例年の月見の歌会でした。
お越しになった方の思い思いの時間を切断しないように、淡く始まり、淡く終わるにはどうすればいいか。今年の試みとして、鳴子と灯で始まりと終わりを演出してみました。特に終了は、鳴子の合図で行燈の灯をすべて消し、最後の和歌を読み上げる。和歌を読み終えると、二つの灯が南を向いて整列し、みなさまに一礼して、階段を降りて、会場を離れる。この視覚情報をもって歌会の終了としました。
ただ、必ずしもみなさんが灯をご覧いただいていたわけではなかったようで、「いつ終わったかわからなくて、ちょっとモヤモヤした」というご感想もいただきました。
もっと明確に歌会が始まったこと、終わったことを告げるか。あるいは引き続き、淡くいつの間にか終わっていくようにするか。来年の検討課題です。みなさんはどう感じましたか?
以上が、今年の演出の秘話(模索)でした。
最後に、来年の抱負を短く書きます。
来年の抱負
①綾小路流披講さんをお招きしてコーラスしたい
②笛奏者、笙奏者さんをお招きしたい
③須磨近辺の学校で和歌を教えたい
④クラファンで装束を調達したい
①綾小路流披講さんをお招きしてコーラスしたい
和歌を披講(声に出して読む)するには、じつは最小編成でも2名必要です。今は超変速的に、わたしが3役をこなしている状態です(講師、発声、講頌)。わたし以外にもう一名、披講がいると、「返し」という表現ができます。これは「素敵な和歌だ!」と思った時に、2回繰り返して、節をつけて読み上げる行為です。返しがあると、歌会が盛り上がります。
綾小路流披講をされる方をこの5年間、ずっと探しているのですが、まだ見つかっていません。
②笛奏者、笙奏者さんをお招きしたい
篠笛・能管をされておられる方、笙を吹かれる方で、月見の歌会に参加してみたい!という方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。
③須磨近辺の学校で和歌を教えたい
和歌は、残念ながら、簡単に詠む文学になっていません。おそらく「慣れ」と「書き溜める」ということが大切で、その機会を作りたい。具体的には須磨寺近辺の学校で和歌のワークショップをやりたいです。
授業で作ってくれた和歌のうち、いくつかを歌会の冒頭に披講します。授業で作った自分の和歌が、教科書に載っているような人たちが読み上げる。月見の歌会を体感することで、すこしでも古典・古文に興味を持ってくれる子が増えるのではと期待しています。
須磨寺近辺の学校ですと、下記がありますね。
須磨浦学園 須磨浦小学校
マリスト国際学校
神戸市立西須磨小学校
神戸市立北須磨小学校
兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校
神戸国際中学校・高等学校
④クラファンで装束を調達したい
祭りの雰囲気を高めるために、平安時代のデザインである「有職紋」にならった装束を揃えたいです。女性だと40万円、男性だと30万円ほどします。これをクラウドファンディングでみんなでゲットしたい。
装束保管について、須磨寺さんからご了承をいただきました。なので、装束が手に入ったら、須磨寺さんに奉納したいです(所有権は須磨寺さんへ)。
奉納したら、装束を拝観する機会を設けたいです。歌会前日に虫干しを兼ねて拝観、当日は演者が着装、歌会翌日に虫干しを兼ねて拝観。例えば、一人100円いただいたとして、100人いらっしゃれば1万円になります。それをそっくりそのまま須磨寺さんにお納めします。
装束があることで、歌会前後3日間、須磨寺にたくさんの方がお越しになるきっかけができます。装束は月見の歌会とセットで、地域の文化財になります。
以上、令和四年・月見の歌会のふりかえりでした。改めて須磨寺にお越しになったすべてのみなさん、ありがとうございました。来年も一緒に月を眺めましょう!
披講: 世見 明
篠笛: 藤舎 時生
琵琶: 児島 旭玲
灯係: 菅 智子、床津 恵子、Okabe Toshiko、村井 雄亮、丸山 佳子、岩出 郁美
生花: 松岡 要子、梅津 京子、穐村 薫
撮影: 宰井 琢騰
音響: 筒井 洋一
WEB:玉利 康延
会場: 小池 陽人
企画: 幸内 政年
後見: 衣笠 収
総合演出: 世見 明
まさかお金が振り込まれることはあるまい、と高を括っているので、サポートされたら、とりあえず「ふぁ!」って叫びます。