地域医療実習と医学教育

来月の10月から、医学部の学生(5年生)が "地域医療実習"という大学の教育カリキュラムの一環として私のもとへ訪れることになりました。「厚生労働省臨床研修指導医」という資格を取得してから初めての実習生の受け入れになります。

医学部は5年生になると病院実習が本格的に開始されます。医学部に付属する大学病院での実習が主体ですが、地域医療を担う一般の病院や医院も実習先として教育カリキュラムに組み込まれています。

思い出話になりますが、私もかつて5年生の時に開業医のもとを訪れ、実際に行われている地域医療を目の当たりにしながら、何も出来ずただじっと見ていたことを記憶しています。親切な先生はそんな私に隙間時間で様々なことを教えて下さりました。振り返ると、その後に自分が読んだどんな医学書にも記述されていないその先生独特の教えが多く含まれていたことに気付きます。

「医師は役者であれ」

もその一つでした。医療は「人間」を相手にしますから、様々な価値観と向き合わなければなりません。その多様な価値観を持つ人間と接する際には、医師が相手に合わせて接しなさいということです。つまり相手に合わせて様々なキャラクターを演じる役者になるのです。そうすれば診察室でのコミュニケーションは円滑に進み良い信頼関係が築けるのですね。

まさに

オーダーメードの医療

ではないですか!笑


さて話を戻しますが、医学部5年生というのは身分は学生でありながら、年齢としては社会人です。大学の外に出れば社会人としての立ち振る舞いが求められます。

上級医とのアポイントメントの取り方をはじめ、実習先の科(◯◯内科、〇〇外科など)でお世話になるスタッフの方々に対する礼儀やマナーは心得ていなければなりません。そして何より来院患者さんやそのご家族への配慮ができるかは、医療者としての資質が問われるものです。

とはいえ、私も然り、いつまでも学生気分は抜けないものです。試行錯誤で間違いを指摘されながら少しずつ身につけていけば良いものも沢山あります。

医学部に付属している大学病院の大事な役割に "教育" があります。学生生活が6年間と長く世間知らずに陥りやすい医学部生だからこそ、医療の教育だけではなく同時に社会人としての立ち振る舞いも教育に含むべきだと思います。


さあ、これからどのような学生が訪れてくるのかとても楽しみです。

一方、かつて私の指導をして下さった方々と同じことが出来るのだろうか。果たして心に残る何かを伝授してあげることが自分に出来るのか。不安は絶えません。

しかし、将来活躍する医師の卵に対して、短期間であっても教育に最善を尽くす覚悟を持ち始めた今日この頃であります。

最後までどうも有難うございました。


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