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マルタ・セバスチェン「すみれ色の大地」

1980年代に吹き荒ぶニューウェーブという嵐の中、微かに聞こえてきた短波ラジオのような存在だった。マルタ・セバスチェン母国ハンガリー民謡はもとより、ブルガリアからギリシャ、ユーラシア中を唄いこなす。


ブルガリアンヴォイスがUKインディーレーベル4ADからのリリースであることも起因した後のワールドミュージックブーム。

ハンガリーのマルタ・セバスチェンの唄声を機にケルトに向いていた耳はバルカン半島、スラブ、地中海、ギリシャへと移っていった。

1989年アルファエンタープライズより発売された「ハンガリー・フォーク・シリーズ」カタログNo.LT-4が「すみれ色の大地」。本国では1987年にリリースされた作品。

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シーラ・チャンドラ、中東のオフラ・ハザらが従来のエスノ・ポップを塗り替え下地はできていた。それでも彼女が奏でる音は圧倒的だった。例えばそこに1979年Holger Czukayがサンプリングしたコーランのラジオ、ナジマ、ウクライナ民謡、中南米のインカンテーション(これはベガーズ・バンケットが仕掛けた)、トレーシー・チャップマン、ナタリー・マーチャント、モンゴルのホーミー(喉歌)、ケルト胡弓の響きと笙の音色、などが一つの繋がりを持っていることを感じる。ラスト「TEREMTES」(創造)に至っては、それらが昇華し無限の拡がりを持つ空間へ分子のように跳び始める。

それから随分あとになって知ったこと。1996年には映画「The English Patient」のサントラが出ている。さらに遡る事1991年の映画「おもひでぽろぽろ」で使われている。調べてみると...合致。
16. TEREMTES
17. FUVOM AZENEKEM
18. HAJNALI NOTA
それぞれ相当する当時の邦題は「創造」「私の歌」「夜明けの歌」

「すみれ色の大地」が入手困難な現在、幸いにもこのサントラで3曲聴くことができる。


オリジナルのハンガリー盤のタイトルは「Dúdoltam Én: Sebestyén Márta」
(Márta Sebestyén Sings)

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当時27-8歳、どう考えても反則技のアイドルスタイル


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ジャケット裏は一転してTGかSPKって勢いのダークさ


これはUS盤の「Márta Sebestyén ‎– Muzsikas」

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[文中の人名「マルタ・セバスチェン」はハンガリー国内で使われる姓名の 順番ではなく当時の国際的な慣習に準じた名姓の順番とした]


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