見出し画像

Treasure / COCTEAU TWINS

               ・・・大切な場所が埋もれていた・・・

画像1


2週続けて20cmを超える積雪を観測した東京

辺り一面に積もった雪は音を吸収するが振動は増幅されて伝播する。

スマホに「Treasure」をコピー、密閉式のヘッドフォンを装着し出かけた

所用を済ませ帰路の途中、ふと思い直し久しぶりにお気に入りの庭園に行くことに。

そこは数年前に鬱の症状が酷くて外出もままならない状況の時リハビリの為の散歩コースだった

幹線道路がすぐ傍を通ってるというのに森閑な場所で時折、鳥のさえずりが聞こえてくる

鬱というのは鬱蒼の鬱というくらいで、枝が茂り過ぎて風通しが悪いという状態
まさに頭の中は、そんな感じだった

そこに行くと、ほんの少しだけ気分が和らいだ

四季や植物、狸の痕跡、池の小動物たち、そよ風
それらを時間を気にせず見たり佇んでるのが好きだった


やがて症状が良くなるにつれ足が遠のき、街や人気の多い所に行けるようになった

だからここは大切な場所だ


氷の張った池の上に積もった雪が美しい

前に雪が積もった時はデジタル一眼を提げて撮りに来たが もう今さらと思ってた
けど、夢中で写メのシャッターを切ってた

画像2


リアルタイムでは避けて通ったバンド

コクトー・ツインズというよりか4ADそのものを避けていた気がする

ベガーズバンケットの方は、バウハウスなどよく聴いていた程度
ただ、イメチェン前のMODERN ENGLISHとかMASSなんか日本盤で出てたので、それは聴いた。


ここ数年の間に、そういった空白を埋めるべく とにかく聴きまくってる

4ADもコクトーツインズはじめデッドカンダンス(これはライヴにも行った)、ディスモータルコイルなど
いずれも当時縁の無かった作品ばかりだったので紙ジャケットで一通り揃えた。
コクトーツインズに至ってはシングルボックス
(化粧箱仕様のオリジナルは手が出なかったので日本盤にした)や4枚組のベストとか
振り幅大きいんだよね相変わらずやることが

画像3

(シングルBOX日本盤)

80年代の終わりにほんの少しだけ歩み寄ったことがある
当時のメモが残っている

―――'82デビュー、という
   デビュー当時に聴いていたら、変わってたかもしれない
   (NHKの洋楽番組でPVを見て...)[1988.12.2]

でも結局それっきり

着せられたパブリックイメージは、さしずめ
幽玄、深淵、暗澹
といったとこだろうか

そいつらにまんまと乗せられて自分の耳で確かめることをしないでいた


それから25年
直接のトリガーはHannah Peelその人

画像4

自分では勝手に はんぴー と呼んでるUKの不思議ちゃん(死語?)がカヴァーした「Sugar Hiccup」かな

オリジナルを聴いてみたら良かったんで、そのまんますんなりと

ちなみに彼女、その時にカヴァーしたのは
SOFT CELL「Tainted Love」
NEW ORDER「Blue Monday」
OMD「Electricity」
というわけ。
どれも必聴ですぜ。


さて本作は、84年の3枚目
代表作と言ってもいい?
ガイドブックには、このアルバムが紹介されてることが多いから


ギリシャ神話をモチーフにした、と帯に書いてあるからだろうか、
1984年LPリリース当時の邦題は「神々が愛した女」

画像6

画像7

さすがに気が引けたのか、併記の時期を経て今は「トレジャー」表記

んー何故か「神々が愛した女たち」て複数形かよ


でジャケットをしげしげと見るのだが、どうにもわからない
財宝なのだろうが


オープニングは多くの人がそう思う通りケイト・ブッシュを意識してる
ちょっと気負い過ぎなような気もするが、それ以降は独自の世界が展開

やはりA2.「Lorelei」が前半のハイライトかな
語り口調は、ラップの影響が否めないというのは飛躍しすぎか?

中世音楽の雰囲気漂うA3.「Beatrix」も良い。
このあたりはデッドカンダンスが継承し更に深めている

A4.「Persephone」での80年代らしい打ち込みサウンドに、やはりヒップホップの影響を感じる

B3.「Cicely」のイントロなんかサスペンスドラマのBGMでパクられてるよきっと

ラストの、やや長尺な「Donimo」での高らかに歌い上げるオープニングといい、これまで抱いてたパブリックイメージがいかに湾曲していたのだということがわかった。
リアルタイムで聴いていたら果たしてそう感じただろうか。


コクトーツインズの影響力は広範囲に及び、日本でその方法論がそっくり再現された作品がある

1986年8月、2枚目のベストアルバムでキャリアに一区切り付けた後に発表された中森明菜史上初めてにして最も実験的な作品「不思議」。
片面だけピクチャーレコードという変則的な仕様も相まって話題に。

画像5

(CDとともに)

一言で表わすなら、コクトー・ツインズまんまである。
むしろデフォルメされているくらいに。
深淵の果てに微かに聴こえてくるような深くエコーがかかったヴォーカルは殆ど聴き取れないという様相を呈し
もちろんシングルなし

ジャケットもそれまでとは違い、ポートレートではあるのだが、その表情は読み取ることができない。

人気絶頂の時期に敢えて取り組んだ実験作はもちろん賛否両論であり、
購入者からは不良品ではないかとクレーム、問い合わせが殺到し
結果としてサウンドを変えヴォーカルを録り直し
歌詞も聴き取りやすくした姉妹作「Wonder」を出さざるを得なくなった事実がそれを物語っている。

当時、洋楽志向に走った彼女が行き着いた先がコクトーツインズってわけだ

それでも当時、コクトーツインズは聴かなかった。

聴かなくても良かったみたいだ。



6年後の2020年夏

フロアに入った途端、近未来の世界に迷い込んだと錯覚した

フロアとステージに間に張り巡らされたアクリル板

そこに映るフロアのミラーボール

升目のようにテープで区切られたフロア

スモークの漂い方もいつもと違う

そんな中で3組(沖縄電子少女彩 ASTRO T.Mikawa)の演奏が展開されている

特にASTROはアクリル板で音の波動が面状に襲ってくるもんだからたまんない足元から脳天まで妙な共振



ラスト3組の競演


どこの言語で歌ってるのか聴き取ろうとしたのだけど

途中でやめた

終演後、同伴のPeter氏の発言「例えばコクトー・ツインズ」で
すんなり得心した

歌詞が聞き取れなかろうが轟音の彼方に歌声は確かに届く

そもそもコクトー・ツインズは歌詞カード無かったはずだし

殆ど見なかった洋楽





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?