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Hope in a Darkened Heart / Virginia Astley

                  ・・・暗黒の闇に僅かな希望なんてあるわけない・・・

鬱病人にとって朝は重要なファクターだ

むしろ朝は朝という概念が無いすっぽり抜け落ちてる

最近の研究報告では脳の奥深くにある扁桃体と海馬に障害をきたすのが、
鬱病の一因だとされる。

心の病と呼ばれてきた鬱病は脳の一部分の機能障害なのだ。

そんなうつ病患者は、まず朝に起きられるかどうか
そして何時に起きられるか、毎日闘ってるんだよ。

朝をどう迎えるか、朝をどう過ごすかでその1日が決まる
一旦起き上がったものの、また寝てしまうケースも多いし
午前中は頭が回らずボーっとして昼を迎えるなんてことも
もちろん午後まで起き上がれないこともある

睡眠薬がびくともせず眠りに着けない夜も

幸い眠りに届いた夜も

薬が残っているのかどうかもわからない頭の重さと

やり場のない虚脱感と絶望、不安といった



一時期、朝起きたらこのアルバムを毎日聴いていた
回復の兆しも見えてきた頃
耳に優しく控え目ながら気分が安らぐ感じ

生きてていいんだ、これ大袈裟じゃなく

音楽を聴くことが極めて日常なことであることだとしみじみ思いつつ

うつ病にならなかったなら、
命を粗末にするような行為に及ばなかったら
そんな当たり前のことを当たり前だとは思いもしなかっただろうに

音楽が日常に戻ってきて、
それは、、、救いであり望みだと思った。


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日本特有の現象で
YMO、JAPAN人脈が絡む作品は市場価格が高い
迷惑な反面、本国ですら廃盤状態の作品が日本で再発されるという恩恵も

本作はその両面を受け
坂本龍一プロデュース&キーボード、デイヴィット・シルヴィアン参加
で“幻の名盤”が日本のみ紙ジャケットで再発ゆう謳い文句だけど
全然普通に売ってるよ実店舗では。


1曲目のタイトルを邦題にするなんて無粋だ。だったら原題のままで良い。


アートワークは断然LPレコードが良い。紙ジャケットといえども文字のバランスが全く違うのでニュアンスが変わっちゃう

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(これ紙ジャケCD)



A3「So Like Dorian」チープなリズムボックスで始まるのはクリスマスっぽいナンバー

夏を思わせるタイトルもあるけど、小春日和な季節にぴったり
と思いきや実際に唄われている内容との乖離は大きい

例えばギルバート・オサリバン「Alone Again」のような


曲が進むにつれ音数も多くなり
La Düsseldorfの3rdような汎ヨーロッパを感じさせるスケールの大きなサウンドに昇華していく

B3「Love's A Lonely Place To Be」、B4「A Summer Long Since Passed」は後述の12インチ(1982年)からの再収録

なので坂本龍一がプロデューサーとして関わってるのはB2「Charm」まで
当時ならきっと「ミニLP」扱いだったかも。
どうみても12インチシングル2枚を合わせた編集盤なのだが、日本サイドの何らかの力が加わったのか

それに、帯に記載されてるような“耽美の極”は欠片も感じないんで
いまだにそんなパブリックイメージなのか、あの二人が揃うと。

だから
坂本龍一の仕業なのか
彼女本来のものなのか


そんなことどうでもよくなった


当時は、あのジャケットが秀逸な12インチシングルが希少で高価だったことも相まってか気高いってイメージが先行し近寄りがたく手が届かない存在だった。

Slapp Happy 「Sort Of」に酷似してたのも理由の一つか

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こんなジャケットに限って、、、てことがこれまで何度もあったんで


本作を聴いたのもほんの数年前で、それから他の作品も揃えていった。

1stは長らく廃盤状態で2003年、限定でジャケット違いのリマスター盤が再発された。
そうとは知らず買っていたのが因果

何れにしろ
エンジェルヴォイスってほどでもないけれど
蒸しタオルを顔に被せられた心地好さを持ち合わせてる


彼女は勿論現役で活躍中だが
その意思は
Hannah Peel、Russian Redらが継承してる


ちなみに同じastleyでも日本語表記、
彼女はアストレイ、でリックにするとアストリーね
どーでもいいか

後年、クルマのCMに採用されたこともあったらしい

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これが本作の元ネタ12インチ

CDよりも好みの音でLPに比べ段違いで良い音



うつ病患者は世間一般の行事イベントの類いは鬱陶しいものでしかない

最悪のクリスマス、最悪の正月、最悪の節分、最悪のバレンタイン、
と数え上げたらきりがないほど、
全てのイベントは、とにかく“最悪の”が付く。

クリスマスメールはプロバイダーと航空会社だけ。
何を見ても何を聞いても哀しくなる。
家族連れ、親子連れ、カップル。

会社の8階に行くトイレを窓のない側に変える。
踏切で目の前を電車が通り過ぎるのを目を固く閉じて待つ。
深い哀しみと喪失感にみまわれる。

その頃は音楽さえ聴こうとしなかったし聴くことができなかった。
あんなに好きで当たり前のように聴いてた音楽が。
もう二度と戻ってきやしない。
そしてこの終わることのない暗黒な心の闇に
ほんの僅かな希望なんてさえもあるわけないと。


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