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SOME GREAT REWARD/DEPECHE MODE

                                  ・・・新成人に贈るご褒美・・・

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青春、という言葉をまだ使えるものであれば、DEPECHE MODEは、まさに青春そのものだった。


A-2「Lie to Me」歌詞にタイトルの「Some Great Reward」が登場する。
曰く“働かざる者 食うべからず”みたいなのか


84年9月リリースの本作でB-1「Somebody」やA-4「It doesn't Matter」には恋愛観、友情が描かれている。
それは当時、同年代の等身大よりちょっぴり背伸びしたもので、憧れもした。

「Somebody」で唄われる“The world we live in and life in general”という一節はジャケットの裏にクレジットされている。
工場か倉庫をバックに新郎新婦が佇んでいる写真。

ちょっといいかも

就職も結婚もせず学生のままでいたいと思ってたあの頃、一瞬だけ社会人を意識し、そう思った。


4枚目のアルバムとなるこの作品からレコードはドイツ盤を買うようになる。カラーレコードなのだ。しかも地味な塩ビ管のようなグレー。

内袋に歌詞が載っているんで日本盤を買う必要はないのだから。

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Dave Gahanは1stアルバムの頃に比べると声変わりしたかのようで、低音の魅力がいかんなく発揮されている。

一方、Martin Goreの繊細な唄声はもはや欠かせなくなっていて。ストーンズのアルバムに入ってるキースの曲。

先行して発表された2枚のシングルA-3「People are People」、B-2「Master and Servant」が、カップリングの曲ともにかなりメタリックなのでアルバムはどんなにか、と思ったけどそれほどでもなく。
その一方で繊細で美しいメロディラインのナンバーを配置。
世界的ヒットとなった「People are People」も自然と溶け込んでいる。

とは言えサウンド的には前作の延長にメタルパーカッションや様々な効果音が加えられ重厚になってる。

全曲、捨て曲なし。

ほぼ全曲、詞は覚えるほど聴き込んだ。

これほど全般的に感情移入できたのは本作と次作ぐらいだ。

先行シングル「People are People」「Master and Servant」は共にアルバムテイク。

シングル以外だとB-3「If You Want」が一番好き。
イントロの淀みから浮き上がってくる感じ、この手には弱い。
様々な効果音、特に爬虫類を想起させるような神経を逆なでする音が結構使われてたりする。(以降、トレバーホーンがイエスとかで多用)


でも基本跳ねるような感じは1stアルバムの頃と変わっちゃいない。


それだけに、ラストに用意されている「Blasphemous Rumours」の救いがたく絶望的な終わり方には戸惑った。

内容が暗すぎるとか冒涜とかのかどで宗教団体の反対を受け「Somebody」との両A面としてという折り合いをつけた曰くつきのリリースだったなど様々な憶測も飛ぶほどだった。

PVでは自転車のリムやハサミなんかがシンクロしている。耳のそばでハサミの音を聞かされるなんて今でも寒気がする。


人生に絶望した16歳の少女が手首を切るという場面から始まるこの曲
幸い未遂に終わったのだが

20年過ぎた頃に同じことが自分に起ころうとは勿論その時は知る由もなかった
手首を切ったのが切れ味の悪い包丁だったから今こうやって生きながらえ文章を書いているわけだ

そう、絶望とどん底ゆえのユーモア
葬儀の場ではしばしば冗談を言い合っている場面に出くわす
それは腹を抱えて笑うような類ではなく空しさや諦観、悟りの末に捻出されたものだ
そうやって少しでも悲しみの場を中和しようとする本能

当時、どうしてもこの曲が理解できなかったのだけど
今なら少しわかるような気がする

希死念慮、遺書を読む母親

年齢に関わらず容赦なくやって来るあっけない不慮の死

当時は全く縁のないことだったのだから


冒頭の少女が信仰に生きる道を見出し2年後に交通事故であっけなく死ぬ。

エンディングの生命維持装置がオープニング「Something to Do」に繋がってることは2回目に聴いた時にわかり、ほんの少しだけ救われた気になった。



当時はシングルのカップリングに収録されているライヴ音源を繰り返し聴いたものだ。

DEPECHE MODEは1983年「Get the Balance Right」から、B面にライヴ音源を数曲収録した限定12インチシングルをリリースしている。
それが久しぶりに「Blasphemous Rumours」で復活した。

勢いにあやかってリリースされたシングルコレクションの映像版が出たけど

初期にPVは「Just Can't Get Enough」だけだった

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(レーザーディスク)

前まではオフィシャルサイトで全曲見ることができたのだが
あったあった、今はここ。
http://archives.depechemode.com/video/music_videos/index.html


2016年に晴れて3枚組DVD化「Video Singles Collection」

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あーどっちも「See You」の別ヴァージョンが無い...

あとは殆ど網羅されてるかな


「The World We Live In And Live In Hamburg」

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確か邦題は「デペッシュ・モード・ライヴ」だった?
日本版のVHSを持ってたけど行方不明。レーザーディスクは買いそびれた。「ライブ・イン・ハンブルグ」というタイトルで再発されてるはず。
2003年にブートでDVD化。


初来日を逃したので、ライヴには欠かさず通った。一度、PAブースの隣の席だったことがある。

開演時間になるとブースのオペレーターがキーボードを弾き始める。
ステージでは勿論メンバーが演奏してるのだけど。
ふーん、そういうこと...

雑誌には「Master and Servant」のライヴでは後半のインプロで「Una Paloma Blanca」もやってのけ、延々20分に亘るパフォーマンスを繰り広げたという記事が載っていたので期待したのだが、
実際のライヴは確かに12インチテイクのようなスゥイングするインプロは長めだったけど、「パロマ・ブランカ」はやらなかったね、さすがに。


「MUSIC for MASSES」までは、シングルは7インチ、12インチ共ほぼ一通り揃えた

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まさにアナログ全盛期

アートワークとテイク違いと、特に12インチはお手本のような仕様だった。

「SHAKE THE DISEASE」あたりからSLOW MIXだったかな単に遅いだけみたいなのが怪しくなってくるんだけど
この頃はカセット付きの7インチとか、エイドリアンシャーウッドリミックスとか、バラエティーに富んだものだった

この時期多くのシングルに関わっているのがGareth Jones。
前作「Construction Time Again」から絡んでいて、他にはJohn Foxx、
Einstürzende Neubauten、Wireなど。


さて珍品。ほぼ同時期に出たジャズカバーしかもドイツから

Götz Alsman & the Sentimental Pounders 「People are People」

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(12インチ)

どういう経緯でリリースされたか知らんが特にドイツでは圧倒的な人気を誇るDEPECHE MODEという土壌

さらに前作「Construction Time Again」に収録されてるシングル「Love, In Itself」あたりからジャズのテイストを取り入れるゆうアプローチ


インタビューあるのだが勿論さっぱり

その後フライングピケッツのような展開にもならずカバーはこの1曲だけ

記憶の彼方へ、、、




CDの時代になり、限定12インチシングルもそのままシングルCDのフォーマットでリリースされた。

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(CDシングル)

各種リミックスもBOXセットやコンピレーションで聴くことができるようになった。


成人を迎える多感な時期1984年にこのアルバムに出会えたことは重要な出来事だったと思う。

「Blasphemous Rumours」で“超えるところまでいって”しまったものを取り返そうとしたのか、アルバムにまとめるには持て余し過ぎたのか、まとまらなかったのか彼らはその後、単独でシングルを2枚リリース。

やきもきさせたが、本作と勝るとも劣らない傑作「Black Celebration」をリリースするのが1986年。




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