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兄の言い分、弟の立場


兄は親の奨める途を歩むことが多く、何かといえば世間体という厄介なものが付き纏ってくる。
本当は自分の望む道を進みたかったのにという思いを抱えて生きている中、自由奔放に生きている弟をやっかむこともある。

弟は弟で、何かと兄と比べられる。大抵がネガティヴな点において。
だから、自然と兄の道とは違う方向を進んでいく。比べられなくて済むように。

そうやって、兄と弟は次第に距離をとっていく。
兄弟なんだから似ていて当たり前。でも兄弟だから同じという前提で見てほしくない。


いわゆる「兄弟バンド」といって挙げればきりがないくらい数多くのバンドが存在する。メンバーを集める手間がかからないで兄弟揃ったということもあるだろうし、別々のバンドにいた兄弟がバンドのメンバーになったというケースまで様々。
うまくいっている例もあれば、その確執が問題となるケースも多い。

そんな数多ある兄弟バンド、今日はDIRE STRAITS(ダイア・ストレイツ)についての話。

弟David Knopflerは2ndアルバムまではメンバーだったが、3rdアルバム「Making Movies」制作中にバンドを去る。



1983年初のソロアルバム「Release」

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タイトルにそれまでのキャリアからの脱却を意図しているようだけど、兄MarkをはじめベースJohn Illsleyといったメンバーが参加していることから、とてもDIRE STRAITSのサウンドっぽい。


で、とても不思議な映像がある。

「弟とは二度とライヴで奏らない」と公言した兄がギターで弟をサポートしているではないか。

色々言い分はあるだろうが、黙って弟を見守る、それが兄貴だと言わんばかりに振舞いたいがやはり気になってちょっかいを出すMark

ありがた迷惑だとか呪縛から抜けらんないなんて毒づく弟

こっちには居ないけど

アルバムにはバイオリンでBobby Valentino、Paul Young with THE ROYAL FAMILYのベースPino Paladinoが参加。
「Soul Kissing」はシングルになった。



Mark Knopflerが参加している「Madonna's Daughter」はイントロから既にDIRE STRAITSしてる。
「Roman Times」はシンセを多用したレゲエビートのナンバー。

いちばん好きなのがラストの「The Great Divide」。温もりを感じる曲。



1985年2ndアルバム「Behind the Lines」

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これで初めてDIRE STRAITSからも兄からも"release"できたのではないだろうか。まさに呪縛が解けたかのように伸び伸びとプレイしている。

本作も見開きジャケット。


果敢にもユーロビートに挑んでる「Shockwave」

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それでいてDIRE STRAITS「Private Investigations」を意識したかのようなドラマティックな展開の「Prophecies」も良い。

オープニングナンバーはシングルになっている。



1986年3rdアルバム「Cut the Wire」

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ここからCD時代

これまでと印象が違うジャケットながら

1stから変わらない優しいピアノが印象的。


オーケストラを使った壮大な曲もある。


お馴染みPino Paladinoが参加。

「When We Kiss」は、とても力強いラブソング。


1988年4thアルバム「Lips Against the Steel」

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後で知ったのだがこのジャケよりこっちがよく流通してるらしい

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DIRE STRAITSという本流から一人別れて、彼はますます兄 つまり本流から遠ざかっていく。
ベーシストのJohn Illsleyが、もしDIRE STRAITSを脱退してソロを出したとしたら2作とも日本でリリースされていただろうか? ほら ね、本人のことを書く前にこんなにも遠回りしている。きっと優しい彼だから何も言わないかもしれない、けれど。(当時そう思ったが実際は、在籍中にソロを出し日本盤も出てるJohn Illsley)

兄の優しさ、それは頼りがいがあり、いつも弟から見られていなければならない力強さ。厳しく、時には冷たい。

Daveは、とてもあったかい、いいんだよ これで。本流は大きく分かれる時もある。HUMAN LEAGUEとHEAVEN17、10CCとGodley+Creme、DEPECHE MODEとYAZOO,ect.
このアルバムでは、バックボーカルにP.P.アーノルドらが参加。サックスにアート・ペッパーの音源が使われている。



1991年5thアルバム「Lifelines」

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確かにこの人ほど安心感を持ってニューアルバムを聴けるミュージシャンは他に そう見当たらない。


1993年6thアルバム「The Giver」

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これも持ってるのはUKの“赤盤”で

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一般的には、この“青盤”らしい

よく見るとロゴが違うんだよね!

もうオープニングから弛緩しっぱなしな感じで

まさにジョン・メイヤーの境地

でも油断しちゃいけない詞の内容とか7分超え3曲もあるし

後半は久々に初期DIRE STRAITSの残渣が

「Southside Tenements」にDIRE STRAITSの何だっけな、聴き覚えのあるフレーズが「Your Latest Trick」じゃなくてあーもどかしいわ

その次「A Father And A Son」も気になるしお約束のラスト小曲「Always」

クマ原田がベースで参加


1995年7thアルバム「Small Mercies」

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本作にもクマ原田がベースで参加

前作をさらに突き詰めていくような8分超えが2曲

それを縫うようにカントリー調や80年代サウンドなどが行き交う


残念ながらこのアルバムを以てDavid Knopflerを追う頻度が減ってしまう。


6年というやや長めのブランクの後、2000年代の彼は順調に作品(サントラやライブ、ベスト盤含む)を発表し続け、アルバムは今年の「Last Train Leaving」まで15作を超える勿論バリ現役。

各アルバムの最後には、必ず小曲が収録されていた。短いのだけど とても幸せな気分になる。


意識せずともそりゃずっと見てきた背中なわけだし




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