ザ・ザ——川柳一一二句

　　side : the "d"
　

　焚きつけにいがらしみきお全句集
　医師として回転寿司を撮りつづけ
　校庭のプランクトンを拾う巫女
　白木屋に遠心力をかけて寝る
　ゴーフルにまだ自転車があったのか
　租界でのボーヴォワールに釘あたえ
　意味がないいとうせいこう掛ける六
　飛雄馬からもらった牡蠣にボタン無し
　各駅にクレイアニメの雨が降る
　絶唱のしじみのような型を取る
　一つ家に岸辺露伴の人体図
　妖鳥のほろびた村の鳥瞰図
　街の灯に暴力団が割るメロン
　食パンをしまった火星年代記
　分度器の多いほうから死ぬ舞台
　ようかんで殴られてから母星の語
　刺繍する午後のモルガン・スタンレー
　とりもちをオスカー賞で剥ぐ彼ら
　ポプラ社の接着剤がふえた日よ
　解剖図から導いたむのたけじ
　針穴をいわさきちひろ型通る
　地表にも劇場版の笹だんご
　矮星を冬美自動車店で観る
　わさび餅からの瞬間移動症
　森林にユカタン刑事の砂糖菓子
　肺魚売り超自我までも居ない部屋
　蓮如らがきょうも潜水しているが
　朝寝せりさかなへんなき遺書書いて
　律詩にもユーフラテスの果てが無い
　日本語で書けないことをどむと書く
　この世からじぶん切り取る隕鉄屋
　飯屋らの畸語に大陸移動説
　秋分に猪鹿蝶のチョコ揃う
　木星の柿漫談にふえる柿
　蟹を喰う松田優作状のもの
　時計屋を勘で解体するふたり
　城に着く噺のいまだはじまらず
　佐野市でのレタスクラブが分派する
　精はなつごきぶり貯金溜め終えて
　クロールに麦と兵隊あらわされ
　鶏骨へ性欲のある門くぐり
　漫才を貫きとおすひも理論
　石庭とひとつの鈴鹿サーキット
　三階へメタ視点からパンを貸す
　茶人来て茶人すべてに似るにかわ
　この下に四股を踏まれた世田谷区
　ギャートルズたちの甲府に紫外線
　綿棒をナンシー関に贈った日
　日時計を解体しない麿赤兒
　盲牌のあと寂聴の毛を剃れば
　時そばがつづく発狂した宇宙
　銭形とジオラマ論をたたかわす
　想像のセカンドバッグあてがえば
　ア太郎がつかわなかった核兵器
　ドーナツと共に世に在る九輪車
　卍屋の豆腐ならべる遺伝して

　　side : the "b"

　埼玉の後円墳で組むバンド
　無を書けば井伊直弼に酸性雨
　はじめ人間を憎んでいる佐渡市
　簿記に無い伊豆半島ができあがる
　キャプテンの皿をはみ出す羊歯ばかり
　師の熔けてこれがマンモスだったのか
　滋賀県のばれんばかりを裂いている
　雨混じりサナトリウムで打つカーブ
　レジ下に巨大化をするフツウワニ
　野獣派のアコーディオンに弱い雨
　チチカカ湖じたいが広辞苑でない
　例解にアンドロイドの見た羊
　三階のアディダス本部局崩れ
　月光が足りないバナナ展示場
　主語がある津軽海峡芋煮会
　郡名が長い郡下の鶴太郎
　速球派固有名詞のない星に
　ドラクエの蹴鞠が闇に葬られ
　この星が無塩バターでない証
　自乗する一人のための阿含宗
　隘路にて三沢あけみの蕪を抜く
　全文にメイフラワーが主語とされ
　終劇にコールスローが浮いている
　ピラルクを久留米に持って来なかった
　なるほど・ザ・ワールドの無い世界絵図
　たくさんの磁石のなかで焼くうずら
　エンタツの写生をした日あさ焼ける
　木星のチャーリーさんが掛けた鍵
　パルコ無き羊の町を徒歩で去る
　火祭りを石黒賢と誤認する
　改造後石川県がジェット噴く
　呆然となるとの巨大化をみつめ
　触角がないひとたちのボウリング
　ジャイアンの三単現にうらごす日
　弁当を日比谷に換えている佐佐木
　椰子の実のチューインガムを仮想する
　サージャント・ペッパーと麩が分離する
　電柱の怒りあらわすフラダンス
　果樹園に鈍器を持ってゆく寒さ
　ぶっこみの山田太郎に星の砂
　法皇の体操中に焼く卵
　近代の郡山市の血の掟
　有線で予予予選会まで行った
　皮膚のないままの海外小説家
　魚拓しかない母親の眠る部屋
　角川の家に伝わるタンバリン
　血みどろの春日井建を撮る午前
　鳴き砂がカインズ本社とり囲む
　地上絵がアルゴリズムの木賃宿
　グラタンをつくらなかった大魔神
　サッカーのたまさか消えた魚市場
　二度漬けの教祖を今日も尾行する
　ピーターに空中都市でわたすへら
　欲情記河馬をしばらくみていない
　警官がろくろを失くすユートピア
　ダスキンの神とひとしく死んでいる
　　　　　　　　　　　　　　　　　

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