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認められない理由 私的流用

こんにちは
セカンドオピニオン税理士の宮崎貴美子です。

今日は、認定賞与の話です。

調査において、調査官から「この帳簿に記載されていない収入については認定賞与です」と言われることがあります。

そもそも給与とは労働の対価ですが、それ以外の、法人から役員等が受けた金銭又は経済的利益も、給与所得に該当すると考えられています。

税務調査で、法人の役員等による私的流用金が把握された場合は厳しいペナルティが課せられます。

本税だけではなく、通常より重い加算税が課せられた上に、消費税にも連動し、こちらも追徴税額と重加算税が課せられ、私的流用した役員に対して源泉所得税等が課せられます。

金額の多寡に関わらず、「隠ぺい又は仮装」の事実に基づき適正な申告をしていない場合には、事務運営指針により重加算税が課せられるのが国税のルールです。

法律は知っている人の味方です。

国税のルールは、調査を受け、初めて知ることになります。
租税法はわかりにくいし、勉強しなくても経営はできますが、私的流用などに対しては厳しい処分が行われることをお伝えしたいと思います。

今日は、原告が確定申告書に記載のない銀行口座に入金された重機本体売上及び重機附属品売上を原告の収入とし、その使途を代表者甲の賞与及び実質経営者である乙の貸付金とする修正申告書を提出したところ、税務署長が原告に対し法人税、消費税及び地方消費税については重加算税賦課決定処分を、源泉徴収に係る所得税については納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をそれぞれ行ったのに対し、原告が、上記各重加算税賦課決定処分については、いずれも修正申告が無効であり、また、原告は仮装隠ぺい行為をしていないから要件を充足しないなどと主張し、上記各納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分については、いずれも要件を充足しないなどと主張して、上記各処分の取消しを求めた事案、平成23年11月25日熊本地裁判決(税務訴訟資料 第261号-225(順号11815))を紹介します。

はじめに、事案の概要を説明します。

原告は、土木工事業を営む株式会社であり、乙は、原告の代表取締役を辞任し、その後は、乙の妻である甲が原告の代表取締役に就任しましたが、甲は経営に直接関与しておらず、実質的な経営は乙が行っています。

調査において、重機本体売上及び重機附属品売上について、収入に計上しておらず、何に使ったかの説明がないことからわから、甲に対する賞与、乙に対する貸付けと処理されました。

重機本体売買及び重機付属品売買については、次の事実から売主が乙とは認められず、原告の収入であると判断しています。

・乙個人による売買であると主張していても、売上を収入として申告してはいない
・重機付属品売買に係る契約書では、売主が原告となっており、原告の印章が押捺されている
・領収証の名義が原告である
・売却先が交付した小切手が原告名で裏書され、原告名義の口座で取り立てられている

ただし、口座については、本件収入除外売上が入金された預金口座は、いずれも帳簿書 類及び本件各確定申告書には記載されておらず、また、同預金口座はいずれも、本件収入除外売 上が入金される前2か月以内に開設され、入金後2か月以内に解約されていました。

この事実をもって、原告は、本件収入除外売上に係る取引事実及び各取引銀行の預金残高が存在しないかのように隠ぺいした帳簿書類及び決算書類を作成し、上記各書類に基づいて本件各確定申告書を作成し、提出したと認定しています。

そして、この口座に振り込まれた収入入除外売上はいずれも乙が預金口座から引き出しており、乙又はその妻である甲が、本件収入除外売上を取得したものと推認されます。

また、収入除外売上の使途を調査したにもかかわらず、その使途が明らかにならなかったことから、本件収入除外売上は その全額を乙又は甲が私的に費消したものと解するほかなく、調査担当者は、その全額を乙または甲に対する賞与として処理するはずでした。

しかし、乙は、全額を賞与として処理され、一時に多額の源泉徴収義務を課されることを避けるため、一部を乙に対する貸付金として処理したい旨の嘆願書を提出し、そのとおり処理されました。

そして、その処理を裁判所は適法であるとしています。

次に、補足として、収入除外売上が、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するか?が争点になる場合もありますので、法令解釈を記載しておきます。

所得税法第28条第1項で「給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。」と規定しており、法令解釈としては、次のとおりです。

最高裁昭和 56 年 4 月 24 日第二小法廷判決は、「給与所得とは雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与所得者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。」

最高裁平成 27 年 10 月 8 日第一小法廷判決においては、「所得税法28条1項にいう給与所得は、自己の計算又は危険において独立して行われる業務等から生ずるものではなく、雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供した労務又は役務の対価として受ける給付をいうものと解される(最高裁昭和●●年(○○)第●●号同56年4月24日第二小法廷判決・民集35巻3号672頁、最高裁平成●●年(○○)第●●号同17年1月25日第三小法廷判決・民集59巻1号64頁参照)。そして、同項にいう賞与又は賞与の性質を有する給与とは、上記の給付のうち功労への報償等の観点をも考慮して臨時的に付与される給付であって、その給付には金銭のみならず金銭以外の物や経済的な利益も含まれると解される。」

これらの解釈から、役員が法人から受けた金銭又は経済的利益は、給与所得に該当するものと考えられ、法人の役員等による私的流用金は給与所得に該当するとする裁判例が数多くあります。

いかなる理由があろうとも、法人の売上を計上せず、法人の事業のために費消した証拠もなく、何に使ったか言えない場合には、賞与と認定されてもしかたがないということです。

そして、調査担当者から「処分は認定賞与となります」と言われると、口座に振り込まれた日、金額が賞与の額となり、源泉所得税を追徴されます。

たとえ、貸付金の処理を認められたとしても、返済計画を立て、その貸付金に対する認定利息もあわせて所得の計算に含まれることになります。もちろん、調査後にくる事業年度にも影響していきます。

知らない法律、知らない国税のルールにより、こんなペナルティが課せられるのかと愕然とする経営者の方をみてきました。

どんな事情があろうとも収入を計上しない理由は認められません。法人税、消費税、源泉所得税が追徴され、重加算税や延滞税を含めた多額な税額を払うことになります。

大切なお金を無駄に払っていませんか?一番払わなくてよい税金が調査による加算税や延滞税です。

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