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ダンジョン飯にあこがれて 第八回

洋ゲーレビューのストックが尽きてしまった。しかたがないのでここからはこれまで紹介してきたゲームと同時期の、PC98最高峰のリアルタイムダンジョンRPGを紹介する。本企画は今年プレイした作品…という縛りでやってるのだが、問題ない。ブランディッシュシリーズは毎年必ず遊んでいるので 。

ブランディッシュ(1991年)


ブランディッシュ(PC-9801版)

ブランディッシュは1991年秋のリリースということで…時期的にはアメリカでアイ・オブ・ザ・ビホルダー2がリリースされる少し前ぐらいの時期。洋ゲー通に言わせるとダンジョンマスターに強く影響を受けたフォロワー作品の一種であり、アイ・オブ・ザ・ビホルダーシリーズとは兄弟みたいな関係にあるのかもしれない。もっとも、ゲームのリズム感は似ても似つかないものになっているのだが。

俯瞰する後方視点と4歩/グリッドの概念

ブランディッシュのフィールド画面は独特の構成となっており、主人公を後方上空から見下ろした視点でのドット絵チップで描写されている。
言葉で解説するよりスクリーンショットを見てもらったほうが早い。

扉に鍵がかかって進めないぞ!
2マス後退して…ん?右側になんかあるな…
右に90°旋回。こんなところにレバーが!

このように、俯瞰した視点によって状況を把握しやすく、横や背後には死角が存在することで緊張感も持続する、という2Dと3Dのイイトコどりをしたデザインとなっている。当時主流の16ビットPC-98のグラフィック性能がへっぽこ過ぎて3D描画できるようなマシンパワーが無かったという側面も無きにしも非ずだが…。
また、主人公やモンスターはマス目(グリッド)単位の移動ではあるが、その過程は基本的に1/4刻みで描写され、4歩で移動を完了する。

4歩移動するとちょうど1グリッド

この中間描写のおかげで、当時のPCアクションゲーム特有のカクカク感は多少軽減され、側面攻撃のタイミングもはかりやすくなっている。アクション性の向上に貢献していると言い換えても良い。

制限のない要素・ある要素

武器は砕ける

ブランディッシュシリーズでは、ダンジョンRPGによくある煩わしいと不評の概念…満腹度アイテム重量の概念が省略されている。これによりゲームプレイ中の思考リソースを食糧管理に割くことが無いのは良い所。しかし、武器の耐久度というこれも現代のゲーマーには嫌われる概念が導入されていて、ゲームのハードルを上げている。もっとも、救済措置としてゲーム進行の標準的な武器より1ランク下の威力だが耐久力無限の武器が提供されていたり、武器を持たずに素手で殴るという選択肢もあるので、ほとんどのプレイヤーはそちらを選択していたと思う。ここぞというときのボス戦にだけ、温存しておいた最高の攻撃力の武器を抜く。それが理にかなったプレイというものだと思う。

インタールードというお約束

最初のステージを越えてTowerエリアに入る所

ニコニコ動画でダンジョン飯のアニメ第一話を見ていると、怪しげなナレーターが現在いる階層の解説ナレーションを行う場面で「Brandishっぽい」というコメントが数件目に留まった。そうだろうか…?とは思ったが、ブランディッシュシリーズは新しい構造のエリアに立ち入る度にその情景を解説するフレイバーテキストが流れてくるのが伝統になっている。似てると言えば似てるのかもしれない。

世界観と物語

冒頭、物凄い高さから叩き落される

ゲームの世界観は既存のダンジョンゲームの逆張りを狙ったかのような大枠で、ダンジョンの底に落ちてしまったので地上を目指して登っていく、というもの。普通に考えてダンジョンは地上に近い出入口付近が安全で、深く潜れば潜るほど危険になるものじゃないのか、と指摘されそうだが、本作の場合ラスボスは地上を目指して動いている、という設定なので、地上に最も近いところが最も危険であり最終決戦地帯ということになっている。
そして地底に落ちる原因となったのが本作を代表するヒロイン…ヒロイン?のこの女性。

ドーラ・ドロン嬢。ドロンジョではない

地の底においてもめげずに主人公を追っている様子は、何度か直接相対するほか、各地のNPC…ショップの店員や友好的な精霊によって語られる。本ゲームにおいて、ほぼ唯一のメインストーリー部分と言えよう。

プレイヤーに与えられた選択権

人助けをするかしないか。自由である。

メインストーリーと言う点で見ると、本当にドーラの師匠を殺したのかどうかとか、ドーラを適当にあしらっているのは何故なのかとか、やけに不確かなことが多く、「賞金首にして賞金稼ぎでもある」と主人公の人格も曖昧に濁されている。これは仕様上シナリオの決まっているゲームにおいて、いわばアライメントをプレイヤーが選べる作りにしてあるということではないかと思う。作中、助けを求めるNPCは大部分を無視して放置することが可能だし(その場合お礼で貰えるユニークアイテムも諦めなくてはいけないが)簡易だがエンディングにも分岐が設けられているほど。プレイヤーに委ねられた部分は意外と多い。

リザルトの検討と再挑戦

初めてだと死亡回数三桁とか普通にある。

ゲームクリアするとエンディングとスタッフロールが流れた後、諸々の数値が可視化されるリザルトが発表される。初見だとプレイ時間が長かったり、体感より死んだ数が多かったり、オートマッピングの完成率が低かったりすることに驚くだろう。ただ、これらの数字は意識して遊べば確実に改善できる。二周目三周目へのモチベーションへ繋がるのだ。
そして、よりよい数字を目指すとタイムアタックとレベルカンストのようにトレードオフの関係にあるものもある。どの数値を重視するか、この選択もまたプレイヤーに委ねられている…と言えるかもしれない。

ブランディッシュとUNDERTALE

おそらく、Tobyが最初に出会ったのはSNES(北米SFC)版

冒頭にも書いたが、自分はブランディッシュシリーズを、和製リアルタイムダンジョンRPGとして屈指の作品。PC98シリーズに限定するなら最高峰の作品だと信じて疑わない。残念ながら諸般の事情から続編はおろか、復刻の道すら途絶えてしまった。しかし、世界的ヒット作品UNDERTALEの作者Toby Fox氏は、当作を作るうえで特に影響を受けた6つのゲームタイトルのうちのひとつとして、ブランディッシュを挙げている。歴史的な存在的意義は確かにあったので、忘れ去られないで欲しい。現代でも遊べる手段が残ることを願っている。


2024年現在、ブランディッシュを遊ぶには…

Windows用のプロジェクトEGGを利用するのが一番現実的です
ネットオークションで競り落としたPC-9801実機で…というのは、本体・ディスクメディア共に老朽化が進んでいるため、いつ壊れてもおかしくない、ほとんど博打。じゃあエミュレーターで…と思っても、環境をセッティングするのにはMS-DOSの扱い方などの当時の技術知識が必要不可欠。
コンシューマ用ならPSP版、SFC版、PCE版の三種がありますが、動く環境を整えるのはそれなりにコストがかかるし、どれも忠実な移植とは言い難い。
ワンチャン、NintendoSwitchのEGGコンソールでリリースされれば状況は変わるんですが…


ライターの熱いブランディッシュ愛を感じる

4年前の4Gamerの記事なのですが、高い熱量を持ってブランディッシュというゲームの解説がされているのでここで紹介しときます。

当方と内容ダダ被りですね。はい。特筆すべき点としては、ダンジョン飯をアニメ化前(なんなら原作完結前に)ダンジョンRPGプレイヤー必読の書として紹介している先見性の高さ。恐れ入ります。


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