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2018年11月の記事一覧

雛魂

幼いうちに、親とはぐれ、仲間とも仲良くできなった雛鳥。一羽にいるのが楽などと自分を麻痺させ、水面の自分と向き合って話すしかない哀れな鳥となるしかなかった。
ある日、いきなり黒い波が鳥達を襲った。
熱い油膜の泡におおわれ、皮膚は焼け爛れ、呼吸も
ままならない。周りの死んだ魚は毒物となり、鉛以上に鳥達の体と生命を蝕んだ。
他に死んだ雛や鳥もいるけれど、それも皆、嘆き悲しんでくれる家族がいる。
一羽の哀

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小怪の囁き(ようせいのささやき)

とある物書きの男が、次の話に悩んでいた。眉間を痛む程、悩ませていた男はある晩に小さな姿をした人に出会った。枕元でごそごそ動く様は、昔話に聞く小怪(ようせい)そのものだった。男は小怪と ある契をかわした。毎晩、我々は自分達の知っているいろんな話、胡乱な噂、を仲間たちから、風の如くめまぐるしく伝わってくるものを、代わる代わる耳元で囁いていく、というのだ。そのかわり 気に入る話が 男の耳に入ってくるまで

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男の話

大雪の日、みすぼらしい姿の男が荒れ狂う吹雪の中を、どうしようもなく佇んでいた。男は、この日この場にいる以外にも、様々な苦労と苦難があった。母親は、まだ男が子供の頃に、馬に蹴られて死んだ。田圃で他の子達と、虫追いをして遊んでいる時に、機嫌の悪い馬の後ろにいたのが原因だった。幼い男の目の前で、母親は、泥水の中に倒れ込むと、急に案山子のように動かなくなってしまった。その日はちょうど、幼い男の誕生日だった

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