虎に翼~自分の原点に出会える朝ドラで朝活(4月)
#虎に翼 評判のNHKの朝ドラです。実在の女性弁護士の草分けの方が主人公と言うことで、第一週の水曜日くらいから見始めましたが、どんどん胸熱の展開になり、すっかりはまっています。
ここではSNSでつぶやいていた感想などをまとめてみたいと思います。
モデルは三淵嘉子さん。戦前の女性は現代の私たちより闘っているな、といつも思いますが、彼女もそうです。戦前は暗黒時代と言われるけれど、そんな中でも、だからこそ、死ぬほどの勇気と大胆さで、格闘した人たちがたくさんいて、そのうえに私たちがいるのです。
🍄 第一週
第一週のこちらのダイジェスト、それだけで泣けます。
弁護士を目指す女性の葛藤は今も昔も変わらないと思います。
私も親や社会との葛藤、自分自身との葛藤がありました。
「女は家庭で才能を腐らせろ」と、戦後も裁判官が30期(私は46期ですが)の修習生に言っていたそうです。
ですので、私にとってもすごくデジャヴ感のある展開です。
母のはるさん「地獄」だというけど、「もし失敗したら?」という問いかけは刺さります。本当に、司法試験受験中は、就職もせず、結婚もせず、私も失敗したらどうなる?というところに追い詰められました(でも合格しなくても素敵な人生を送る方はたくさんいます。ご心配なく)。
固定観念に抑圧され、だめだ諦めろと言われてきた女性たちが、それでも自分が誇れる生き方がしたいと思って一歩を踏み出す。いろんな女性たちの思いや願いが交錯して何かが変わっていく。バタフライエフェクトです。
自分の原点を思い出して、感銘を受けました。
🍄第2週
昭和7年。晴れて「明律大学女子部法科」に入学した寅子
最初から、あるあるです。
男子学生から性差別的な侮辱を受ける
一方、女子の同僚からは「ヘラヘラするな」と言われる
法律をこれ以上目指すなら、と言ってフラれる
どれも身近にありました。よく取材しています。
ちなみに、私も「へらへらするな」と言われてしまうタイプでしたね。
そう、私の周囲にも、女性として悔しい思いをして石に縋りつく思いで司法試験を目指し、突破した女性たちが多くいました。
司法修習生の頃、軟弱だった私(受験でエネルギー使い果たして合格したころは疲弊して、「戦う人」ではなかった)は大いに鍛えられました。
そして、実際の法廷へ。
「ヘラヘラするな」ととげとげしていたよねさんの法定傍聴を寅子が追いかけ、課外授業へ発展。
裁判は、DV夫が、離婚裁判で負けたのに控訴して、妻の着物を返さないというもの。戦前の民法の以下の規定を縦に取ったのです。
夫が妻の財産を管理する(旧801条)
寅子たちが傍聴する法廷で、裁判官は旧801条を援用することは、「権利濫用」だとして、返還請求を認めます。
🍀 この夫の行動は、今も続く、ポストセパレーションアビューズ(Post Separation Abuse)の典型ですね。
ポストセパレーションアビューズとは、婚姻関係が破綻し、離婚を突き付けられた夫がそれでも妻に執着し、復讐のため、あるいは同居中中毒になったDVの延長として、支配を誇示するために、出来得る限りのハラスメントを続けることです。
現在もそういう人多くいます。現在審議中の「共同親権」を推進している「父」たちの中にも少なからず紛れています。
そして、離婚までは、コロナ給付金や児童手当も自分がもらっておいて清算しない、保険の名義変更に絶対に応じない、荷物の受け渡しもしない等、
夫の「拒否権発動」によって妻や子どもの生活に切実な要求が拒否されたり、振り回される事件はいまもとても多いのが実情です。
離婚訴訟では対応できないので、和解で解決しない場合は、別に裁判をしなければなりません。
まだまだ何も進歩してない! と歯噛みするような思いになりました。
🍄 第3週
法廷劇で、男たちが寅子たちを嘲笑。それに実力で立ち向かってしまい、法廷劇は中止。
🍀 許しがたい女性蔑視ですが、いまはどうか?ネット上では、女性弁護士やフェミニストを嘲笑する男性弁護士のツイッター投稿、いわゆる「法クラ」というところにあふれているようで、よく苦情を聞きますので、現代社会の様相をも反映していると思いますね(法律家に限らず、ミソジニーはネットに蔓延しています!!)
そこで、男性の股間を蹴り上げてしまったのが、よねさん。その生い立ちが壮絶でした。
売春した料金をちょろまかした置き屋に請求したくても、請求が難しい、しかし、謎の弁護士に依頼したところ回収できたという話が出てきます。
🍀 ところで、売春の対価の請求をしたくても、公序良俗違反(売春すること自体が公序良俗に反し、対価に関する契約は無効になるので、請求できない)で請求が困難、と言う件、今も昔も変わらないですね。
数年前も、パパ活女子が料金を踏み倒された挙句、性的動画を撮影されて逃げられたという被害の相談を受けましたが、加害者は逃げてしまった。
こういう事案について料金踏み倒しの責任追及が難しいのは今も変わりません。性的姿態の盗撮罪が昨年に制定されて、こういう人物は刑事処罰できるようになったので、少しだけ進歩しているのかな、と思ったりしました。まだまだ微々たる進歩ですが。
フランスや北欧のように買う側を処罰する法改正をすれば大きく変わるでしょう。
華族のお嬢さま涼子さんは、よねさんを「怒りをのみ込まず、まっすぐに、真っ先に殿方の…股間を蹴り上げた」「ちゅうちょなく股間蹴り上げられるステキな女性になりたい」と言う(ちなみに、私が男性の股間を蹴ったのは小学4年生、自衛のためでしたが、効果てきめんで本当に驚きましたね)。
一方、寅子さんはよねさんに「いくらよねさんが闘ってきて立派でも、闘わない女性たち、闘えない女性たちを愚かなんて言葉で括って終わらせちゃだめ」と言う。こちらも共感します。
その瞬間闘えなくてもきっと心に何かが残る。
そしていつか声を上げるときがくるかもしれない。だから今この瞬間闘ったり、声を上げたりできなくても、大丈夫。今この瞬間闘っている人は孤立してとてもしんどいけど、でも、声を上げない人は敵じゃなくてきっと一緒に歩いて行ける人だと思う。
🍄 第4週
寅子たちは、明治大学法学部へ。女子部の3年の後、さらに法学部に入らなきゃいけないという制度だったのですね。これは大変。
この週も、日常的な男性(法曹関係者)のジェンダーバイアスがいかに女性を傷つけているかを可視化する展開でした。
梅子さんの夫が授業。授業の内容は未婚の女性が犬にかまれて顔に大ケガを負ったことを両親が訴えた事件について。訴えを起こした被害女性の両親は勝訴し、1500円の賠償金を得たことを説明する。
🍀 こうやって、妻を落として、笑いをとったり社会生活を円滑にしようという人、本当に多いです。若い世代でも。
梅子さんだけじゃない、妻は抗議もできず、すん。抗議するとみんなの前でますますバカにしたりする。うちの「愚妻」とか言ったり。そういう人に限っていい人ぶっている。どれだけ無神経か、自分の胸に手を当てて反省し、心当たりがあれば直ちに妻に謝りなさい。
梅子さんは「私みたいにいやな女」と言うのですが、このフレーズも、ご相談でも日常生活でもよく聞きます。でも、総じて、全然いやな女じゃない。「誰があなたを『いやな女』だと思わせたのですか?そういう心境にさせた人間こそ罪深い」と私は声を大にして言いたいです。
そしてその翌日の場面。
🍀 男が女性の権利を認めたり尊重する立場にあるという特権意識が花岡に埋め込まれている。花岡も男性の有害な文化(それが社会の主流)に適用しようとしてこんな考えに陥ってしまうわけで、ある意味被害者ですね。
今もあまり変わっていません。法曹界ではあまりに日常茶飯事で、女性弁護士をほめたり認めたりするときに「上から」でない方が珍しく、指摘していたらきりがない。
ところが、寅子はそれを正しく指摘する。妥協しない。勇気があると思います。
そして、花岡は反省するわけです。自分の特権意識やジェンダーバイアスに向き合うことは容易ではないです。実社会でもこういうケースあまりみませんが、どうか、男性はドラマを反面教師にして自信と向き合ってほしい、と思いました。
🍄 以上、4月の感想でした(⋈◍>◡<◍)。✧♡
これからも自分の原点に出会える予感がして、見ていきたいと思います。
私も何と今年で30年弁護士をしてきて、何か達成した気になったり、ちょっと疲れて一休みしてもいいんじゃない?的な気持ちに捉われることがありますが、
まだまだ、何も達成していませんよ、と言う課題を、こちらの朝ドラで毎日突き付けられます。
そして、ちょうど今、進められている家族法改正の国会審議を見ていて、男性中心の何も女性や子どもの苦労がわかっていない国会議員らに勝手に法律をいいように蹂躙されそうな事態に気分が悪くなり、先達に申し訳ないと思いながら圧倒的な無力感を感じる今日この頃でもあります。でも私たちはたとえ絶望の中にあっても歩みを止めるわけにはいかないよね、と励まされます。
毎朝、人生に喝を入れていただけそうです。朝活ですね。
(以上、感想でした。備忘のために、不定期に続けるかもしれません)。
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