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刑法性犯罪規定改正を受けて(記者会見コメント)

 本日、刑法性犯罪規定の改正が参議院本会議で成立しました。お世話になったすべての方々に心より御礼を申し上げます。
 これを受けて、刑法改正市民プロジェクトとして、国会内で記者会見を開催しました。以下、私の発言をnoteに貼りつけさせていただきます。

 ヒューマンライツ・ナウは、2017年改正と#Metoo運動を契機に、国際水準の刑法性犯罪規定の改正、特に不同意性交等罪の導入、性交同意年齢の引き上げ、地位関係性を利用した性犯罪規定の創設などを求めて、皆さんと一緒に活動してきました。
 私自身弁護士として、日々性暴力被害を軽視する理不尽な法制度の前で、被害者の方々と涙を流してきたので、被害者に寄り添った刑法改正は切実な課題でした。
 伊藤詩織さんの戦い、2019年の4件の無罪判決、そして、全国のフラワーデモ等を通じて、この国では性暴力が性犯罪として適切に処罰されていないこと、被害者が守られていないことに光が当たりました。勇気を出して声を上げる人々が増え、社会の関心が高まり、厚い法制審議会の壁を突破して、全会一致で今回の改正が成立したことを嬉しく思います。
 今回の改正は大きな前進と評価することができます。
 まず、罪名が不同意性交等罪となったこと、「同意しない意思」を中心とする構成要件となったことは重要な成果です。
 また不同意性交等罪の事由として掲げられた8類型は、これまで多くの被害者が陥れられ、かつ司法救済を閉ざされてきた加害のパターンです。これまで司法から排除されてきた被害が、法的救済と処罰の射程範囲に位置づけられた意義は大きいと考えます。 
 また、国会審議を通じ、改正法がほぼNo Means Noをカバーすること、地位関係性を利用した性行為も広く処罰対象としうることが確認できました。これが適切に運用されることを切に願います。そのために、法曹関係者、警察、そして法学教育の責任は極めて大きいと考えます。
 不同意性交等罪を名乗る以上、名ばかりでは許されず、国際水準の不同意性交等罪であるべきです。
 意に反する性行為をされた被害者が確実に保護され加害者が処罰されるよう、適正な運用を求め、監視していきたいと思います。
 さらに、国際水準に基づいてアップデートし、Yes Means Yes型の法改正に発展する必要があると考えます。
 また、現実の被害を根絶するには、この規定が行為規範として社会で広く周知徹底され、守られることが何より重要です。
 国のすべてのレベルで改正法に基づき、性行為の同意に関する教育・啓発を推進することを期待します。
 性交同意年齢の年齢差要件、公訴時効、撮影罪やグルーミングの処罰範囲などまだ課題を残す規定も多く、5年後の付則で確実に検討が進むことを期待します。
 署名やデモ、そして報道、声を上げてくださったすべての方々、そして被害当事者・支援者の方々とともに、喜びを分かち合い、これからも一緒に前に進みたいと思います。
 
(ヒューマンライツ・ナウ副理事長 伊藤和子)
 

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