クラピカの名言がよぎる卒対の役員決め

子どもの通う幼稚園は学年100人規模の、そこそこのマンモス園であるが、年長の卒対はなかなか大変らしい。というのも、例年、くじ引きやジャンケンで負けた保護者が泣いたりだとか、役員同士で仕事の負担などで揉めるのはもちろんのこと、揉めた結果、何と卒園式に子どもともども欠席した保護者も過去にはいたらしい。

さて、この卒対を避けたいがために、各々、年少や年中で仕事を済ませるように手を挙げるのもまた恒例なのだけれども、もちろん、みんな考えることは同じなわけで、結局、くじ引きやジャンケンで負けたがゆえに、泣く泣く年長で卒対をやることになってしまう保護者もいる。

そう、私はその一人である。そんな私がいかにして卒対になったのかという経緯を記録したいと思う。

卒対を自ら希望する者はほとんどいない。結果、2年間、特に役員をやらなかった者たちが集められるのだけれども、「じゃあ、やっていただける方~?」なんて言われて、手を挙げられる人はいない。

この時代、幼稚園に通わせている母親とて、暇な人は決していないと思う。下の子を連れて来ている人もいるし、家で介護しているかもしれない、そして、仕事をしている人だって多い。もしくは上の子の小学校だとか習い事、町内会でも役員に就いている人もいるかもしれない。そんなわけで、私が仕事をしていようと、幼稚園側にも、他のお母さんにも関係がないのだ。しかしながら、「今、妊娠中で…」「仕事があるので、決まっても迷惑をおかけすると思います…」等々、ほそぼそとみんな事情を話し始める。もう役員が年少や年中で済んでいるお母さん方は遠巻きに雑談しながら、その様子を見ている。何だかすごく見られている気がする。

ここの辺りでとにかく冷や汗がすごい。触って確認はしていないけど、脇にもとんでもない量の汗をかいている気がする。先生は「話し合いで決めていただけますか?」とお願いしてくるけれども、ここで始まるのは、話し合いなんかじゃなくて、ライアーゲームなんじゃないかと思うぐらいの緊張感。それとも、金田一やコナンがやってきて、真犯人を指差すのではないかというようなピリピリとしたムードだ。

そんな中「じゃあ、私、やります・・・」と声を挙げたお母さんがいた。そして、気づいたら私もつられて手を挙げていた。というのも、沈黙を貫く度胸がなかったのだ。うちは一人っ子だし、そして、私が仕事をしていることをお母さん方もみんなが知っているわけではない。ゆえに、役員を逃れた後に後ろ指を差されるのではないか、そんな予感がよぎってしまったのだ。

でも、今、考えれば、あのとき黙ったままだったらと思う。だって、後ろ指を差されようと、別にそんなことはせいぜい何週間の話だろう。(というか、他にも沈黙を貫いた人もいたわけで)しかしながら、卒対の任期は1年間である。

帰り、自転車を漕ぎながら、私の耳の奥でクラピカが「答えは沈黙なんだ」とつぶやいた気がする。


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