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(後)幼稚園願書提出~教会で花嫁奪うレベルに迷惑かけた話

A園に到着すると締切時間ギリギリで、
私たちが最後だった。

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早めに並んでいた夫は教室の前方に座っていて、他のご家族にすいませんすいませんと通してもらいやっと夫の横に着く。その途端先生が
「おめでとうございます!!」
と大声で言うのでビクッとした。なんと奇跡的に募集人数ぴったりにおさまったそう。会場がほっとした雰囲気に包まれる。

わが家はといえば……
夫が修羅の如く怒りオーラを放っていた。
夫は時間にルーズなことを嫌う。しかもこんな大事な場面で連れが来なくて、どんなにかイライラして待っただろう。とてもB園のことを言い出せる雰囲気ではなく、面接で呼ばれるまで修羅の圧に耐えながら無言で過ごした。

簡単な面接、入園金の支払いと全ての手続きが滞りなく終わった。
近所のご家族とこれからよろしくね~と言い合いながら、私は心の中で(これでよかったんだ、これでよかったんだ、大丈夫…)と繰り返していた。

家に帰り深呼吸をひとつして、B園に面接辞退の連絡をした。面接時に使う資料を預かっていたので、近いうちにそれらを返却しに伺う旨を告げて電話を切った。

それなのに。
食事の支度をしていてもお風呂に入っていても、B園の園庭がキラキラと脳裏から離れない。おじちゃんの笑顔。鳥のさえずり。銀杏の葉っぱ。これでよかったんだと寝ても朝には振りだしに戻る。我ながら往生際が悪過ぎる。

頭の中がぐるぐるするのに疲れ果て、
意を決して夫に想いを伝えた。

この資料を返却する時に、今さらだけど受験するのは無理か聞くだけ聞いてみたい。そこで無理といわれたら踏ん切りがつくと。

夫は驚いてはいたものの黙って聞いてくれた。
「確かに自分もB園の印象はとても良かった。でも一度こっちから断ったのに、俺だったら
言わずに我慢する。Aもいい園だし、もう入園金も払ったじゃん」

ごもっとも。ぐぅの音も出ない。

「でも、任せるよ最後まで。好きにしな」
最後にそう言ってくれた。ありがとう夫。

翌日、ドキドキしながらB園に向かった。
「あ、返却ね。ありがとうございます」と出てくれた事務員さんを前に言い淀む。
「あの……いったん辞退したんですけど……
本当に今さらなんですけど…もう受験することは難しいでしょうか…」蚊の鳴くような声で伝えると、えぇっと驚いた後に園長を呼びに行ってくれた。

私は息子に行かせたいかでなく、自分が楽な方を選択してしまった気がすると。話すうちに自分でも驚いたことに涙がでてきた。

園長は「お母さん、その気持ち受けとりました。息子さんは責任をもって預からせていただきますよ」と、改めて面接の予約を入れて下さった。

それから夫に電話で報告し、A園にお詫びに伺い、入園の取り消しをしてもらった。当然だけど入園金は戻ってこなかった。

この春卒園するまで3年間、送迎など大変ではあったけど「この園にして良かった」と常々実感できて、それはひたすらに幸せだった。

ただ、やはり大人としてどう考えてもアレはいただけなかった。
ドラマで教会にバーンと飛び込み花嫁と逃げるシーンがあるが、見る度に

「大人なんだから、こうなる前にもうちょっと早いタイミングで考えるなり行動するなりできただろ。迷惑。……ま、ドラマだからね」

と思っていた。でも実際に「こうなる前に」分からなかった自分がいて、思い出す度に情けない恥ずかしい申し訳ないありがたい心苦しい…いろんな想いがグチャグチャして身悶えた

数年くすぶらせていたので書き出してみたらこーんなに長くなり、我ながらびっくり。いつかきちんと振り返りたいと思っていたけどなかなかできず、こうしてnoteに記せたことに少しほっとしている。

数年後、中学受験か高校か分からないけれど、また家族で進路について考える時があるだろう。今よりもっと息子の気持ちが大切になるはず。でも学力との兼ね合いもあるし、親子で意見の違いがあるかもしれない。その時に息子が気持ちに蓋をしないで済むよう、希望する未来に進めるよう、うまくサポートできたらいいな。そうしたら、この苦い経験も少しは役に立ったことにできる気がする。

もしここまで読んでくれた方がいたなら、顔も知らない私の懺悔に長々とつき合ってくれて、本当にありがとう。感謝します。

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ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます♡ さらにコメントなどいただけると、しっぽをブンブン振ってなつきますU^ェ^U