aiko 【いつ逢えたら】 レビュー


久々に聞いた瞬間に震えるような衝撃を受ける1曲がaikoからリリースされた。リリースされたと言ってもまだ先行配信されただけで、これがシングルになるのか何になるのかは不明なのだけど。


aikoは25周年を迎え3月29日に15枚目のニューアルバム【荒れた唇は恋を失くす】をリリースしてファンやそうでない人にまだまだaiko節が健在なことをアピールしたばかりだったのに、25年のaikoのキャリアの中でも異例の2週間後に新曲が発表されるというまるで若手のような過密な活動を行っているのだが、そのアルバムの曲をファンとしては覚えきる前にとんでもない楽曲を世に放たれてしまって狼狽えているというのが素直な感想。


とにかく何が言いたいかというと、今回先行配信された【いつ逢えたら】がとんでもない問題作なのである。


ぱっと聞いただけだと、『あーいつものaikoっぽいバラードね』と思うかもしれないけど今回の【いつ逢えたら】を始めとしたaikoのアニメ作品の主題歌は毎回そこにaikoの想いがとてつもなく乗っかった珠玉の作品の数々だということを今回はみなさんにお伝えしたい。


【まっすぐにいこう】の主題歌【どろぼう】
【あらしのよるに】の主題歌【スター】
【聲の形】の主題歌【恋をしたのは】
そして今回の
【君は放課後インソムニア】の主題歌【いつ逢えたら】


【恋をしたのは】だけは書き下ろしだったが、あとの曲は基本aikoのストックの中から寄り添える曲を選んでいて、今回も主題歌の話が舞い込んできたときに『あ、ピッタリ重なる曲がある!』と本人が思い、3月リリースのアルバムの曲より前にすでにRECは完了していたとのこと。


ストックの中から寄り添える曲を選んだ結果、アニメの世界観とバチバチに当てはまる作品を作り上げられるaikoもすごいけど、それよりこの【いつ逢えたら】という楽曲がとにかくとてつもなくすごいので今日はその話をさらっとさせてもらえれば。


歌詞は載せられないので、検索して読んでいただきこのレビューを見てもらえればな、と思いますがこの曲で一番aikoが伝えたいことは
『あたしの守った心はあなたがくれたもの』
ということ。

歌詞は全体的に抽象的に紡がれていて、ぱっと見ただけでは結論はわからず聞き手によって解釈できるようになっているのでこういうことをaikoは言いたいんだという名言は避けるが(それは作品、君は放課後インソムニアが伝えてくれてると思うので)この物語の主人公が大切にする心があって、それは一番そばにいる”あなた”がくれたんだよ、という感謝の気持ちを歌っていると個人的には解釈している。


この
『あたしの守った心はあなたがくれたもの』
を届けるために、そこまでに壮大なメロディが織り込まれているので歌詞もだけど流れるメロディにも注目して欲しい。


基本、aikoの曲に限らずではあるが特にaikoの曲の展開で多いのはAメロ、Bメロ、サビ、Aメロ(歌詞は変わる)、サビ、ブリッジ、大サビというパターンが多いのだがこの曲は変則的で

Aメロ、サビ、大サビ、Cメロ、サビ、大サビ

と、4分2秒という短い曲の中にサビが4回も練り込まれている。ただしこれは個人的な解釈でaikoはサビの部分はBメロと言うかもしれないけれど何度聞いても『いつ逢えたら』の部分がサビではなくその前の『まぶたの裏で絵を描いた』のところが自分としてはサビに聞こえるのでそう表現させてもらう。そう聞こえるのは多分、Aメロはピアノとaikoのボーカルだけで始まるところからバンドがぐっと入ってくるからということと、ブリッジを挟んで大サビに展開するのが得意なaikoとしては今回それがないので、最後のサビを大サビと考えると、その前の部分はサビなんじゃないかな?と思うから。
まぁ表現はどうであれ、この自由なメロディの組み方が25年やってるaikoの中で多分初めてで(もしあったらファン失格、申し訳ありません)ここに来てまだ進化するか?という驚きと、最近のトレンドをあっさりと自分の音楽に落とし込んでさらっと披露するんだという衝撃で、何度も聞いているとこの25年見てきたaikoの色々なことが思い出されて泣けてくる。


そんな【いつ逢えたら】で、注目して欲しいポイントを何箇所か箇条書きにしておくのでみなさんも曲を聞きながらチェックして欲しい


・あなたにどれだけ冗談言えるか
のところでaikoが微笑んで歌っているところ

・戻れなくなりそうなところで眠りにつく
の眠りにつくのメロディの破壊力。涙腺崩壊する。

・とにかく触って手を握って
のロングトーンのソウルフルaiko

・あたしの守った心はあなたがくれたもの
の最初は地声、そのあとはミックスボイスでロングトーンをまとめているところ。ここ10年ぐらいaikoは高音をあまり地声で処理せずにファルセットだったりミックスを使うようになったけど、それによって歌い方の優しさの幅がめちゃくちゃ大きく広がって、ここも優しい仕上がりになっている。あとここの音階のキレイさたるや

・身も心もあなたの形
の、ちーいー

・あたしの守った心はあなたがくれたもの
を二度言うところ。aikoは大事なことは二度言う。生涯忘れることはないでしょうのように。その二度言うところの一度目のくれたものーのところ。もうここが頭から離れない。もう天才としか言えない。これを25年目に今も昔と変わらずしれっとやってくるからずっとファンを辞められない。悔しいが好きすぎる。


と、最後は気持ち悪いaikoヲタ感が全面に出てしまったけど、とにかく伝えたいことはこの曲は名曲だということ。その何が一番すごいかって作品の世界を全く壊さず曲で寄り添い、そしてこの歌詞を読んだ人がどんなアニメなんだろう?って確実にアニメを読みたくなるように仕上げているところ。40歳過ぎても恋愛の歌しか書けない?バカにしないで欲しい。aikoの恋愛の歌は好き好き大好きみたいなストレートだけじゃなく、日本人の奥ゆかしさの奥底まで描いている古典名作だって存在する。

そんな【いつ逢えたら】を是非aikoファンじゃない方々に聞いてみて欲しい。たくさんの方々に届きますように。オタクより。

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