デビュタントへ
まだ誰にもとられない手をして立っている人へ。
燃えるようなその手を冷やしてはなりません。
水晶などは握ってはなりません。
炎のような手をそのまま誰かにゆだねる事です。
もしあなたが、恋の焚火の上で足踏みをするような、そんな踊りをしたいのならば、青の似合うような人になるべきではありません。
もしあなたが、浅瀬を力強く泳ぎ過ぎる魚のように、前のめりな生きざまで踊りたいならば、赤の似合うような人になるべきではありません。
そんな風に思いながら私はカーテンに寄り添って立っています。
白手袋の私の手が、外気に冷やされたカーテンとワルツを踊っています。
もしあなたが、私の手に触れるようなことがあるなら、どんな色を纏っているでしょう。
どうか、誰かの手に触れ合うあなたの手が燃えるように熱くありますように。
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