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青春謝肉祭

利用規約】をご一読ください
※暴力・センシティブ表現があります

40分程度?

川藤 いずれ獲物になる 母親がいない
永瀬 群れの長になる 父親が新しくなった
岩田 茶色くやわらかい髪
犬山 平凡
徳田 神尾兼ね役。サッカーが好き
神尾 学校に来もしない脱落者
姜  昆虫好きの教師

+++


犬山:岩田!
0:(駆け寄ってくる足音)
犬山:な、俺フンコロガシ見つけたんだけど
徳田:なにそれ
岩田:まじ!?すげぇじゃん!ファーブルで読んだやつだ!
犬山:よな!?俺もファーブルで読んだ!この後ろ脚すげぇいいよな。
岩田:かっこいいー!
徳田:きらきらしてんじゃん。かっけぇ
犬山:あ、姜先生!
姜:(通りかかって)うん?どうした?
犬山:姜先生、これ何ていうフンコロガシですか
姜:ん、これはねぇ。ゴミムシダマシだね
岩田:……フンコロガシとは違う?
姜:そう、まぁ近い仲間だけど。ゴミムシに似ているからゴミムシダマシ。きれいだよね、この虹色の艶とか、犂みたいな足とかね。
岩田:おい、フンコロガシじゃないんじゃん。
徳田:ゴミムシダマシってなに?
岩田:そのへんにいるやつ
徳田:レアじゃないんかよ
犬山:……
姜:詳しい種類はなんだろうなぁ……この子どこで見つけたの
犬山:……
姜:犬山君。
犬山:フンコロガシだよ、これ
姜:んー。ゴミムシダマシは嫌いかい。
岩田:何泣きそうになってんの。おれ、先帰るよ。じゃあな!
徳田:あっ、待てよ岩田!サッカーする約束だろ!
岩田:川藤とかとやれよ!
徳田:あいつらもう帰っちまったよ!
0:(徳田・岩田去る)
犬山:……(手からゴミムシダマシの死骸を落とす)
姜:ああ、何で落とすの。もったいない(拾い上げる)
犬山:……
姜:見て。足の一本も欠けてないよ。こういうのはきれいな標本になるんだよ、犬山君
姜:ね、ゴミムシダマシだって、立派な甲虫なんだよ。(犬山の手に持たせようとする)
犬山:要らない!(振り払う)
姜:駄目だよ、そんな乱暴にしちゃ……(チリ紙で丁寧に拾った虫の死骸をくるんで、立ち上がる)準備室に僕の標本があるんだ。見に来る?
犬山:(鼻をすすって)……うん
姜:よぉし。じゃあおいで。
0:(理科準備室の戸がキィ、と甲虫のように鳴く)
犬山:……わぁ、
姜:ね、けっこう、すごいだろ。
犬山:これ、
姜:これいいでしょ。目が高いねぇ。出して見せてあげようか?
犬山:これ、フンコロガシ?
姜:そうだよ。エジプトでね、なんと帰り際に空港のマンホールの上で見つけたんだよ
犬山:ほしい
姜:え?
犬山:これほしい、先生
姜:うーん。
姜:いや、これはあげられない。
犬山:どうしてくれないの!
姜:(膝をつき、犬山と目を合わせて)あのね、これは先生が20歳の頃に初めて日本を飛び出して、お腹を壊したり危ない目にあったり、大変な思いをして出会った子なんだ。
姜:その時、僕がどんなに感動したか。
姜:君には、この子がただ死んだ虫に見えているだろうけど、これは僕の思い出なんだ。
犬山:……
姜:ね、犬山くん。また、見せたげるから
犬山:……嘘だ、先生が独り占めしたいだけだ

0:(帰宅途中の川藤と永瀬。)
永瀬:何とぼとぼ歩いてんだよ、徳田が追いついてきちゃうだろ。
川藤:嫌だな明日。授業参観だよ
永瀬:あれ、明日か。どうせ俺の親忙しくて来ないわ
川藤:俺さ、母さんがさ、
永瀬:ああ、いないんだっけ。
川藤:そう。
永瀬:苦労する?やっぱ
川藤:よくわからん。元々いないからさ。お前もそうじゃん
永瀬:あ、そうね父親がね。うちは小学校まではいたよ
川藤:今日うちで飯食う?
永瀬:あ?いや、いいよ。お前の家、飯とか出るん
川藤:俺が作んだぜ
永瀬:なにを
川藤:飯
永瀬:なんのめし?
川藤:雑炊。
永瀬:へー。父親は作らんの、飯。
川藤:うちの父ちゃん、ドカタだから疲れて飯なんか作れねぇよ
永瀬:あ、そう。
川藤:ていうかさ。
永瀬:あ?
川藤:こないだ岩田が来たがってさ、うちに。で、近所の姉ちゃんに母ちゃんのフリしてもらったんだよな
永瀬:岩田って人の家来たがることあんだな。徳田ならわかるけど。
川藤:そしたら岩田がさ、「お前この女とできてんだろ」ってさ
永瀬:え?なんだそれ、しょーもな。
川藤:ふふん
永瀬:え、なんだよ。できてんの?
川藤:あの女の方が食ったんだよ俺を。
永瀬:きっも。何おまえ
川藤:いやいや……
川藤:あ、神尾だ
永瀬:あ、ホントだ。あいつ学校も来ないで何してんだ
川藤:あいつトウキョウに出稼ぎに行くんだって
永瀬:なんだそれ、誰から聞いたの
川藤:え?……ああ、噂だよ

(0:通学路上のパチンコ屋前)
姜:よっ、神尾君
神尾:……なんでこんなとこにいんだよ
姜:(去りかけたのをとどめて)ちょっとまぁまぁ待ちなさいって
神尾:だりぃー
姜:バイト終わりだよね
神尾:……
姜:パチンコ屋のバイトって大変じゃない?僕も実は昔やってたよ
姜:はい、奢り。お酒じゃなくてコーラだけど。はい。
神尾:(受け取って)ども。バイトって禁止だっけか、うちの学校
姜:まぁ、一応。決まりだけあるけど、裏でみんなやってるからねぇ。
神尾:センセーも学生時代やってただろ
姜:おや、よくわかったね。
神尾:それがパチンコか
姜:そうパチンコ屋のね。近所のおじさんが毎日来ていてね、勝つと小遣いくれるんだよね。
神尾:俺、客に気に入られてよ、この間……(つい不味いことを言おうとして口をつぐむ)
姜:お、なんだなんだ。煙草でももらった?
神尾:や?そんなんじゃねぇっすよ
0:(神尾、コーラをあわただしく飲み干す)
姜:ま、君もねぇ、たまには来なさいよ。学校に。
神尾:行かねぇよ。つかさ、家庭訪問の度に俺の家来るのやめろよな。親父の機嫌が悪くなるだけなんだからよ
神尾:バイバーイ(ペットボトルを投げ捨てる)
姜:あ、ちょっと!……やれやれ
0:(転がるペットボトルを眺める姜)

(0:教室)
永瀬:おはよ。
岩田:おはよ。
永瀬:川藤の家行ったって?
岩田:うん
永瀬:なんで?
岩田:なんかあいつ最近服きれいだから。
永瀬:なにそれ。
岩田:女、女。ふふ
永瀬:……お前さ、そういうズカズカ探偵みたいなことすんのやめれば。きもいよ
岩田:はぁ?友達付き合いでしょ別に。
永瀬:川藤が年上とできてるってマジ?
岩田:あれ、なんで知ってんの?そうだよ
永瀬:へぇ
岩田:なんかさぁ、ジトジトした目で俺を見んの。あの女、相当男好きだよ。
永瀬:そのねぇちゃん、名前なんていうの
岩田:知らん
永瀬:ふーん。っていうかさ、お前犬山とデキてんの?
岩田:は、……いや?
永瀬:犬山がお前の体操着もってたぞ
岩田:あー、なんだ、あれこないだ貸したんだよ。
永瀬:ふぅん。
岩田:ふふ、お前なんでそんな突っかかんの、最近。なんかあった?
永瀬:別に。

0:(川藤宅、川藤が門のあたりで女を見送っている)
川藤:カナ姉ちゃん、
川藤:ごちそうさま、また来てね。
川藤:姉ちゃんの飯うまいから好きだよ。
川藤:……ううん、飯だけじゃないよ。……また来てね
永瀬:(女とすれ違って)……おい、川藤
川藤:永瀬じゃん
永瀬:飯食わしてよ
川藤:え?今日はもう飯つくんねぇよ。さっき食ったもん。
永瀬:ケチ。……さっきの女?
川藤:まぁね。
永瀬:ブスだな。
川藤:……
永瀬:名前、なんていうの。あの女。
川藤:何しに来たの、お前
永瀬:え、別に。雑炊食わしてもらおうかと思って。
川藤:作んないよ今日は。
永瀬:あの女が飯作ってくれんだ。
川藤:何。
永瀬:へぇ
川藤:……
永瀬:って、いうかさ。
川藤:うん
永瀬:俺もう父親いるから。
川藤:え?
0:(長々と落ちる影)
永瀬:じゃあな。

0:(理科準備室)
姜:いやぁ、岩田君は詳しいね。ファーブルを読んでいる子は違うなぁ。
岩田:そうでしょ。理科が全部虫の話だったら、俺真面目に勉強するよ
姜:いいねぇ。ファーブルを教科書にした授業がしたいなぁ、……田中先生が作った課程は厳しくて余裕がなくてね
岩田:やっぱりフンコロガシが水牛みたいで一番かっこいいね。この辺がゴミムシの仲間?
姜:そう。ついでにゴミムシダマシとの違いも教えてあげる。面白いんだよ、ゴミムシに似てるからゴミムシダマシ、ゴミムシダマシに似てるからゴミムシダマシモドキ、なんて。
岩田:ねぇ、姜先生。ゴミムシダマシは腹いっぱい食うと性器が出てくるってほんとう?
姜:おや、良く知っているね。本当だよ。
岩田:ふぅん。食欲を満たしたら次はすぐ性欲ってこと?
姜:そういうわけじゃないよ。お腹がパンパンになるから押し出されてきちゃうだけだよ。
岩田:……
姜:ん、どうしたの
岩田:ネェ、先生。犬山がさ、この話を教えてくれたんだ。そのときあいつは僕の腰のあたりをこう、捕まえてさ、それでそんな話をするんだ。
岩田:ゴミムシダマシは腹いっぱい食うと性器が出てくるんだ、って。

0:(平凡な放課後)
徳田:おい永瀬!今日こそサッカーするよな!
永瀬:今日俺、塾。
徳田:なぁーいつになったらサッカーするんだよー
犬山:岩田。今日珍しく遅刻だったじゃん。(なにしてたの)
岩田:(犬山を無視して)なぁ、川藤、今朝さ!お前の女の家から神尾が出てきたよ
川藤:え、
岩田:ホントだよ。あれはね、デキてるよ
川藤:え、
岩田:神尾に言わなくていいの、俺の女だって
川藤:え、
永瀬:なんだよ、「え、え、」ばっかり。
岩田:あ、あ!なぁ、あそこにいるの神尾だよ
岩田:行けよ川藤。痴情のもつれ、やれよ。
犬山:(小声で)やめろ岩田
川藤:…(大声で)か、神尾!
神尾:あ?
岩田:ふふ、やめとけって
永瀬:やめとけよ川藤
犬山:そうだよ
神尾:なんだよゾロゾロと……
川藤:お前さ、カナ姉ちゃんと付き合ってんの
神尾:別に付き合ってねぇけど、あんなブス。ヤッてるだけだよ
川藤:……
神尾:なんだよその目。教師にチクろうってか。
川藤:や、やめてくんねぇ?
神尾:あ?
川藤:カナ姉ちゃんに会うの、やめてくんねぇ?
神尾:なんでだよ
川藤:カナ姉ちゃんを取るなよ……
神尾:お前のだって誰が決めたんだよ、カナがそういったのかよ
川藤:き、聞いてよ、俺母親がいなくて……飯、自分で作るしかねぇし……(神尾につかみかかる)まずい雑炊ばっか食ってんだよ毎日!カナ姉ちゃんと寝たら!飯作ってくれんだよ!だからお、おれにくれよカナ姉ちゃんを!取るな!
神尾:うるせぇよ離せ!
0:(川藤、神尾に殴られて倒れる)
神尾:おい!二度とそんなつまんねぇ話すんじゃねぇぞ!
0 :(背中に蹴りを入れて神尾去る)
川藤:おぅえっ……
永瀬:……(見下ろしている)
永瀬:……言ったじゃん。そりゃそうなるだろ。
川藤:な、永瀬、
川藤:ちょっと、たすけろよ、たてないんだよ
川藤:なぁ!(永瀬の足をつかむ)
永瀬:さわんなっ!(思わず蹴る)
川藤:うあ〝っ……!
岩田・徳田・犬山:!
永瀬:(自分でも驚き、)あ…………ハッ…ハッ…ハッ…はぁッ…ハァッ(一人一人の目を見まわして)
永瀬:(もう一度確信をもって蹴り上げる)
川藤:ガ、っ!?な、ながせ
岩田:エイッ!
徳田:っ!え、えい!
0:(岩田、徳田も蹴り始める)岩田・徳田:(蹴る声)
川藤:ゴッ……おぶ……ガっ……ゲホッゲホ……あェ
0:(間断なく誰かの足が川藤を蹴る。川藤の嗚咽が続く)
0:(やがて静かになる)
岩田:はぁ、はぁ
徳田:はぁ、はぁ
川藤:(微かに、異常な呼吸をしている)
犬山:……あご、外れてるぜ……川藤……
永瀬:……
犬山:なぁ、やばいよ永瀬
永瀬:(微笑んで)帰ろうか

0:(永瀬宅)
永瀬:(走って帰宅する)ただいま!
姜:お帰り。
永瀬:……ただいま。「おとうさん」
姜:靴下がどろんこだね。虫とりでもした?
永瀬:虫なんてもんじゃないよ。すごい狩りをしたんだ
姜:狩り?……へぇ。成果品を見せてくれる?
永瀬:やだっ!(階段を駆け上がる)
姜:栄一くん!
永瀬:(階段の上から)おとうさん!
姜:んっ?
永瀬:おとうさん、太ったね……
姜:あ、そうかな。幸せ太りかな。沙織さんのご飯がおいしくてね。
永瀬:痩せてよ。ご飯食べないで。寝ないで。
姜:ははは。死んじゃうよ
永瀬:死んじゃえ!
姜:……!

0:(不穏な、次の朝)
永瀬:……犬山は蹴らなかったよな。昨日。
岩田:……そうだった?
永瀬:そうだった。
岩田:ふぅん、お前ってそんなねちねちしたやつだったっけ。
0:(教室の扉が開く)
犬山:……おはよう
犬山:(岩田に駆け寄って)おはよう(、岩田)
徳田:(犬山の前に立ちはだかって)
犬山:っ、な、なんだよ徳田……
徳田:お前昨日さ。
犬山:なに。
徳田:蹴らなかったよな。俺たちで一生懸命、川藤を蹴ったとき
犬山:お前らがおかしいんだよ、あれは……。キチガイだろあんなん。
岩田:「ああ、うまくやるな」と思ったよ。ずるいよ自分だけ
犬山:なんだそれ
岩田:…
犬山:姜先生に、言ってやるからな。
永瀬:(静かに見守っていたが口を開く)お前何、いまさら。
犬山:!
永瀬:お前はあの時狩りをしなかったろ。でも逃げもしなかったな。群れの一員として共に肉を食う権利はないし、裏切る権利もないぞ。お前には。
0:(岩田に冷やかに見据えられる)
岩田:お前が根性なしだって、みんな知ってるよ、ホモ野郎。
0:(教室の扉が開く)
姜:おはよう
永瀬:おはよう。おとうさん
犬山:えっ
姜:んっ?……はは、永瀬君、先生と呼びなさいね。
岩田:ふふ
徳田:っふふ
永瀬:うん、わかったよ、姜先生
姜:(咳払い)ところで今日は、みんなにお話があります。
姜:川藤君が大けがで入院されることになりました。誰かに暴力を振るわれたようです。
犬山:!
永瀬:それ、神尾です。先生。
姜:え、永瀬君、それ本当……
永瀬:本当だよ。見たもん俺達みんなで。俺と、岩田と、徳田と、それと犬山。
姜:そうか……神尾君が?そう……何かトラブルがあったのかな。君たちはどういう場面を見たの?
徳田:川藤は何て言ってるんですか
姜:それが意識が戻らなくてね。急な事で先生もまだお見舞いに行けていないんだが。
岩田:心配だね。
姜:うん…見たのにどうして止めなかったのかな。
永瀬:止められると思います?俺らに。怖いよ、神尾。
姜:病院に連絡はした?
永瀬:ううん。忘れてた。
永瀬:俺も、家庭でつらいことがあったんだ、先生。それどころじゃなくてさ。
姜:……
姜:友達が意識を失って血を流しているのに、君たちみんなで、その横を通り過ぎて帰宅したって言うの?
0:(押し殺すような沈黙)
姜:今日の放課後は川藤君のお見舞いに行きます。皆も一緒に行きましょう。
姜:そして、明日の朝、一人ずつ話をしましょう。
0:(全員、頷きも嫌がりもしない)
姜:それと、もう一つ……犬山君?
姜:ちょっと君だけ個人的に話があるんだけど、いいかな。
犬山:え、
永瀬:行けよ。先生が呼んでいらっしゃるだろ
犬山:……
姜:ちょっと、廊下で。
0:(ドアが閉まる)
岩田:なぁ!どうすんの、川藤の意識が戻ったら俺達ケーサツ行きだよ
永瀬:……
岩田:永瀬!どうすんだよ!
永瀬:知らないよ、全部神尾がやったって言い張ればいいだろ。
徳田:そうだよ。女の取り合いしてた話してやろうよ。
永瀬:どうせ神尾はトーキョーに逃げていくんだから。
岩田:トーキョー?
永瀬:ずるいよ、自分だけ逃げるなんてさ
0:(教室の外)
姜:犬山君、どうして呼ばれたかわかるかな。
犬山:……
姜:今日来たらね、理科準備室の標本が、一箱割れていたんだ。
姜:君だよね。
犬山:ちがいます
姜:見ようとしたら落ちちゃったのかな
犬山:……っちがうよ。昨日は岩田達とすぐ帰ったもん……
姜:中身、見た?きれいに並んでいた虫が全部潰れちゃったんだよ。
姜:一緒に準備室に来て、見てくれないかな。
犬山:嫌だ
犬山:嫌だ!(泣きべそをかいている)
姜:ねぇ犬山君、僕じゃなくて虫のことを考えてほしい。
犬山:し、死んでんじゃんか!
姜:っ、(腕をつかむ)どうしてそんなことを言うんだ!!
犬山:ひぃ!
姜:あ……ごめん、ごめんね。
犬山:見たかった、見たかっただけ……
姜:はぁ。そうか……。割ってしまったこと、謝れるかい?
犬山:ううぅ!ああああ!(腕を振り切って走り出す)
姜:あっ、待ちなさい!犬山君!

0:(無人駅のホーム)
犬山:はぁ……ひぃ、は、はぁ……(真っ青な顔で歩いている)
0:(肩をたたかれる)
犬山:ひ!
神尾:(上機嫌に)お前何してんの。サボり?
犬山:か、かみお……
神尾:なんだよ。辛気臭い顔して
犬山:神尾はなにしてんの…
神尾:……(小声で)な、金ほしいか、
犬山:え、か、かね?
神尾:ほら、見ろよ。(犬山の肩を抱き寄せ札束を押し付ける)金が欲しいならやるよ!オイ!
犬山:え、な、なんの金、……?
神尾:オッサンからすった
犬山:え、盗んだん?
神尾:俺トーキョー行くんだよ!トーキョーで働くんだよ!この金でさ!お前に軍資金ちょっと分けてやるぜ!ほら、ほら(札束から2、3枚抜いて)これやるよ!いらねえのかよ!
犬山:(わけもわからず金を受け取って)東京……
神尾:そうだよ!狭い田舎なんかやってらんねぇよ
犬山:お、おれ。おれも
神尾:あ?
犬山:俺も連れてってくれ!俺も東京に!
神尾:なんでだよ。
犬山:お願い、お願いだから。
神尾:行きたきゃ自分で行けよ。金やっただろいま
犬山:こ、これじゃ足んないよ……
神尾:自分で貯めろよ後は!馬鹿だな
犬山:わ、わかったこれ返す!返す。返すよ、返すから俺を東京に
犬山:あ、これ、この電車に乗るんだろ、お、おれもいく、
0:(殴られて倒れる)
犬山:ガッ、ぅ、神尾っ
神尾:じゃあな!
犬山:げほっ
神尾:稼ぎたかったらパチンコ屋で働けよお前も!川藤に言っとけ!カナはお前にやるってさ!
犬山:ま、まって、待って!
0:(電車は滑り出す)
0:(電車の壁を殴る)
犬山:連れて行けよ!連れていけ!!神尾ぉ!
犬山:俺も連れてってよぉ……。

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