見出し画像

吉本のお笑いとジェンダー


Girl’s Republicはより良い世界を作るための発信活動をしています。2019年、芸能プロダクションの吉本興行は闇営業問題などで「変化」を要求されていた年でした。その時代性は吉本のお笑いにどう反映されたのか、ジェンダーを通して考えます。
・Girl’s Republic メンバー紹介

・せな:大学生、主に社会運動と抵抗思想を勉強中。

・もゆ:フェミニスト(本人としてはこの言葉を古いものにしたいのであまり使いたくない...)。

・ミルクボーイとぺこぱ

もゆ:ちょっと私が気になってるのは、最終決戦の他の2コンビに関して、どれくらいの人が笑えたのかっていう、笑

せな:この前ミルクボーイはぺこぱに比べて笑えなかったという話をしてくれたけど、どうして笑えなかったか話してもらえる?

もゆ:もなかのネタで言えば、もなか職人の気持ちとか色々考えてしまった。毎日一生懸命誇りを持って作っているものをバカにされているって思っちゃわないかなとか...。それから、なぜオカンなんだろうとか考えてしまった。なんかもう、色々考えているうちに笑えなくなっちゃったんだよね。ぺこぱを観たあとだったから、誰かを叩いてネタにするお笑いの苦しさがより自分の中でより目立ってしまったのかなと思ってる。

せな:「オカン」に違和感を持ったってのは大事なことかもしれない。

もゆ:そうかもね。ミルクボーイのネタが「オトン」じゃなくて「オカン」だったのは重要なことかもしれないと思ってる。まだうまく言葉にできないんだけどね。

せな:女性は「母親」にされることで家事や育児を押し付けていいといったように、人権を制限されてきた現状と関係しているかな。このネタが「オトン」でなく「オカン」だったのは色々理由があるとは思うんだけど、単純に語感とかもあるかもしれないけど、オカンの方が家にいてよく話す存在だったから、とか。ちょっと天然な女性(母親)がかわいいとされることとか。

もゆ:「オトンが最後に頓珍漢なこと言って終わりになるから、あのネタで一番あほなのはオトンだ」って意見を読んだことがあるんだけど、問題の本質はそこじゃないというか。このネタってシメの一言的に「オトン」の言葉が使われているけど、日本の家族で「お母さんが色々なことを言って、最後にお父さんの一言でその問題がまとまる」ってこと結構あるんじゃないかと思うのね。あ、もしかしたら、そういうよくある家庭の会話の構図がミあのネタに出ている気がして苦しかったのかもなあ、と今では思い始めた。あと、そう、せなはが言ってくれたようにお母さんはちょっと天然な方が親しまれやすいところとかね。お笑いと社会は切り離せないと思う。

・お笑いと社会活動

もゆ:年末にウーマンラッシュアワーのネタやってたんだけど観た?

せな:観た観た!

もゆ:笑。ああいう芸人がいてくれることが今のテレビにとって変革できるチャンスになりうると思うから希望だなって思う

せな:そうだね。前、うちのゼミにウーマンラッシュアワーの村本がゼミの発表会に来て、

もゆ:え!?

せな:でさ、彼の芸風は売名とは全く違うと感じて。吉本と揉めてるように、例えば在日コリアンの権利を主張しても彼自身の「利益」にはならないわけだから。よくやってると思うよほんと。ただ、彼しかいないことでガス抜き感は拭えない。

もゆ:そうなんだよ、ウーマンラッシュアワーだけがそれやってるのはどうかなーって思っちゃう

せな:そうそう。

もゆ:もっといろんな人がやればいいんだけど、吉本が怒っちゃうんだろうな

せな:よしもとってさ、加藤浩次の謝罪にしろ松本人志の「松本、動きます」にしろ、吉本的な徒弟制度が強く残ってるじゃない?

もゆ:うんうん。

せな:先輩後輩は絶対みたいな。だからウーマンラッシュアワーみたいなのは稀だよね。

もゆ:吉本全体が保守的な団体だよね、まず

せな:闇営業問題だって吉本は認知してたわけでしょ?

もゆ:してただろね、絶対

せな:そこで社員を足切りして問題を解決したのは、組織として非常に時代遅れというか。その中でもう一人、村本みたいな人を出すってのは難しいと思うよ。村本だって普通のお笑いスタイルで流行ったから今のスタイルができるようになったんだし。

もゆ:そうだね、まず普通に(お笑い)やって流行らないとあれをやれないんだよ。ただいきなりあれをやっても、ただ吠えてる人で終わっちゃうから。

せな:高松ななさんだっけ?彼女はお笑いと社会活動に結びつけようと頑張ってるけど…やっぱこの組み合わせは難しいのかもしれない。

せな:バービーとか渡辺直美とか、お笑いに関係ない社会活動にすごい熱心じゃん?下着をプロデュースしたりインスタグラマーになったり、お笑いからある程度抜け出したほうがある種キラキラしてるよね。

・男性だからできるお笑い?

もゆ:ずっと言ってるけど、私、男女平等が達成されたらお笑い芸人になりたかった。中学生の時は男女差とかあんまり感じなくて考えなかったから、なにも考えずに「芸人になりたい」と言ってた。けど、だんだん高校生ぐらいになってテレビの世界とか、現実の大人の世界とか私が・・・。例えばね、TVで芸人さんが言う笑いを取ってる言葉がね、「あ、それ私も言おうと思ってた!」と思いついたりすることがたまにあるわけ。

せな:あー、はいはい

もゆ:でも、だいたいそれ言って笑いとってるのって男性の芸人さんで、「あ、それ私言っても絶対面白いって思ってもらえないんだろうな」って気づいちゃって。それが辛くて。高校生のときまでお笑い大好きだったんだけど今はなんか、Tvで見るってのはあんまりしなくなっちゃったんだよね。


もゆ:で、根本的に笑えない原因の1個に女性が(男性と)同じことを言っても笑わえないっていうのがあると思っている私ずーっと思ってるし、これからも多分言い続けることであると思うんだけど。

せな:女性が言っても笑えない。

もゆ:そう。同じこと言っても、、、私ね、中学生の時お笑い芸人になりたかった。高校になってもなりたくて、一時期本気でNSCあたり入校しようかと本気で考えていた時期もあった。まあ組織は嫌いだったけど。芸人さんが笑いをとった発言を同じようなタイミングで思いついたりネタの展開を予測できてうれしかったことも何回かあって、私も勉強して笑いをとれることもあるかもしれないと思ってた。でも途中で、男性が笑いを取ったことと全く同じことを言っても笑ってもらえないことなんていくらでもある、って気づいてしまった。

せな:たしかに、女性がアキラ100%みたいな裸芸してたら笑えないな。

もゆ:笑えないでしょ。やったとして、笑えるかっていう。

せな:えなんか、しんどい。社会的背景を色々考えてしまう。男性だからできるんだよねあれは。

もゆ:そう。そう、アキラ100%は女性じゃだめだったんだよ。とかさ、

せな:女性だったせいでできないギャグってあるよ。

せな:そうだね。女芸人のアジアンの隅田さん「ブス」「ブス」言われるのが嫌で芸人を辞めちゃったじゃない?お笑いの場で自分の容姿をばかにされるのにもさ、男女で違うものがあると思っていて。

もゆ:色々問題だと思うのがさ、「ブスと言われたくらいで」と言われちゃうのやばいよね?

せな:やばい。そこ男性と違うよね。なんで男性と違うんだろう

もゆ:この前の話にも出てきた、男性は女性をゲットすることで社会的地位を得るのだが、そうするとゲットされる女性って若かったり可愛かったりするわけでしょ?見た目じゃん。

せな:そうだね

もゆ:だから女性は男性以上に激しく見た目に固執してると思うな。だから例えば、男性の方がある意味恋愛体質なら、女性の方もある意味ルッキズムに縛られてる可能性が高いよね。実際化粧とかするの女性だし。服装に気を遣うのも女性の方が多いし。

もゆ:ぺこぱの話に戻るけどさ、松陰寺さんが化粧してるのも私はいいと思ったんだよね。

せな:ビジュアル系の文化なのかな?

もゆ:私が思ったこと先に言うと、M-1の司会者に「これなんで化粧してるの?普通の顔じゃダメなの?」って聞かれた時に、「これ化粧しないと普通のおじさんになっちゃうんですよ」って返してたんよ

せな:あー笑

もゆ:わたし、その答え聞いて、本当は違う意図があるんじゃないかって思って。化粧ってさ、ビジュアル系のバンドでもしたりするけど、一応女性のものじゃんか?

もゆ:現代の世界では女性のもの、となってしまっている化粧を、普通のおじさんが派手なメイクじゃなくてアイメイクをするっていうのにすごく可能性を感じたんだよね。

・男女の下ネタについて

もゆ:同じ下ネタを言うでもさ、多少男性芸人が女性をモノ化した発言をしても見過ごしてもらえることが多いと思うけど、逆は無理じゃん?

せな:そうだね。やっぱよく言われる話がさ、男女の下ネタは違うって話で。男性の下ネタは「お笑い」でフィクションで笑えるけど、女性の下ネタはリアルで生々しいみたいな。型にはまった見方だなって思う一方で、自分自身そう感じる場面もいくつかあった。

もゆ:うん、いくつか理由があると思うけど、男性の方が小学生レベルっていうか(笑)

せな:あー笑

もゆ:男はバカでもいいというか。バカやってて、面白がってもらえるというか。そして次にあるのが、女性の方がセックスで受けるリスクが大きいからだと思う。どんなに喜んでセックスしてても、子供を産むのは女性だし、セックス負担が大きいよね。これはどんなに男女平等が進んだとしても。

もゆ:だから(セックスに関するトピックに対して)切実になるんだと思うの。だから下ネタが生々しいって思われるのかも。

もゆ:男性は犠牲にしてるものがないんだよ、ただ女性にはある。

せな:自分は女性が下ネタ話すともじもじしてしまう

もゆ:もじもじしない方がいいよ笑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?