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フェミニストVS.非モテ男性

なにかと「モテ」が価値をもってしまった現代において、非モテ男性は恋愛に縛られがちです。そして今、ネット上(主にツイッター)では自称非モテ男性とフェミニスト同士が「インセル(過激な非モテ)」のトピックで衝突しており、この衝突をどう考えるかが今回の記事のテーマです(無断転載は御遠慮下さい)

Girl’s Republic メンバー紹介

せな:大学生、主に社会運動と抵抗思想を勉強中。

もゆ:フェミニスト(本人としてはこの言葉を古いものにしたいのであまり使いたくない...)。


はじめに

せな:まず今回のテーマが「非モテとフェミニスト」というテーマなんだけど

もゆ:どうしてこのテーマになったんだっけ?

せな:まず、今俺らって自由に恋愛ができる世界にいるけど、非モテ男性の中にはそれを苦痛に感じる人はいるよねって話がしたくて。その中でつい最近ネット上に出てきた問題が「非モテ」(不本意な非モテ拗らせ)とフェミニストの衝突で。フェミニストは非モテをクソオスとかインセルって呼んでて(理由はあとで説明する)、非モテはフェミニストをツイフェミって呼んでて、例えばこのツイート


せな:非モテ男性って「男らしさ」を演じられてもいないし、かといってフェミニストとの親和性も高くないどっちつかずな存在というか。なのにこれだけ言われるのはすごい可哀想な気もしていて。

もゆ:なるほど。なんかその、フェミニズムって女性が今まで得られていなかった権利を獲得する運動をやってきた一方で、男性の方もそのジェンダーの問題で苦しんでたってことが運動の過程で分かってきたわけで…、男女両方ともジェンダーのしがらみから解き放たれたいよねっていう。


せな:男性って恋愛において「男らしさ」に縛られてるのって本当に問題だと思うよ。例えば「デートでは男らしくしなきゃダメ」、「車道側を歩かなきゃ」みたいな。この規範のパワーって強いと思う。しかも時にはパートナー側からも男らしさを要求されうるし。


もゆ:そういえば非モテ男性の過激化の話、前話してくれたよね。カナダで非モテ団体「インセル(不本意の禁欲主義者)」のメンバーがテロして10人も殺したって。


せな:そうそう。けど日本で「インセル」って呼ばれてる非モテの男性ってまずインセルって自称してもないし、そこらへんもレッテル貼りに近い議論になってるのが問題でさ。ネットでの議論が一人歩きしている。でも非モテって「なんで自分がモテないか」を知りたいのに対して、フェミニストも「なぜ自分が女性であるために差別されるのか」を知りたい。いわばお互い自分探しに原点という共通点はあって、なにかいい議論が生まれるきっかけがあると思うんだよ。


非モテ男性の恋愛


もゆ:「非モテ」の男性の中には恋愛中心主義から抜け出したくても抜け出せない人もいると思う。

せな:そうだね。男性の方がある意味で恋愛体質っていうのかな。男性の方が同性同士で相談しづらくて、だから悩みを自分のパートナーに打ち明ける傾向が強いって統計上のデータが出てる(伊藤公雄/山中浩司(編)(2016)「とまどう男たち 生き方編」より引用)。恋愛への依存度が高いのは実は男性の方だと言えるかもしれない。

もゆ:お互いの立場が違いすぎるよね。まず、男女の非対称性の存在が無視されている。それに、非モテの人からすれば、フェミニストたちってどうせ安全圏から言ってる、幸せな立場から言ってるって思っちゃってる気がする。だってフェミニストって、恋愛至上主義から解き放たれて「楽になった」人たちだから。私は自分を女性であるとか男性であるとか規定したくない。けど私って見た目は女性で性対象も男性、普通にしてたらシス・ヘテロなわけじゃないですか。実際、これだけ恋愛至上主義を否定してるのに私も彼氏ができたら楽しかったわけだし。


せな:そうなんだよ。恋愛ってなんだかんだ自分からはまっても楽しいし、時には恋って落ちるものだから気がつかぬ間に落ちてて、周りが真っ暗になって、その人しか見えなくなる。

もゆ:何言ってんの(笑)

せな:いや真面目や!俺が思うに恋愛する/したいときって男性は自然と「どうやったら自分はあの子に魅力的に映るんだろう、つまりモテるんだろう」とか考えてしまう。逃れられない運命というか。

もゆ:女性も権力側に虐げられてるのは確かだけど、男性も男性規範に囚われてるのって問題だよね。無意識に縛られてるというか。こういう言い方めちゃくちゃ嫌いだけど、「荷物持ってあげる」とか「金額多く払ってあげる」とか、そういうモテの方程式に縛られてるのって不幸。ただ一方で、全く男らしく振る舞わずに女性側から「ナヨナヨしてる」ってレッテル貼られるのも嫌だよね。ありのままをお互い好きになれるのが一番いいんだろうけど、恋愛って大変だよね。


せな:ほんとそれ。んで怖いのが、非モテ男性って男性らしさを強調しろってアドバイスする「恋愛工学」的なものに引っかかりがちなとこ。

もゆ:恋愛工学??

恋愛工学


せな:「恋愛工学」の日本での恋愛工学の火付け役になったのが幻冬舎から2018年に出版された、藤沢数希の「ぼくは愛を証明しようと思う」という本で、「女性は読んではいけません」とか銘打っててやばそうな匂いがするでしょ?。

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もゆ:幻冬舎??社長が百田尚樹と仲良しなあれ??


せな:恋愛工学って女性をものとして扱う恋愛メソッドなんだよね。逆に言えば、恋愛アドバイスを男性向けにする女性インフルエンサー、例えばにたまご🥚恋愛クリエイター(@__nitamago__)や伊藤早紀@マッチアップ編集長(@matchappsaki)は恋愛工学って単語を使わない。


せな:対照的で怖いのが、非モテに対して恋愛工学的なアプローチをアドバイスする有名男性ツイッターアカウント、例えば、すもも(@sumomodane)や白饅頭(@terrakei07)って、根底に凄い反フェミニズム思想がある。それがほんと嫌っていうか。


もゆ:フェミニストってそんなんじゃねーよっていう(怒)

せな:まじ同意。非モテ男性向けのインフルエンサーのミソジニー(女性蔑視)ってものすんごくて。

もゆ:男性って古くから若くて綺麗な女性をゲットすることによって男性の中で認められてきたわけじゃん。それが今にも残っているというか。だから逆にいうと女性から認められないと「自分はダメな人間だ」って思いやすい。根底に男尊女卑社会の価値観、女性のモノ化、自己承認欲求っていう感情が入り乱れている。

せな:恋愛工学、もしくは恋愛工学を発信するインフルエンサーがやばいって話は確かにそうなんだけど、難しいのがフェミニストも非モテへの批判方法にも慎重になんなきゃいけなくてさ。例えば以下の批判って女性からすれば「あるある」なんだろうけど、非モテ男性が見たら宣戦布告に思われるよね。

もゆ:うわ、すごい悪循環みを感じる。まず、モテたいのにモテないから想像の中の女性に頼って、妄想の中で女性を消費するようになる。その間に女性のモノ化が進んでしまう。で、実際に女性とやっと付き合えても、どう対峙していいかわからない...

せな:こういうツイートって、不必要な争いを生み出すよね。非モテ男性の恋愛は上手くいかない、って断言してしまっているところとかただの誹謗中傷だし。人類みんな最初は恋愛経験ゼロなんだから、そりゃ上手くいかなかった過去は誰にでもあるわけで、そこから試行錯誤してみんな恋愛を楽しむわけでしょ?非モテは現時点で恋愛下手だから非モテなんであって、それをわざわざ取り上げて批判するのは、フェミニストの立場から恋愛至上主義を加速させてるというか。

新たな自由恋愛の世界に向けて


もゆ:ここで、どうやったらみんな幸せになれるか話し合いたい。どうやったらこの争いを終わらせられるのか...

せな:結論としては、まずはネット世界で話し合うのはやめたほうがいいと思う(笑)直接会って話せば少しは生産的な議論が生まれる可能性はあると思う。

もゆ:今みたいにね。笑

せな:お互い、異性との関わり合いの中で傷ついた経験があるわけだし、その点非モテ男性もそれ以外も変わらないはずでしょ。ツイッター上でフェミニストが「非モテ男性」を認識していることってある種の希望だよね。つまりそこには断絶ではなく接触があって、なにかいいコミュニケーションが生まれうる可能性だけはある。

もゆ:みんな傷ついているのは一緒なのに!結局また別のところで傷つけあっちゃってる。

せな:でもさ、こういう議論が生まれるのって現代日本で自由恋愛が可能だからだよね。将来的にお互いの社会階層を意識しない合コンとかマッチングアプリでの恋愛が懐かしくなる時代が来てしまうかもしれない。

もゆ:どういう意味?

せな:もし日本の恋愛世界に「社会階層」が前面に出てきたら、今のようなパートナー選択の自由を前提にした恋愛の議論って難しくなると思う。今の日本って1億総中流社会って神話が経済力衰退によってどんどん崩れてく過程にあるから

もゆ:つまり、同じ社会階層の相手としか付き合うのが難しくなってく、ということか。今もそうなりかかっているけどね...


せな:重要なのは現代の自由恋愛の世界がどうなっていて、これからどうなっていくのかを丁寧に読み取りながらどう建設的な恋愛に関する議論を作れるかだと思う。

もゆ:そうだね、今すぐ結論は出せないけど、お互いを不用意に傷つけあわないような建設的な議論をしていくことから始めたいよね。

(結)

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