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阪大古文の研究

阪大入試古文頻出の和歌修辞問題について                     2019文学部入試から

問四 Bの歌「はなならばをりてぞひとのとふべきになりさがりたるみこそつらけれ」について、次の問いに答えなさい。             ①この歌には三か所に掛詞が使われています。すべて指摘しなさい。

阪大公表解答例

「をり」に「花を折り」と「馬を降り」を掛け、「なりさがり」に「実が成って下がり」と「身分が下がり」を掛け、「み」に「実」と「身」とを掛けている。

河合塾解答例

「折り」と「下(降)り」。「実が成って垂れ下がる」意味の「なりさがる」と「身分が低くなる」意味の「なりさがる」。「実」と「身」。

【分 析】

大学公表の解答は、「〇〇」に、同音異義の「△△」と「◇◇」を掛け、という正統の指摘、説明になっている。「み」に「実」と「身」というのは、漢字表記で同音異義となる掛詞の典型なので、問題はない。漢字表記にのみ拠らない場合は、掛詞を含む部分を、二通りの歌意であることを示したい。河合塾の解答例は、「なりさがる」のみ歌意を説明していて、物足りない。つまり、動詞の掛詞は、主語や目的語を明確にした二通りの歌意を示したほうがよいだろう。つまり、大学公表の、「をり」に「花を折り」と「馬を降り」を掛け、という解答例のほうが理想的である。「をり」という掛詞は、「花を」「馬を」を受けて成立しているのだから。


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