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アナログバイリンガル

祖父の肺が破れたと、急遽帰省した時の事。

彼の書斎に、海外からの古い手紙の束を見つけた。
差出人は祖母。2人は婚約前、
長らく国際文通していたらしい。

数通、小説のような感覚で読み進める。
英国生まれの祖母は完璧な日本語で
近況や、祖父への素直な思いを綴っていたが、
私はそれに不思議な既視感を覚えた。

「私は、この手紙を知っている。まるで記憶と答え合わせしているような、夢で物語を追体験しているような、そんなざわめきがする」

夕食時、思わず母にこの事を話す。
すると彼女も現在から少し遠のいた様子で、
懐かしむようにこう答えた。

「そういえばあなた、お母さんの家で暮らしてた頃、どこからかお父さんからの手紙見つけてきて、それに夢中やったね。あんまり夢中やったしお父さんの英文も完璧やったから、お母さん照れながら、何が書いてあるか教えてくれてたわ。あなた、それで英語覚えたんよ」

緊張続きの母が幼なげに綻ぶ。
初めて少し、親孝行できた気がした。


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