私がスーパーマーケットで学んだコト<17> ゴールデンライン

スーパーマーケットの取材を始めてよくわからなかった用語にお客に取っての「ゴールデンライン」という言い方だ。お客が見やすく、手に取りやすい場所というニュアンスはわかるのだが、具体的にどのようなことをいうのかわからなかった。それというのも、それまではただ何となく、売場をみていただけだったからだ。したがって、売場にゴールデン帯もシルバー帯もないだろうというのが、正直な感想だった。
ところが、具体的に説明される「「なるほど」と感心してしまった。アメリカ人は大雑把なようで随分細やかだなと感心した。要するに「ゴールデンライン」とは、スーパーマーケットでいえば、主力顧客の女性の平均身長から逆算して最も商品が見やすい場所ということになる。
日本の女性の平均身長が仮に155㎝とすれば、ゴールデンラインはそれよりも15㎝程下になる。180㎝の高さのゴンドラ(商品棚)を使っていれば、下から80~120㎝の場所にある棚が一番見やすく、商品を手しやすい場所ということになる。それより高い棚は、見上げる感じになって商品を見分けづらくなる。最上段ともなれば、とりあえず置いてあるだけという状態になる。

客層によってゴールデンラインは変わる

しかし、ゴールデンラインという考え方でもう一つ大事なことは、業態別の客層によって、その高さは違ってくるということだ。大きく違った例がスーパーマーケットとホームセンターの事例だ。前述したようにスーパーマーケットは,女性が主力であり、日本の女性の平均身長はかなり低いため、欧米等と比較しても、日本のスーパーマーケットのゴールデンラインは低くなっている。
ところが、同じ日本の小売業でもホームセンターの場合は、男性客主体だったため、業態が登場してしばらくは、ゴンドラは低くても180㎝、高い店舗になると195㎝もあり、非常に圧迫感のある店舗だった。ただ、男性は女性より背が高いうえに、目的買いのお客が多いという特性もあり、逆に商品の種類を多くしなければ、お客の満足度が上がらないことから、ゴンドラは高くする必要があったのだ。
ところが、そのホームセンターもここへきて、最初の時期と比べると女性客が増え、日用品や園芸関係の商品の女性比率が上がっているため、陳列棚が低くなり、売場の見通しが良くなった。最近のホームセンターの売場は、日用消耗雑貨を品揃えしている前方のゴンドラは低くし、後方の専門度の高い商品カテゴリーのゴンドラは、高くする工夫が凝らされるようになっている。
一方のスーパーマーケットのゴンドラは、一時期商品を絞り込んで150㎝ぐらいまで低くする店舗があったが、最近は逆に扱い品目数が増える傾向にあり、ゴンドラの高さは低くても165cm、中には180cっまで上げる店舗がでてきた。また、日本の女性の平均身長が少し上がっていることもあり、スーパーマーケットのゴールデンラインは90~135cmに上がってきている。それとともに、主動線の売場に様々な工夫を凝らすスーパーが増えてきた結果、最近のスーパーマーケットは、高さの変化だけではない、多様な変化を凝らした店舗が増えている。



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