マイ・フェイバリットフーズ/食でたどる70年第6回「鳴門わかめのふりかけ」

鳴門海峡を挟んで、徳島県鳴門市と兵庫県西淡町(現南あわじ市)の昔からの名産品に「鳴門わかめ」がある。これは、鳴門海峡の激流にもまれて、海峡周辺の入海で育ったわかめは、他の海のものとは違い、歯ごたえのよい、わかめが成育すること、名産品とした。
特に、鳴門市撫養と西淡町阿那賀・丸山・伊比の鳴門海峡に面した漁協では,近海で取れたわかめに、シダやススキ、ワラなどの草木灰をまぶしたあと、天日干しし、灰が付いたまま製品とした「鳴門灰干しワカメ」をブランド化し販売していた。
ただ、最近は草木灰の減少や後継者不足、さらに環境問題などがあり、「鳴門灰干しわかめ」の生産量はピークに比べると急減している。しかし、わかめに比べ、灰干しわかめは、鮮やかな緑色に戻り、わかめ特有の海の香りや歯触り良さがあることを惜しみ、ワラ灰を増産したり、灰干しわかめ用の新しい灰の開発に取り組んでいる事例もある。
昔から草木灰をアク抜きに使う、食品の腐敗防止に活用することは、よく知られていたが「わかめ」の保存に使うことを発見した先人の知恵は大事にしたい。とはいえ、灰干しわかめを戻す時には、かなりの水道水を使うので、水不足の時には、気が引けることも確か。SDGsに少し逆行しているきらいがなくもない。

朝ごはんがのどを通らない時の救世主

今回、「私が愛した食べ物」として紹介するのは、同じ鳴門わかめであっても、その製法は全く違う。こちらは水揚げされたわかめを、単に天日に干すだけだ。そして鳴門わかめの主流は、灰干しであり、水揚げされたわかめの99%以上に上る。
この素干ししたわかめは、漁協組合員がそれぞれ自家用に作る程度で、灰干しわかめのように、一般流通に乗るわけではない。我が家も親しくしている漁師の奥さんから「少しだけど食べて」と回ってきたものだ。
第1回目の「かきもちのぶぶ漬け」でも、お伝えしたが、小さい頃から朝は食欲のなかった私は、朝ご飯が出てきても、ほとんど片付けることが出来なかった。そんな時、母親が見るに見かねてといえば聞こえはいいが、末っ子に甘々だった母親は、素干しのわかめを火鉢の炭火であぶり、アツアツを手で揉みかけてくれた。
それは、その、永谷園や丸美屋からたくさん発売された、ふりかけとは全くの別物。わかめがごはんに掛かるだけで、鮮やかに海の香りがただよい、程よい塩味(えんみ)が食欲を刺激し、さっきまで箸が動かなかったのが嘘のように、ごはんがなくなっていく。
いまも、おかずがなくなった時、市販のふりかけで、ごはんを半分ほど片付けることはよくある。しかし、今でも積極的に食べたいと思うのは、小学校の頃に食べた「素干しわかめのふりかけ」だけだ。

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