曲がり角

『期待をしなければ、恋愛は上手くいく。』

 雑誌やインターネットやテレビや、あらゆるところで目にするこれ。
 そんなことは分ってるんだよ。と、心の中で毒づいてしまうのは、私だけではないはずだ。
「……なこと分ってるっつの。」
 いや、声に出して毒づいてしまうのは。

 彼とはかれこれ4年以上の仲だった。
 優しく、一途で、頼りがいのある自慢の彼だった。
 「彼のいいところなら、いくらだって言えますよ!」と、職場の先輩の前で豪語したものだった。今思い返すと、少し恥ずかしい。
 なぜ過去形なのか?
 別れたわけではない。彼とは今でも、いわゆる"彼氏"と"彼女"の関係だ。
 しかし、今更になって、恐らく危機を迎えている。

 期待をしなければ、無駄に傷付くことはない。期待した自分を馬鹿だと責める必要もない。
 このことを身を以て学んだのは、中学生の頃のことだった。
 期待をしなければいい。しかし、期待をしないという技は、簡単に身に付く技ではない。
 このことも、中学生の頃から知っていた。

 それでも。
 勝手に期待を膨らませ、それが現実にならなかった時、勝手に怒ったり悲しんだり、ましてや彼氏にその感情をぶつけるような、面倒な女になりたくなかった。
 私は、期待をしては押し潰し、期待をしては押し殺した。
 繰り返しの中で、私はどうやら会得したらしかった。
 いつしか期待するどころか、彼に何か求めたり、彼を必要だと感じることさえなくなっていた。

 得体の知れない明日が、ただ横たわっている。

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