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届く宛てのない手紙 (五)

 ハッチから頭を覗かせていた辻岡は、双眼鏡のピントを合わせる。

「確かに……黒点ひとつ」

 遥か遠く洋上に見える黒点を確認するとハッチを閉める。梯子を持つ手をパッと緩め飛び降り着地すると、操舵室にある伝声管に口を当てた。

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