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【台本公開】ユミルの民ではないエルディア人の正体

こちらの動画の台本を公開します

最新の画集『FLY』の中で、進撃の巨人の35巻は当初「リヴァイの幼少期ではなく本編の100年前の話を構想していた」

「本編の100年前」とは巨人大戦を終結させた145代王カール・フリッツが都をパラディ島に移して三重の壁を建設したあたりのエピソード

確かにその時代のエピソードは本編にほとんど描かれていませんでした

100年前の話の中で多くの謎に包まれているのは
ヒストリアが女王に即位する前に実権を握っていた

「偽の王と貴族たち」の存在ですが彼らはエルディア人でありながらユミルの民ではない「他人種系エルディア人」

つまり偽の王たちは「巨人の脊髄液を注入しても巨人化することのないエルディア人」

なぜそのような人種が存在し、パラディ島の実権を握ることになったのか。


二千年前の「初代フリッツ王」から百年前の「カール・フリッツ」

そして現代の「ヒストリア・レイス」の時代までの王家の歴史から

「エルディア人の人種の闇」と「幻の35巻の構想」に迫ります

エレンのように作中の「多くのエルディア人はユミルの民」である

ユミルの民とエルディア人は同じような文脈で使われることが多いですが

厳密には偽の王たちのように「ユミルの民ではないエルディア人」も存在

まずは「エルディア人」と「ユミルの民」についてそれぞれ定義します。

「エルディア人の起源」は、二千年前の初代フリッツ王が長を務めていた「エルディアという部族の人々」

そして「ユミルの民の起源」は、文字通り「ユミル」であり
「初代フリッツ王 = エルディア人」であるため
ユミルの民であれば必ずエルディアの血を引いている
※ ユミルが別の人間と子孫を残していない前提

ミカサの母親が「東洋人」であったりライナーの父親が「マーレ人」であったりしますが

「ルーツを遡った時にユミルに辿り着く人間 = ユミルの民」に分類され(基本的に)ユミルの民であれば巨人の脊髄液を取り込めば巨人化します ※1

ユミルが成仏する前の描写(+ ラムジーの死を覗いている描写)からユミルは「自分の子どもたち」に未練を抱えていた

ユミルの子どもたちにあたる「ユミルの子孫 = ユミルの民」だけに巨人の力を送り続けていた(道で繋がりを求めていた)

逆にいうと(純粋な)マーレ人や東洋人などの他の人種は

「ユミルの子どもたちではない」ので 巨人化することはありません。

つまり「(初代フリッツ王以外の)エルディアの部族たちの子孫」が生き残っていたとしたら
彼らは今回のテーマである「ユミルの民ではないエルディア人」であり

マーレ人と同じように巨人化しないはずです

しかし偽の王たちは『他人種系エルディア人』と呼ばれていたので

「純血のエルディアの部族の生き残りではない」と考えます。

そこで鍵になってくるのがユミルの民の中でもごく少数しか存在しない「王家」という存在

しかし「ユミルの民は初代フリッツ王の子孫」でもあるので

「ユミルの民であれば必ず王家の血を引いている」と考えるのが自然ですが

実際にはジークやヒストリアのような「一部のユミルの民しか王家の血を引いていない」とされています。

アッカーマンの血筋仮説
①本来はジークたちのように王家の血を引くユミルの民であったが、巨人化学の実験により特殊な始祖の影響を受けない人種が生まれた?

②ユミルに隠し子がいた説
「エルディア人ではないユミルの民」= 始祖の影響を受けなくても納得感あり

その疑問に対して以前の動画「エルディア帝国の元年に何が起こったのか」 ※2 では

初代フリッツ王には「ユミル以外の正妻」が存在していたのではないか

つまりユミルはあくまで「奴隷の妾」に過ぎず

別にいたであろう正妻と初代フリッツ王の子孫が「正統な王家の血筋」

ユミルはフリッツ王から子種を授かりましたが
その「子供を抱いているユミル」を尻目に

他の女性を侍らすフリッツ王の姿も描かれています。

そして「ユミルの死の間際」にフリッツ王は『我が奴隷、ユミルよ』と呼んでいたため
フリッツ王はユミルのことを「最後まで奴隷」として扱っていたことになり別の「正妻となる女性」がいたであろうことは想像に難くありません。

そしてその正妻との子孫が「パラディ島の実権を100年間握っていた❺他人種系エルディア人 = 偽の王と貴族たち」であると考えます。

パラディ島に潜入したライナーたちは偽の王の正体を突き止め

偽の王たちが「ユミルの民でないこと」「始祖の巨人の力が及ばないこと」

偽の王たちはユミルの民ではないため「始祖の巨人の力による記憶の改竄の影響も受けず」に壁や世界の情報もすべて知っていた

そしてエルヴィンたちの王政へのクーデターが成功した後
ザックレーは貴族を「芸術作品」にしていましたが、その時に貴族はこのように言っています。

『 お前のその血は奴隷用の血だ 我々名家の血筋とは違ってな 』

偽の王や貴族たちが単なる「❶エルディアの部族」の生き残りの可能性

ユミルの民のことを「奴隷用の血」と言ったり
自分達のことを「名家の血筋」と言っていることから

貴族(偽の王)たちは「❺王家の血を引いたエルディア人の生き残り」

そうなると影武者ではありましたが、パラディ島の実権を握るだけの「血筋の正統性」が偽の王たちにはあった

しかし奴隷であったユミルの民が「エルディア帝国の王」になっていたこと → 始祖の巨人を継承していたカール・フリッツの存在からも明らか

偽の王たちも100年前はカール・フリッツに媚を売っていた存在

ではいつ「奴隷だったユミルの民が王家」になったのでしょうか

奴隷であったユミルの民が初めて実権を握った年こそが、「エルディア帝国の元年」

※続きの台本は次回のライブ配信で追記します

以前の動画 ※2 では
元々分離していたユミルの民と王家の一族が初めて融合した年 「エルディア帝国の元年ではないか」

シガンシナの扉が超大型巨人に破られたのは845年ですが、その元号が始まったのがユミルの民の王が誕生した年(元年)

貴族たちがユミルの民を「奴隷の血」と言っていたように

初代フリッツ王がユミルのことを「奴隷」と言っていたように
元年以前のユミルの民は「巨人兵器の奴隷」として扱われていた

クルーガーによるとエルディアは古来より無垢の巨人を

『安価な破壊兵器』として利用してきた歴史があり、ユミルの民は「ユミルの死後も奴隷」として扱われていたと考えられます。

しかしアズマビト家の持つ情報によると「エルディア帝国が全盛の時代」においては、逆にユミルの民の血を取り込む(血縁関係を持つ)ことが「高貴の証」となる潮流が生まれていたとされています。

(マーレが全盛の時代に)

ライナーたちが「名誉マーレ人」になることを目指していたように、エルディア帝国の全盛の時代においては世界中でユミルの民と血縁関係を持つことが「高貴の証」になっていた。

その時代の潮流に合わせて王家が「高貴の証とされるユミルの民」と血縁関係を持つ理由が生まれ、「史上初の始祖の力を持つユミルの民の王が誕生した年」が、エルディア帝国の元年に制定されたのではないか。

逆にいうと元年以前は「ユミルの民(奴隷)」と「王家」が分離しており、王家の血が必要である始祖の巨人の力は扱えていなかったことになりますが

ユミルの民と王家が分離していたその他の根拠(クサヴァーの研究)や、「九つの巨人の歴史画が原作とアニメのエンディング版で異なる理由」

こちらの動画「エルディア帝国の元年に何が起こったのか」 ※2 をご覧ください。

そして元年に生まれた「史上初のユミルの民の王」がヒストリアやジークの起源となる祖先であり、「❻高貴なユミルの民かつ王家の血を引く一族」として

元年から巨人大戦(743年)まで世界を支配していたと考えます。

高貴なユミルの民をも始祖の力で支配できる王は、世界から崇拝の対象となっていたことでしょう。

また現代のパラディ島にエレンやリヴァイのような黒髪の人種とアルミンやエルヴィンのような金髪の人種が混在している理由については

元年以降に「パラディ島を開拓しにきた古代王の歴史」が関係していることを考察した動画 ※3 もあるので合わせてご視聴ください。

そちらの動画では「元年から巨人大戦(743年)まで」に起きた歴史を考察していますが、今回の動画では743年以降のカール・フリッツが偽の王たちに実権を握らせてきた近代の歴史と「幻の35巻の構想」について迫ります。

カール・フリッツの目的は「世界平和」を実現することで

その手段として「1. 巨人の力を持つユミルの民」を島と壁の中に閉じ込め、民衆から壁の外の記憶を消してしまうほど「破滅的な平和主義」を徹底していました。

「巨人は海に近づかない」という奇妙な性質を持っていますが、それも巨人を島に閉じ込め、ユミルの民が壁の外に出れないようにするために

カール・フリッツが始祖の力で巨人の性質を書き換えたためと考察 ※6

その中でも「すべての巨人を操作できる始祖の巨人」を奪われることを最も危惧しており、真の王家は「フリッツ」から「レイス」に姓を変え

影武者となる偽の王を擁立することで「始祖の巨人の所在」を徹底的に隠蔽

さらなる保険として、カール・フリッツは自らの思想を子孫(王家)に継承させるために、始祖の巨人と『不戦の契り』を交わし

本来「始祖の力を行使できるはずの王家」の継承者は『不戦の契り』によって「自死の道」を選ぶことしかできなくなり

万が一始祖の巨人が奪われても「ユミルの民ではない偽の王たち」は記憶の改竄や操作をされることもなく、「2000年前から続くエルディア人の血筋」も持っている正統性から

民衆の同意を得やすいことから「他人種系エルディア人」を偽の王に立てたのでしょう。

「偽の王たちの祖先の立場」になって考えてみると、巨人大戦後にフリッツ王に媚を売ってまでパラディ島にやってきたことから、元々奴隷であったユミルの民に奪われていた「エルディア帝国の王家に返り咲くこと」を虎視眈々と狙っていたのかもしれません。

つまり始祖の力を隠して平和を実現したい「❻カール・フリッツ」と
千年越しにエルディアの王に返り咲きたい「❺他人種系エルディア人」の利害が一致したことにより

巨人大戦後の百年間は他人種系エルディア人が、パラディ島の実権を握っていたと思われます。

そして巨人大戦後にカール・フリッツがパラディ島に連れてきたエルディア人は他に「アッカーマン一族」もいますが
民衆の記憶を改竄しようとする「いき過ぎた平和思想」に異を唱え

「王家の側近(懐刀)」だったアッカーマンは現代では「迫害の対象」に。

王家に媚を売った他人種系エルディア人が「王」になり、王家に異を唱えた側近のアッカーマンが「迫害の対象」となる皮肉な歴史。

おそらくですがケニーが「ウーリ(王)の思想」に忠義を示して仕えていたように
100年前のアッカーマンも元々はカール・フリッツの平和思想に共感して大陸からパラディ島に渡ってきたと思われます。

しかしカール・フリッツの平和思想は過激化していき、ついには民衆から壁の外の記憶を消して改竄しようとする王政に対して

東洋の一族と共にアッカーマン一族は背を向けることになりました。

100年前のアッカーマンと東洋の一族がフリッツ王の「平和思想」に異を唱えたように

進撃の巨人の物語全体の結末もまた

その二つの血(東洋とアッカーマン)を受け継ぐミカサが、エレンの「自由思想」に刃を向けることになりました。

アッカーマンは「主君的存在」の自由や平和の執着に終止符を打つ「懐刀」
100年前から現代のミカサまでアッカーマンの「対等な刃」=「懐刀」としての宿命は一貫して描かれていたように思います。

35巻の幻となった構想としては

パラディ島に渡ってきたカール・フリッツや他人種系エルディア人
アッカーマン一族、パラディ島に取り残されていた東洋の一族による「建国の裏側(黎明期)」が描かれる予定だったのかもしれません。

また100年前にパラディ島に渡ってきた他の一族として
「ヨロイブラウン」という鎧の脊髄液を持ち込んだブラウン家の存在についても考察しており、
そのブラウン家がシガンシナ区にあるような「外の世界と繋がる扉」を設置した革新派だったのではないかという仮説を他の動画で紹介 ※4

「壁の巨人の正体」についての動画も含め、35巻の構想の手がかりになる動画を再生リスト ※5 にまとめたので、是非合わせてご視聴ください。

そして「フリッツ」から「レイス」に姓を変え

影武者を用意するなどの「徹底した始祖の隠蔽工作」により
マーレから潜入したライナーたちやグリシャのような外部の人間はもちろん
王政を打倒するために動いていた「内部の調査兵団」ですら、真の王家であるレイス家の手がかりを掴むことは困難を極めていました。

しかし数奇にもロッド・レイス(真の王家)の妾の子である

ヒストリアが調査兵団に所属していたことや、壁の秘密を知る「ウォール教」のニック司祭を捕らえたことにより

調査兵団は「真の王家(レイス家)」の居場所を突き止めることができました。

ウォール教に関しては845年の段階では「最も危険なシガンシナ」で細々と布教活動を行っている様子がアニメでは描かれていましたが、その5年後の850年の段階ではウォール・シーナ内の「王都の一等地」で教会を構えるほどの権力を手にしていました。

酒に溺れて家族を失い、ケニーの言葉を借りれば

「酒の奴隷」であったニック司祭がたった5年で「政治にも口出しできるほどの宗教団体」を生み出すことが

できた理由についてはご要望があれば考察したいと考えています。

今回は複雑に絡み合った「エルディアの人種問題」を整理した結果、偽の王たちは千年越しにエルディアの実権を握ることができた(元年以前の)正統な王家であったのではないか「下克上の応酬のようなエルディアの歴史」の仮説を提示しました。

そして百年越しに他人種系エルディア人から、王の座を奪い返したヒストリア・レイスは
自由のために「世界を破滅」に追い込んだエレンと

平和のために「自分たちを破滅」に追い込んだレイス家の過ち を引き受け

しかし「エレンのような戦う意志」と

「レイス家のような平和を願う心」の両方を宿した

「戦わないために戦う姿勢」で新生エルディア国を

導く指導者になることができれば

血塗られた二千年のエルディアの因果に終止符を打つ『女神』になるかもしれません。

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