泡末を浮かべて

仄かな照明にグラスの淵が照らされている。
甘蜜色の液体が君の喉に消えていくのを眺めながら、
僕はグラスの滴を拭った。

想いも願いも一つの小さな気泡でしかない。
泡末のように浮かんでは消え、また浮かんでいく。
浮かべては、消して、その繰り返し。

君も僕も、一人で歩いていく。
違うところを向いて、
でも手を伸ばせば君は僕の手を掴んでくれるだろう。
僕がそうするように。

共に歩むわけではない。
君は太陽を見て、僕は月を見ているかもしれない。
ただ、僕は君の声を聞き逃さない。
君がそうするように。


いつも読んでいただきありがとうございます。 小説は娯楽です。日々の忙しさの隙間を埋める娯楽を書いていけたらと思います。応援いただけたら本を買い、次作の糧にします。