ひゅるり、ひゅるりと戸の隙間から風が入り込む。
「ーー虎落笛か」
男は着物の上に半纏を羽織るとぶるりと肩を震わせて戸を締める。炊事洗濯にもようやく慣れてきたが一人で越す冬は久しぶりだった。女房が逝き、この家も広く感じる。
「寒い冬になるな」
男は淋しげに呟いて囲炉裏に火をくべた。

いつも読んでいただきありがとうございます。 小説は娯楽です。日々の忙しさの隙間を埋める娯楽を書いていけたらと思います。応援いただけたら本を買い、次作の糧にします。