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統計力学

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ミクロとマクロのあいだに現れる確率論的な考え方
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記事一覧

【物理数学】フォッカー・プランク方程式【確率論③】

前回,マスター方程式を導きましたが,マスター方程式は時間微分と状態の積分からなる方程式な…

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【物理数学】マルコフ過程とマスター方程式【確率論②】

マルコフ(Markov)過程とは,過去の記憶とは独立に次の運動が起こるような確率過程です.物理…

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【物理数学】確率過程の定式化【確率論①】

ニュートンの運動方程式によって理解される運動というのは,空間が完全に空っぽであるという理…

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【統計力学10】量子力学的な粒子の統計【ボーズ分布とフェルミ分布】

前回は,調和振動子を正準交換関係を満たすような位置と運動量を用いて量子力学的に扱うと,振…

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【統計力学9】量子力学への道【状態は離散的に】

箱の中の電磁場の問題を考えるところから,量子力学という分野が拓けました.ここでは,統計力…

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【統計力学8】カノニカル分布の応用(古典編)【エネルギー等分配則とその限界】

カノニカル分布を使って,古典力学で重要な帰結であるエネルギー等分配則を導きます.エネルギ…

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【統計力学7】ボルツマンの式【エントロピーとの関係】

今回は分配関数と状態数の関係を探り,実はそれが熱力学の自由エネルギーとエントロピーとの関係と密接に結びついていることを見ます.有名なボルツマンの式が得られ,エントロピーの統計力学的な解釈を与えてくれます. 前回得られた統計力学の基本公式によれば,マシュー関数は $$ \mathcal{F}(B,V,N) \sim k\ln Z(B,V,N) $$ と書かれますから,逆に分配関数は $$ Z(B,V,N) \approx e^{\mathcal{F}(B,V,N)/k}

【統計力学6】分配関数【自由エネルギーとの関係】

前回,カノニカル分布 $$ f(q,p) = \frac{e^{-\beta H(q,p)}}{Z(\beta)} $$ の規格化定数と…

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【統計力学5】カノニカル分布【温度で指定された系】

熱力学では,温度と外部変数で状態が指定されました.このときの状態を記述するような統計力学…

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【統計力学4】温度の統計力学的な定義【開放系でのエネルギーのつり合い】

ミクロな力学を記述する法則は基本的に孤立系についての法則です.しかし,普通は完全に孤立し…

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【統計力学3】状態数と熱力学的重率【エネルギー幅の任意性】

統計力学では,アンサンブル平均をとることを物理量の計算手段とするわけですので,アンサンブ…

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【統計力学2S】熱力学極限

2「典型性とミクロカノニカル分布」の補足です. 典型性を要請して,アンサンブルに含まれる…

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【物理数学】極限とランダウの記号【定義と物理におけるその価値】

大学一年生になると,極限(limit)の厳密な定義を数学で習います.いわゆる「イプシロンデル…

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【統計力学2】典型性とミクロカノニカル分布【統計力学のモデル】

ミクロからマクロを導くうえで,疑問なのは次の二つの点でした. ・なぜミクロ状態は時間変化し続けるのに,マクロには緩和が起こり,平衡状態にとどまり続けるのか. ・なぜミクロの莫大な自由度がマクロのわずかな自由度に対応するのか. これらを念頭に置きつつ,いかにしてマクロな物理量をミクロから計算するか,考えていきましょう. エルゴードの問題平衡状態というのは,時間がたってもマクロな系の状態が変化しないような状態のことでした.そこから,運動を長時間にわたって平均することによっ