社会問題も斬るタイプの石川五ェ門_週報230926

またつまらんものを斬ってしまいましたが、これをただつまらんものとしてしまうか、つまらんくないものとするかは見ているあなたたち次第です。
夕方のワイドショーであっけらかんとした切り口で社会問題に斬り込む五ェ門氏、主婦層を主体として徐々に人気が高まり、ついに自民党公認候補として政界進出を果たす。
「私はつまらんものを斬っているつもりはないのです。ただ、私が斬ったものがつまらんもんだと、そう笑って暮らせる世の中を作りたい、それだけなんです」五ェ門氏は語る。「政治問題、人権問題、どれもこれもつまらんもんですよ。でもね、つまらんもんだからこそ斬っていかないと。そうして少しずつ世の中が良くなっていく、見通しが立つんじゃないですか」五ェ門氏は公約に掲げていた「つまらんものを斬って、明るい未来を切り開く」、この言葉を常に念頭に置きながら政治活動を行っていると語る。五ェ門氏の今後の活躍に期待したい。

とは言ってもねえ、どうせタレント議員でしょ?そりゃあ俺も好きだよ五ェ門。出自が大泥棒ってのもあって、ワイドショーで利権とかスポンサーとかお構いなしだったじゃない。ああ言うのは観ててやっぱ面白いよなあ。でも議員になっちゃあオシマイだよ。コメンテーターが議員になるって言うのは良くあるけどさ、結局政治の専門家じゃないと政治っつーのはどうしようもないわけよ。政治に専門家なんてないなんて言うけどさ、もうそんな時代じゃないのよ。五ェ門にも頑張ってほしいけどねえ、まあタレント議員としてそんなに期待はしないでおくよ。

───翌月、国会中継のとある場面。(五ェ門の議員就任から2ヶ月弱)
「そうは言ってもね、その財源はどこから確保するのか、そんなことより他に優先すべきことがあるんじゃないですか?」
「そのつまらん質問、斬らせていただきます。まず第一に、財源の確保や具体的展望は現段階では重視すべき問題ではなく、構想の段階ですから、詳しくは決定しておりませんが非現実的な要素を排除するためにあらかじめ述べさせていただいているだけであります。他に優先すべき問題とおっしゃいますが、現時点で我々が考える最優先かつ最有力な政治的行動が本案です。他に優先すべき事項など全て考慮した上での案でありますが───」
「五ェ門くん、そこまでで結構」「ですが、」「政治というのはそういう計算だけじゃないんだ、真っ二つにできるもんだけならね、世界はもっと簡単さ」
五ェ門氏は案の定、政治と政治的思考のジレンマに陥っていた。だがタレント議員という出自でありながらして、政策の起案、具体的進言まで進めたのであればおよそ十分すぎる働きであったというのが世論の評価である。その後、五ェ門氏は自身のような犯罪と義賊の境目で苦しむニッチな人々を支える活動に精力的に参加、政治家としての生涯をより良い世界、人々のために尽力した。つまらんものを斬り続けた彼の人生は、果たしてつまらんものになってしまったのか、そうでなかったのか、決めるのはこれからの社会のあり方なのかもしれない。

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