ポリアモラスな彼と、私と、彼女とのその後 (1)

さて、3人でのディナーの後、数日の間、彼は静かだった。多分いろいろ考えてるんだろう。私は彼が次に進むために必要と思って(おそらくリズにとってもこの会話が必要と思って)行動したけれど、あの場で彼は困惑の表情だった。私は彼が咀嚼する時間を待った。

仕事の後会えるかな、と彼から連絡が来たのは4日後、リズが来たいと話していたパーティーの3日前だった。私たちは、彼の家の近くのオープンエアのカフェバーで待ち合わせた。ロサンゼルスの夏は夕方からが本番。昼間は暑くてビーチなしには外に居られないけど、日が長いから夕方が1番いい。私は眠れなくならないようにデカフを頼んだ。彼はいつものように店員さんとあーだこーだ話し合ったあと、珍しくIPAを頼んだ。彼はいつもの弾けるような笑顔ではなかったから、私は、何がでてきてしまうのだろう、という怖さも感じつつ、静かに彼がひらくのを待った。もしかしたら、彼はリズを選んだのかもしれない、と、覚悟した。

ビールがきて美味しそうに一口飲んだあと彼は話してはじめた。「あの後色々考えた。どう受け止めたらいいのか。そしてリズとも電話でいろいろ話したんだ。」私は目で聞いてるよ、続けて、と促す。

「リズの写真を枕元に飾っていたことは僕のプライベート。リズには伝えたくなかった。それを了承なしにばらされたことに僕は腹を立てていたんだ。リズははあそこで怒らなかったのがあなたのエリーへの愛情だと言われた。」彼はなかなか目を合わせない。まだまた困惑や怒りや不安が彼の中にあるように見えた。

彼の立ち位置に自分を置き、彼の感情を想像すると、彼の暖めていた心をアウティングされたことへのショックや気恥ずかしさといった感情が流れ込んできた。compassionを持ってI’m sorry how you feel. と伝えた。Okay, thank you for understanding. と彼は言った。

私はあれは、彼を懲らしめてやろうとか、彼女との関係をこじらせてやろうとか、突発的な行動だったわけではなくて、真っ直ぐ彼自身の次の一歩を考えて、周到に準備をしての行動だから、と言った。

私はもちろん自分のために、リズに会う必要があった。You know who、ハリーポッターのヴォルデモートみたいな見えない”敵”なリズに怯え、心をかき乱される自分を卒業するために。実際のところ、あの日を境に、You know whoは私の中で、おどろおどろしいヴォルデモートから、愛に溢れて知的なアルゼンティーナのリズに変わり、魂を焼き尽くすような嫉妬の炎は、穏やかで暖かいろうそくの炎に変わった。

私が心から私が願ったことは、自分を業火から救うことで、彼を解放することだった。リズへの愛について自由に私に話せることは、彼の幸せに必ずつながると思ったから。愛する人が自分の素直な気持ちのせいで業火に焼かれ苦しんでいるとしたら、それは彼の悲しみでもあり、それは彼を引き止めてしまう。だから、彼女に会うことは私にとっての解放であり、それは、彼にとっての解放である、と考えていた。

二人に会って話してみると、二人はソウルメイトとして完全に信頼し愛し合っているけれど、彼が2人の写真を枕元に飾って心の支えにしているくらい彼女を思っているとまでは、おそらくリズは理解していないかもしれない、とも感じた。彼のリズへの愛は、家族へのそれとはやっぱり違っていて、セクシャルな感情も含んでいる。リズが彼のその感情も理解し受け止めてくれるならば、リズが遠くから愛でる女神ではなくて、手で触れてまぐわい、感じ合い、壁なく開放し合う相手になったならば、彼の人生の質や幸せがどれだけ高まるか、と私は思った。

彼は所々、私の言葉を繰り返して自分の理解を確認しながら、私の話を根気強く聞いてくれた。そして彼は、長いため息をつきながら、5本の指を組んで、柔らかくテーブルに置いた。そこで数秒止まった後、覚悟したように目を上げて私をまっすぐに見た。

僕は君がリズに会って心を通わせたそのことだけをとっても、幸せな気持ちになる。僕は自分に秘めておきたかった想いが自分の意図とは関係なく日の目に晒されたことに動揺し、怒りを覚えた。でも今日こうして話を聞いて、僕のその困惑や恐れは完全にCompleteできた。だから、僕は怒りにまかせ、大切な君との日々を台無しにする未来を選択肢しない。君の楽しみにしていた、リズの来たがっているパーティーは、予定通り最高に楽しい場にしたい。僕はエリーを心から愛している。リズを心から愛している。君がそこまで僕を理解し解放しようと自分を曝け出してくれたことに尊敬と感謝をおぼえている。僕を愛してくれて、本当にありがとう。

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