コンピテンシートラップとその回避方法

バスケットボール競技において「コンピテンシートラップ(Competency Trap)」とは、ある特定の技術や戦術に習熟しているために、それに固執しすぎて他の成長機会を逃してしまう状態を指します。この現象は、現在の成功体験に頼りすぎることで、新しいスキルや戦術を学ぶ意欲が低下し、結果として競技全体での成長が阻害されることにつながります。

たとえば、ある選手が特定のシュート技術に優れている場合、その技術を使うことで安定したパフォーマンスを発揮できます。しかし、その技術に過度に依存しすぎると、対戦相手がその技術に対する対策を立てた際に対応できず、試合での柔軟性が失われてしまいます。このようなコンピテンシートラップに陥ると、選手は成長の停滞に悩まされ、さらなる技術向上が難しくなるリスクを抱えることになります。

しかし、コンピテンシートラップに気づくことは選手自身にとって容易ではありません。成功体験が確立されている分、本人には「この方法でうまくいっているから大丈夫」という思い込みが生まれやすく、それが視野を狭めてしまう原因となります。そのため、選手にとって自分自身の問題として捉えることが難しい場合も多く、「成長の限界に達している」という感覚さえも気づかないことが少なくありません。

このような状況において有効なのが、コーチやチームメイト、さらには経験豊富なアドバイザーなど、他者目線からの助言です。外部からの客観的な視点が加わることで、選手が見落としている自分の弱点や、偏った練習傾向が浮き彫りになります。たとえば、コーチが「他の技術も試してみよう」「新しいプレースタイルに挑戦してみよう」と促すことで、選手自身が自分の限界や成長の停滞に気づくきっかけとなり得るのです。

また、他者の助言によって、選手が自分の成功体験に固執せず、新しい技術や戦術を学ぶ意欲が高まる効果も期待できます。客観的な視点からの指摘は、自分では気づきにくい問題に気づかせてくれるだけでなく、新しい挑戦に対する心の準備を促すきっかけにもなります。他者の助言に耳を傾けることで、選手は「一つの成功に安住せず、より幅広いスキルを持つことが重要だ」という意識を持つようになり、結果として競技全体での成長につながっていきます。

つまり、コンピテンシートラップを回避するためには、外部からの適切なフィードバックや助言が不可欠であるといえます。選手は、自分自身で全てを見通すことが難しいからこそ、他者の視点を借りることで自分の偏りや限界に気づき、新しい成長の方向性を見つけることができるのです。

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