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こじょうゆうやさん 2022年10月星の行方を読んで

「融解」「弾み」「滑走」

これは、福満くんの物語なのかしら。
人々それぞれ思っていたものがただの岩だとわかり揉めているその間、ひとり静かに岩に近づき岩や苔を撫で、その感触や自分の中の感情を味わった福満くんのその後の体験だとしたら。
本質に気づいたことで、宇宙の流れに乗る、流されていくお話だと感じた。
最初の印象は明るく、軽やか、滑らか。なんだけど、最後には海まで進み(意志とは関係なく、というか意志がないように思える)流されて波になる。
最後まで読んで、わたしは未知の世界に入っていく怖さを少し感じた。
わたしだったら、福満くんのように一貫して冷静でいられるだろうか。   
パンダや猫だと思っていたものがただの岩だとわかったら動揺してしまうし、秋だと思っていたのに目を開けたら春だったら夢かと思うし、海に突き進んでいるとわかった時にはクロマツやモチノキに必死に捕まって溺れ死にたくないって発狂しているかもしれない。
こう書いていたら、福満くんの、岩だとわかって良かった、と胸を撫で下ろしたそのあり方がとても尊く思えた。


「融解」という題名に初め少し違和感があった。
ん、「気付き」とか、「発覚」とかじゃないんだ。
解ける事…凝り固まった考え方が解けたという事なのだろうか。
確かに、凝り固まった考え方とか捉え方って沢山あって、人それぞれ違う。でも岩を岩として捉えること、つまり本質をそのまま捉えたら、確かに新しい世界に行けそうだな。


本質を捉えて冷静に流れに乗ること。なすがままに。


ところで、福満くんは波になってどこへ行ったのだろう。
福満くんと同じように海にたどり着いた多くの人たちと、ひとつになったのだろうか。
そこでは岩をパンダだと思っていた頃に感じていた種類の幸せとは全く違う種類の幸せがあるのだろうな。






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