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コーヒー屋さんのコーヒー

ログ

@LOG COFFEE ROASTERS 山口県山口市 

 現在、社会は混乱し、同時に私もその状況をうまくのみこめずにいます。人と直接会って話をするという行為が、これほどまでに私の社会生活を支えていたとは、思いもしませんでした。最新型のiPhoneをもっていても、Wi-Fiにつながっていようと、抱きしめながら、手を取りながら、ぬくもりや匂いを感じながら、大切なひとたちを目の前に感じながら会話をすることが、どれほど愛おしい行為かということを、感染症は気づかせてくれたのです。

 地方に住んでいますが、自粛生活を送っているつもりです。用事がない日は、1日中家にいます。自粛生活自体は、あまり苦だと思っていません。むしろ、本を読んだりデッサンをしたり、普段は観ない映画まで観る時間があるぐらい、充実した日々を送っています。

 インスタグラムで投稿される、不要不急と考えられる外出時の写真には、必ず前置きがあります。「2か月前の写真です。」「#2019」「収束したら再び行きたい場所」などなど。前置きがないと、外出時の写真を投稿することが許されない世の中になってしまいました。なんなんだよ、その世の中って。不要不急の、一見無駄な時間に思えるその瞬間が、その人の人生を豊かにしているのに。仕方ないのだけれど。

 先日、コーヒー豆をきらしてしまったので、行きつけのコーヒー屋さんに行くと、GWは営業しないという話を聞きました。営業する側の気持ちを知り、全国の個人事業主は、毎日毎日ウイルス以外のいろんなものとも戦っていることを知り、すこし苦しくなりました。しかし、彼らは同時に、そんな中でもできることに目を向けて前を見ていることも知ることができました。ほんと、がんばってほしいな。

 写真のカップの中には、コーヒーが入っています。しかしこのコーヒーは注文したわけではありません。外出先でコーヒーを飲むのは、今は控えよう、というか、世間的にしてはいけなんだろうな、と考えていました。なので、コーヒー豆だけを購入して帰ろうと思っていたのですが、そんな考えを汲んでかお店の方が、自宅でも美味しく淹れられるようにと、私が購入した豆で、私が自宅で使用しているドリッパーを(わざわざ)使って、時間をかけて抽出してくれたのです。(実演・レクチャー付き)久しぶりの対話に加え、思いがけないプレゼントに、胸が熱くなりました。自分が参っているときだからこそ、身に染みたというか、よりぐっときたというか。私はあの瞬間を、きっと一生忘れないだろうと思います。

 感動体験って、そうそう、こういうことだよな。今回はすこし特別だったかもしれないけれど、普段このお店でコーヒーを飲むこと自体、私にとっては一種の感動体験だったんだな。今までそんなこと、気が付きませんでした。感染症が落ち着いた頃には、自分自身が他人に、感動体験を与えられるようになっていたいと思います。コーヒー美味しかったー。

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