『ありがとう』SS

カァーン…。 カァーン…。
踏切の警告音で僕は足を止めた。
鞄から薄ピンク色の手紙を取り出し言葉の羅列を眺めながめる毎に心が締め付けられる、手紙を貰い4日経ったが未だ返事は返せずにいた。僕も同じ気持ちを持っているからだ。

不意に甘い花の香りが鼻へと漂い横を視ると手紙の送り主が佇んでいた。
彼女は笑顔で…。でも少し不安そうな顔で明るく声を掛けた。
「読んでくれた?そろそろ返事欲しいな!」
僕は意を決し、口を開き想いを伝えた。
「手紙ありがとう。でも僕には…」

僕から彼女の方へと電車は駆け抜け警告音は止んだ、踏切が開くと同時に彼女は走り出した。その後ろ姿を視て僕は恐くなった。
僕は歩き出さぬまま踏切で佇んだ。

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