競技場には、ハードルが倒れる耳障りな音が響く。 レースの2時間前。トラックでは男子110mハードルが行われていた。 もうこんな時間か。 空になった青と白が配色された缶を置く。とても翼を授かった気分にはなれない。 直線を10秒と少し走るだけで競技が終わるなんて羨ましい。こちとらトラック1周だぞ。 憂鬱である。何が悲しくて、レース後に胃の中を全て戻すような苦しい種目をやっているのか。刑の執行を待つような心持ちで、ウォーミングアップへ向かう。 ジョギングで競技場を1周。 う