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ママ、ごめんね。

「ちょこー」って呼ぶ声が聞こえる。
あ。ママだ。
でも今日は、すぐにはママのところに
行かないの。
ママのことは大好きだけど、
お外を探険することを諦められないもの。

4年のあいだ、ずっとお外で
暮らしていた私と、私の子供のわらびを
ママはおうちに連れていってくれた。

私のような野良猫がたくさんいる場所へ、
ママは毎日ごはんを持ってきてくれた。
私が生まれる前からずっと。

ママのおうちに行くときは
とっても怖かったけど、
他の猫を気にすることも、人間や
人間がたてる音におびえることもなく、
何よりママを独り占めできることが
嬉しかったの。

そこからまた新しいおうちに
行くときも、とっても怖かった。
だから夜、網戸を壊してお外に逃げたの。
わらびと一緒に。
知らないところで、知らない匂いが
いっぱいで、茂みにじっとしていた。
次の日の夕方、ママが私を
探しにきたとき、嬉しくて
ママのところに走っていった。
そしてまた、ママとお部屋で
暮らすことになったのだけど。

でも、どうしてもまたお外に行きたくて、
昨夜、重い窓を押して隙間を作って、
破れた網戸からまたお外に出たの。

ごめんね、ママ。
ママのことは大好きで、
私のことを絶対に見捨てないからねって
ママは言ってくれたけど。
ちょこ、お外を自由に探検してみたいの。
前みたいにお外にいて、
ママがごはんを持ってきてくれる
生活の方がいいの。

ママと一緒にいたひと月と少し、
ちょこ、とっても嬉しかった。
ママ、ごめんね。
ちょこ、やっぱりお外に
いる方がいいの。

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