見出し画像

ラグビースクール低学年期におけるゲーム中心の練習によるハンドリング(キャッチ&パス)スキルの向上について vol.2

前回、『ボール送りゲーム』を通じて、自分から他の人へボールが渡るということを知ってもらいました。
また、相手が取れるようにボールを渡すこと、もらう側もボールを大事にもらうことを意識することを感じてもらいました。

ロンド


今度は、パスにフォーカスしたゲームになります。
サッカーで行われるロンドや中高生がやるロンドと少しルールを修正しています。

ルール
・5~7人1チーム
・ボールを仲間で10回パスできたら勝ち
 ボールを持って走れるのは5秒間。
・ボールを持っている子がタッチされたら1回目は止まる。2回目はターンオーバー。

 ロンドを始めた当初は、パスが1~2回しか繋ぐことができませんでした。
 "ボールを持つと走る"という状況から、周りから孤立してしまったり、ボールを持つとどうしていいかわからずにタッチされてしまう状況が多くありました。

子供達との発問を通して、以下のような気付きが出てきました。
・ボールを持ったら回りを見る
・「パス」と呼ぶだけでなく、自分が近くに行く
・かたまらない
・広いスペースへボールを持って動く
・とりやすいボールを投げる

 実際には1チームの人数も多く、タッチされたら攻守交代なので、かなりプレッシャーが厳しい状態でした。
しかしながら、子供達は30分もすると5~6回ぐらい繋げられるようになったことに驚きました。

 ここで、重要なのが今までボールを持った時には"走る"という選択肢しかなかったのが、"パス"という選択肢ができたことです。
 なぜなら、ゲームのタスク(課題)が"パス"だからです。子供達はボールを持った時の瞬時の判断に、"パス"と"ラン"の2つの選択肢を覚えたということになります。

コーチングは"混沌と即興"

 "ゲーム中心の練習"の中でコーチが『子供達に理解してほしいこと』というものがあり、それがコーチの意図でもあります。
 しかしながら、子供達は自分達で考え、自分達が持っているスキルでゲームを行うなかで、必ずしもコーチが意図した状況が起きるとは限りません。
 これが、コーチングにおける"混沌(カオス)"と言われています。
 今回のロンドにおいても、始めてみて気が付いたことが多く、正直本当に子供達がコーチの意図を理解してくれるのだろうかと不安になりかけました。

では、この混沌とした状況から『意図した状況』にどのように誘導していくかというと、コーチが「○○しろ!」では、子供達は理解してくれません。
ゲーム自体をその場で修正していきます。
これが"即興"です。

ロンド2


 前回のロンドでは、攻守交代後のプレッシャーが厳しく、ボール保持したあとの考える時間のないままタッチされてしまうことが多かったので、まずは相手のいないところでボールを回せる時間を作りたいと考えました。

ルール
・AT7人1チーム、DF4人1チーム
・ボールを仲間で10回パスできたら勝ち
・ボールを持っている子がタッチされたらターンオーバー
・ターンオーバー時に、守備側はフィールドの四隅にあるコーンを触ってから参加

 守備側のプレッシャーが弱くなったところで、パスを早く周囲のプレーヤーに回す意識がより強くなりました。

 結果として、10回パスを回すことができるようになったチームもあり、達成感を感じられるとともに、"ボールを持つ"、"周りを見る"、"パスをする"、という意識とスキルが身に付きました。

 しかし、ここでは「敵がいない間にできるだけ小さく固まって、早く10回パスを回せばいい」という子供達の考えを作ることになってしまいました。

STEPS(ゲームの修正)


では、"コーチの意図した状況"を作り出すために、ゲーム自体をどのように修正していくかというと、
ゲームセンスでは、STEPSと言って以下の様なことを中心に修正していきます。
Space(スペース)=フィールドの広さや形
Task(タスク)=ルール、課題
Equipment(イクープメント)=道具
People(ピープル)=人数
Speed(スピード)=プレー速度

例えば、
spaceで言えば、
子供達が広がれるようにフィールドを広くすることができます。
taskだと、
タッチでの攻守交代をインターセプトやダブルタッチに変えることもできます。
equipmentでは、
ラグビーボールだけでなく、サッカーボールやテニスボール、バランスボールやフリスビーにしてもおもしろいです。
peopleは、人数を減らしてスペースを広くしたり、アタックとディフェンスで人数に差をつけて、敢えてチャンスを作ることもできます。
speedを変えることにより、その場での状況判断のスキルを養うことができます。また、強度により積極性も変化してきます。ウォーキングやジョグなどが例になります。

→vol.3へ続きます。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?