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Challenge

『ラーメン食べたらまっすぐ帰るぞ』

東京駅からメトロに乗り、同じ言葉をもう5回ほど頭の中で繰り返している。

年末の車内はビジネスマンよりも、親子連れや学生さんが多かった。

腕時計を見る。

目的の駅には、13時前には着く。

これから行くお店の営業時間は11時30分〜14時30分。

よし。
私のスーパー方向音痴をもってしても、1時間ほど余裕あれば、お店に辿り着けるはずだ。

冒頭の言葉を10回ほど繰り返した頃、電車は目的地に着いた。

そこは浦安駅。

そう。

私は石立岳大プロが愛してやまない、浦安ラーメンを食べに来たのである。

サービスショットを楽しんでいるので
しばらくお待ち下さい

✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜

駅前に出て、ナビを開いた。

「ニシニススミマス」

…ねぇ。
グーグルナビ。

何度も言ってるけど、その前にまず、西がどっちかを教えてちょうだい。

ため息まじりに、大体の場所をざっくり頭に入れ、勘を頼りに、西っぽい方向に歩き出した。
(だから君は迷うんです)

おっ…!!
なんか、あってるっぽい!!(奇跡)

矢印は目的地に向かっている。
足取りが軽くなった。

でもまだ安心しちゃだめ。

ゴールが近づいてきても、お店の前に立つまでは油断できない。

最終コーナーを曲がり、直線に入る。

看板はまだ見えない。
不安がよぎる。

でも、

でもでも、、、

あったー!!!
(⁠ ⁠;⁠∀⁠;⁠)

お店を発見し、早足で駆け寄った。

ちゃんと着けた、良かった、本当に良かった、、、
(⁠´⁠;⁠ω⁠;⁠`⁠)))

でも安堵したのも束の間、私の目に飛び込んできたのは


ん???

『準備中』

え??

私は冷静に腕時計を見た。
13時10分。

そして携帯で営業時間を調べた。

うん。
調べた通りで間違いない。

おそるおそる貼り紙を見ると…

涙で霞んで前が見えない
(略してナミマエ)

12月25日〜30日まで ランチ 休

☆撮影日12月26日☆

目眩がした。
(急激にお腹が減って)

ラーメン美味しく食べたくて、せっかくならご飯も一緒に頼みたくて、朝食はグミ3粒しか食べてこなかった。

空腹でフラフラしながら、倒れ込むように、近くのガストに入店した。

席についた私はこんな感じだった。

どうして…オレは・・いつも…!

道に迷って行きたいお店に辿り着けなかったり。
辿り着いても臨時休業や営業時間変更、お店自体が無くなっていたり。

そういう事が多すぎやしませんか…?

やさぐれて、やけっぱちな気持ちがした。
でもそれは空腹がもたらす、イガイガとした気持ちだと知っている。

とりあえず、何か食べよう。

浦安まで来て、まさか家から10分で行けるガストで、ランチを食べることになるとは…。

でも幸いにも、お店は休みではなく、夜の営業はしてくれる。

むしろこんな年末まで営業してくれていて、有り難いじゃないか。

それに丁寧に入口に案内を書いた貼り紙までしてくれる、いいお店で良かった。

夜の営業は17時から。

それに備えて、軽めに食べよう。

軽く、ほんとに軽く。

ボリューム満点の若鶏のグリル!
もちろん、ライス付き!ヒャッホー☆
デザートまでついて超オトク!
甘くて冷たくて、うまぁ〜い♪

美味し過ぎてあっという間にたいらげた。


そして食べ終わったあとの私はというと…

どうして…オレは・・いつも…!(二回目)


こんなにお腹いっぱい食べてどうする…!

満足感と罪悪感で混沌としたまま、今後の予定を考えていた。

あと約3時間、時間を潰しながら、少しでもお腹を空かせなければならない。

3時間、、、微妙な時間だ。
このままガストに居続ける訳にもいかない。

そして、思い出して欲しい、冒頭の言葉を。

『ラーメン食べたらまっすぐ帰るぞ』

そう。
私は、石立さんの生活圏内(おそらく)を、ニヤニヤしながらウロウロするわけにいかないと思っていた。

ポストですら、すでにアレ気味なファンなのに、これ以上アレになるわけにはいかない。

だからラーメンを食べたらすぐ帰ろうと、鉄の決意をしながらやって来たというのに。

私は悩んだ。
相当悩んだ。

そして出した答えは…。


ウロウロ…すっか☆
(⁠・⁠∀⁠・⁠)
(鉄の決意とは)

不可抗力というわけで、3時間ほど観光することに決めた。
『近くのオススメスポット』と検索すると、真っ先に表示されたのは

☆☆☆すっごい高評価☆☆☆

コメントを見ると称賛の嵐。
しかもちょっと遠めの距離も、時間を潰すのにちょうどいい。

地図を見ると、途中までは川沿いを歩いて行けばいいようだ。

見慣れない、大きな川のある風景に心が弾んだ。

可愛い猫ちゃんの標識(=^・^=)

良い街だな〜と思った。

普通、初めて訪れる場所では、どこかしらよそ者であることを意識してしまうものだ。

でもそれが不思議と全くなかった。

それに、海に向かう川がそうさせるのか、時間がゆったり流れているようにも感じた。

天気が良く、風もない。
冬だと思えないほど柔らかく、暖かい日だった。

そしてグーグルナビに苦しめ…いえ、助けられながら、何とか迷わずに着くことができた。

とても立派な建物です

「いらっしゃいませ(⁠^⁠^⁠)どうぞごゆっくりご覧下さい」

受付の方に、にこやかに出迎えられ、そのまま順路を歩き始めた。

館内には浦安市の歴史が、壁いっぱいに描かれていた。

ジオラマや、民芸品がキレイに展示してある。
浦安市が、貝や海苔などの漁業で成り立ってきたことが、ひと目で分かるようになっていた。

そして水族館のような水槽があり、キラキラと光る、生きてるイワシに感動していた。
(⁠‘⁠◉⁠⌓⁠◉⁠’⁠)キレイ〜✨

資料館をゆっくりと堪能し、来て良かったなと満足しながら順路の先に出てみると…


ココハドコ??

充実した資料館にすっかり満足してしまい、この重要な場所の存在を忘れていた。

タイムスリップしたかのような風景に、テンションがあがる。

「おひとりですか?(⁠^⁠^⁠)ゆっくりご覧になって下さいね」

整備をしていた女性が声をかけてくれた。
そして簡単な説明と、観覧のアドバイスもしてくれた。

アドバイス通りに順路を進む。

古い町並みを懐かしむように、時間をかけて歩いた。
雑踏を忘れ、何も考えなくていい、贅沢な時間を心ゆくまで過ごした。

そして閉館時間が迫り、受付けの人に挨拶をしてから外に出た。

綺麗に整備された広場や建物を見ながら、知らない街に来てることを実感する。

そして戻る途中、橋の欄干にもたれ、綺麗な夕暮れの街を眺めていた。

私は長い間、パニック障害を患っていた。

電車やバスに乗ることも出来ず、パニックの発作が出た場所や、発作が出そうな場所を避けるように暮らしていた。

そうしているうちに、どんどん、どんどん、出来ることも、行ける場所もなくなっていき、ついにはスーパーのレジに並ぶことすら出来なくなってしまった。

終わりの見えない苦しい日々を、どのくらい過ごしただろう。

そんな毎日に明かりを灯してくれたのが、小島先生の存在だった。

雀荘のゲストに小島先生が来ることを知り、会いたい一心で文字通り死ぬ気で電車に乗った。

やっとの思いで辿り着いた麻雀荘。

でもお店に入ることも、麻雀を打つことも、何もかもが心細く、本当に恐ろしかった。

でもありったけの勇気を集め、奥歯が欠けるほど歯を食いしばり、小島先生が待つ店の扉を開けたのだ。

あの日、小島先生に会わずに帰っていたら。

私はいまだに、暗い道でしゃがみこんだままだっただろう。

そしてこの景色を見ることも、きっとなかったように思う。

普通に暮らせるようになった今でも、行ったことのない場所では不安がよぎる。

だから少しだけ遠くに目標の旗を立て、そこを目指して自分の世界を少しずつ広げることを今でも続けているのだ。

だけど、旗を立てる場所は何処でもいいわけではない。

心から行きたいと思える場所じゃなきゃ、勇気は出てくれないのだ。

私は石立さんの大好きなラーメンを食べてみたいと思った。

私にとって、旗を立てるには充分過ぎる理由だ。

勇気をくれて、ありがとう。

✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜

さあて
やっと
ラーメンです🥳🍜

お店には17時ちょうどに着き、そのまま突進した。

実は…
一人でラーメンを食べるのが苦手である。

だから浦安ラーメンを食べに行く数日前、一人でラーメンを食べに行く練習をした。

練習場所に選んだ、鴨&葱のラーメン↓

緊張して5分…いや、2分くらいで
完食しました 

その練習のおかげで、まずは躊躇することなく、お店に入ることに成功した。

そして堂々と(隅っこに)座り、それっぽくメニューを眺め、慣れた雰囲気と顔つきで浦安ラーメンをオーダーした。

※毎回思うけど…誰も見てないこの小芝居、いる?

メニューには、美味しそうな文字が並ぶ。
でもガストのせいで、ラーメン以外の料理を頼むことはできなかった。
(そう、ガストのせいでね)

程なくして、浦安ラーメンが運ばれてきた。

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

あまりの感動に、パパラッチ並みにシャッターを切った。

30枚ほど撮ったところで、私は気付いてしまった。

ラーメンに乗ってる、この具材の数々。

これって、、、
もしかして、、、

浦安の歴史が詰まってるラーメンなんじゃないのー?
(⁠‘⁠◉⁠⌓⁠◉⁠’⁠)

海苔も、貝も、魚も。
博物館で見てきた、浦安を象徴する食材ではないか。

『だから浦安ラーメンっていうのか…』

私は図らずも、浦安の歴史を学んでから浦安ラーメンを食べる事ができたのだ。

スープをひと口すする。

今まで食べたことのない、お出汁の旨味がたっぷりのスープが、胸の奥にじんわりと広がった。

そして具材ひとつひとつをゆっくりと口に運ぶ。

こんなに感慨深くラーメンを食べた事はないし、これから先も多分ないと思う。

『本当に来て良かったな』

湯気や何かで曇った視界を、何度もぬぐった。

お店を出ると、昼間の暖かさが嘘のように寒くなっていた。

でも熱くなった頬に、冷たい風が心地いい。

帰り道はナビを使うことなく、知ってる街のように歩いた。

思えば。。。

今日だけじゃなく、道に迷ったり、予定通りにいかないことばかり。

でも、そのどれもが、私の人生を彩ってくれている。

パニック障害になったことで
『みんな人知れず重たいものを持っていて、でも平気な顔をして歩いているのではないか』
そう思えるようになった。

人に優しくできてるかは分からない。
でも優しくいたいと思えるようになったのは、辛い日々があったから。

失敗や挫折、苦しい時間を体験できて良かったと言えば、負け惜しみに聞こえるかも知れない。

でも、知らない街でラーメン一杯食べるだけで、こんなに幸せな気持ちになれる人生を。

私は結構気に入っているのだ。

✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜✜

このnoteは、年末にほぼ書き終えていました。

でも地震が起きたことで、文字を書く気持ちが全く起きなくなり、最後まで完成させる事ができませんでした。

以前ポストにも書きましたが、私も過去の地震で生活が大きく変わった一人です。

今回の地震で、気持ちがかなり落ち込み、悲惨な画像だけでなく、楽しそうな人を見る事も、頑張っている人を見る事も、辛く感じる自分がいました。

そういう時は、何をしても駄目なことを知っています。

だから時間がかかっても、無理せず、気持ちが上向くまで待とうと思いました。

そしてようやく文字に向かう事ができ、当初予定していなかった、パニック障害についても書く気持ちになりました。

Mリーグが始まった年、白鳥さんが密着取材でパニック障害であることを告白されました。

当時、その勇気にとても感動したことを覚えています。

でもそれと同時に、私がパニック障害だと告白することは、一生無理だと思いました。

自分の弱さを人に見せることに、とても抵抗があったからです。

いえ、過去形ではなく、今でも抵抗があります。

でもそんな気持ちを変えるきっかけをくれたのが、石立さんでした。

ご存知の通り、第一回Мトーナメントでは素晴らしい麻雀で決勝戦に勝ち進み、リーグ戦では僅差を制しAリーガーになってくれました。

カッコイイ(,,゚Д゚)

そして先日行われた第二回Мトーナメントに再び推薦され、人々の記憶に残る麻雀を打ち、インタビューでは心を揺さぶる言葉を残してくれました。

試合後、やっとの思いで書いたポストに、沢山の方が共感の印をつけてくれました。

石立さんの麻雀は、無難な麻雀ではありません。

目標を定め、考えた上で、リスクに足を踏み入れる事ができる人です。

それはそれ
これはこれ

割り切った、感情に左右されることの少ない麻雀をいつも見せてくれます。

でもそれだけじゃないことを、多くの人が目の当たりにしました。

この時はもう
涙で画面が見えませんでした

もし無機質で冷たい、効率だけの人ならば。

どんなに強くても、どんなに勝ち進んでくれても、私はこれほどファンになっていなかったように思います。

それは去年のМトーナメントが終わった時にも感じていたことです。

そして石立さんの今年のМトーナメントは終わりました。

でももう、新しいチャレンジは始まっているのだと思います。

これから石立さんが何に向けて、どうチャレンジしていくのか。

私には分かりません。

でもきっとまた、あの素晴らしい麻雀を沢山の人に見てもらえるように。
目の前麻雀に、様々な心の変化を抱きながら、挑戦し続けてくれると思っています。

私はそれが実現するように、これからも変わらず応援していきたいと思います。

『私も彼のように、弱さに向き合える人になれたら』

そう思いながらこれを書きました。

今の私にできる精一杯のチャレンジが、このnoteを書くことでした。

取り留めのない、長い文章になってしまったけれど。

最後まで読んでくれて、本当にありがとう☺️🍀

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