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「天使ガブリエルが伝えようとしている」作品概要

作品はバイナリ(0, 1)をアートの素材として制作した、アルゴリズミック・アートです(使用言語 LiveCode)。視覚と聴覚の関連を追求したこの作品は、15世紀フランドル派の画家ロベルト・カンピンの受胎告知の画像データを音楽に変換、その工程をビデオにしています。また北方ルネサンスの油彩を使った当時の新技術が、大きくその後の絵画史を作った歴史に重ねて、バイナリという新しいアートマテリアルの、未来を切り開く力を探っています。

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21世紀の現在、言語・文字・画像・音楽等、これまで文明が築いてきた全てのメディアは、バイナリに変換して記録できます。現代アートは視覚だけまたは聴覚だけ、という一つの感覚の境界を越えた新しい世界を扱い始めました。それは出力形式さえ整えれば、データの互換が可能という意味です。

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古典絵画から音楽を取り出すプロジェクトのため、作者が開発したアプリは祭壇画の視覚データをバイナリで採取して音階に変換しました。作品ビデオは画像データを左にいる天使から右の聖母に向かって読み込み、2.8秒ごとにビデオフレームを分割したグリッドから、色彩データを3コマづつランダムに採取して音階に変換、データをMIDIピアノで演奏しています。

現在「メロードの祭壇画」と言われるこの受胎告知画は、ニューヨークのメトロポリタン美術館の所蔵で、画像はパブリックドメインです。

作品のアピールポイント

初期ルネサンスの受胎告知は、天使ガブリエルが右側の聖母に伝える祝福の声「AVE GRATIA PLENA DOMINUS TECUM」を、金のレリーフ文字で描くこともありました。15世紀に描かれたロベルト・カンピンの受胎告知は、天使が伝える声を油彩画の緻密な場面描写という、当時の新技法で表現しています。作品はバイナリで構築する新時代のデジタル技法で、15世紀の視覚情報の音声を12音階で取り出す実験アートです。アート素材もバイナリーを用いるのは時代の方向です。


2022年4月6日〜30日まで、フランス南西部の都市トゥールーズで毎年開かれる「XXV Rencontres Internationales Traverse(第15回トゥールーズ国際交流アート・フェスティバル )」に参加した時の、フランス語カタログからの日本語翻訳です。



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