中央特快ハッチポッチステーション行き
昨年春、故あって引っ越しをした。
新天地での生活、その主な移動手段は電車である。
これまでの人生のほとんどを朝9時の電車を乗り逃したら、次の電車は午後1時という田舎で暮らしてきた私としては、今、人生で一番電車に乗っている。
そんな生活を続けて間もなく一年になるが、未だに行ったことも、そこを行き先にした電車も見たことがない駅がある。
ハッチポッチステーションだ。
『ハッチポッチステーション』(英称:HOTCH POTCH STATION)は、1995年から2005年にかけてNHK衛星第2テレビ(BS2)及びNHK教育テレビで放送された子供番組。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
今ではご存じない方も多いかと思う。
EテレがまだNHK教育テレビと呼ばれていた頃に放送していた子供向けの番組、それがハッチポッチステーションだった。
最寄りの駅まで徒歩で行けない私が人生で最初に出会った駅、それがハッチポッチステーションであり、その後の私の人生における“ノリ”に大きな影響を残した存在、それもハッチポッチステーションだった。
さて、そのハッチポッチステーションがどういう番組だったかというと簡単に言えば人形劇だ。
「ごったまぜ」を意味する英単語からとった架空の駅「ハッチポッチステーション」を舞台に個性豊かなパペットたちが織り成す日常とドタバタを描くコメディ―――ただ、一つ普通の人形劇と違うのはゴリゴリに実写の人間が出てくることだ。
ゴリゴリに実写の人間、その名をグッチ裕三という。
私にとってのグッチ裕三は、ビジーフォーでも、ものまね王座決定戦でもなく、きょうの料理でもなく、ハッチポッチステーションのグッチさんのイメージが強い。
今振り返るとハッチポッチステーションはグッチ裕三によるNHK教育テレビにおける無法地帯だったイメージがある。
NHK教育テレビは、その名の通り「教育」を施すテレビであった。
「英語であそぼ」は楽しい歌と踊りでいつの間にやら英単語の教育を受けていたし、そこで放映されているアニメからはマナーや友情、人生の学びを得ていた。
そんな番組が居並ぶ中で、ハッチポッチステーションでのミニコーナー「WHAT‘S ENTERTAINMENT?」というコーナーでは、グッチ裕三とグッチーズによる洋楽と童謡のキメラのような音楽が毎日のように放送されていた。
「今夜はビート・イット」と「やぎさんゆうびん」のミックスを歌うマイケル・ハクション
「ボヘミアン・ラプソディー」と「犬のおまわりさん」のミックスを歌うGUEEN
「いとしのレイラ」と「あのこはだあれ」のミックスを歌うエリック・かけブトン
保育園・幼稚園で歌って知っている身近な童謡というオブラートに包まれた往年の洋楽のものまねをするグッチ裕三―――それを浴びるように摂取させられる経験は今後生きていても体験できないと思う。
ハッチポッチステーションは、明らかに大人向け―――番組を見る子供たちの親世代に向けたようなネタがちりばめられていた。
パペットと一緒にはしゃぐ大人、生まれる前に流行った不思議な旋律の曲に乗せて、全力でものまねをする大人。
それは、子供だった私が初めて触れた「大人の悪ふざけ」だったのかもしれないと時々懐かしくも思う。
歳を重ねた今、ふと耳に入る懐かしの洋楽につい重ねてしまうのは、ハッチポッチステーションで聴いていた童謡の歌詞だ。私は、悪ふざけが出来る大人になれたのだろうか。
そんなハッチポッチステーションが2月10日深夜0:04にNHKで再放送される。
北京オリンピック期間中の「イッキ見」放送の一つとして、ハッチポッチステーションを選んでくれたNHKに感謝をしたい。
好きなものがテーマというこのnoteで懐かしのNHK番組のダイレクトマーケティングをしてしまったが、好きなものは好きなのでしょうがない。
子供には出来ない夜更かしをして、子供番組を見ようではありませんか。
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