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雨という日

雨の日は気分が沈む

晴れの日は気分が弾む

その度に僕は単純な人間だなと思う

雨が降らなければ米や野菜は成長できない

それでも雨を好きになることはできないのだ

雨の日が嫌いになったのは幼稚園の頃だ

雨のせいで遠足が中止になったんだ

僕は遠足で持って行くはずだったお菓子を泣きながら家で食べた

お母さんはお昼ご飯にお弁当を作ってくれた

僕は不思議と遠足気分になり泣くことをやめた


中2のある日の朝、天気は雨

だけど僕は気分が弾んだ

その日のお弁当に大好きな唐揚げが入っていたが理由はそれではない

5限目に待ち構えている大嫌いな持久走が中止になるからだ

雨に感謝しながら登校した

お昼休み、大好きな唐揚げの味がしなかった

雨が止みやがったのだ

雲の切れ間からは光の筋が差している

神秘的な筋はその日足を踏み入れるはずのなかったグラウンドを堂々と照らした

5時間目、僕はグラウンドにいた

そのグラウンドの周りを20周した

雨は大嫌いだ


そんな僕は社会人になっても雨を好きになる事は無かった

貴重な土日が台無しになるからだ

土日は好きな街へ行き、好きな物を食べることにしている

しかし雨が降ると街の景色が一気に濁る

街歩きが好きな僕にとってそれは非常に致命的なものだ

去年の年末、久しぶりに東京から地元である京都に帰った

天気は雨

僕は傘を折り畳み、新幹線に乗り込んだ

自由席に座れた事に安心しながら新幹線は新大阪に向かって走り出した

ふと窓を見た

僕は息をのんだ

ライトアップされた東京タワーが雨に濁り異彩な空間を作り出していたのだ

その景色に虜になった

無意識にスマホのシャッターを切っていた

雨の日に景色の写真を撮ったのは初めてだった


年明け最初の土日を迎えた 

僕は金曜日の夜、明日どこに行こうかスマホをいじりながら考えていた

ふと頭に雨で濁る東京タワーの景色が浮かんだ

その時点で明日の行き先は決まっていた

だけど明日の天気予報は曇り時々晴れ

僕は行きの電車で願っていた

雨が降りますように

その日、天気予報は的中した

今では金曜日の夜になると雨を願う自分がいる

あの景色は僕の価値観を間違いなく変えた

今では人間が生きる為に必要不可欠である米や野菜を育ててくれる雨には感謝している

そして

僕が今まで嫌いだった雨に感謝した瞬間

雨は米や野菜だけでなく

僕自身を成長させてくれた



































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