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「デザイン」と「編集者」。2つの領域を横断する中塚大貴が掴みたいもの。

はじめに
こちらのnoteは、私が所属しているinquireのライティング勉強会の中で書いた記事です。株式会社ツクルバでオフィスやコワーキングスペーズの設計に携わっている中塚大貴さんのインタビュー記事を書かせていただきました。中塚さんの許可をいただき、こちらに公開したいと思います。

日が傾き、影が長くなる時間帯の帰り道。
いつもの街、いつもの公園。ランドセルを背負った子どもたちがじゃれ合いながら走っている。

ふと、何かを思い立ったのかいつもと違う道を歩いてみた。

「へぇ、この家は後ろからみるとこんな感じなんだ」
「あの建物は屋上がついていて、ヨガをすると気持ち良さそうだ」

いつもと違った道、いつもと違った角度。それだけなのにちょっと胸が踊るのはなぜだろう。

「デザインの知識をかじって、モノの見方が少しでも変わってワクワクしてほしいんですよね」

大学院で建築学科を卒業し、現在、株式会社ツクルバでオフィスやコワーキングスペーズの設計に携わっている中塚大貴さん。今後は、複業でデザインを軸に執筆や編集を担っていきたいと語る。建築・デザインを専門とする中塚さんが編集・執筆を通して何を成し遂げたいかお話を伺ってきました。

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建築・デザイン専門の中塚氏がもう一つの武器を手に

ーー今日はよろしくお願いします!中塚さんは大学で建築を学んだんですよね?

そうですね。大学では建築を、そして大学院では、建築の外観や内部のデザインをする意匠設計という分野に進みました。

大学院に入りたてのころは、全然ダメダメで(笑)。「いいデザインの建物」がどんなものか言い表せないくらい、言語化ができなかったんです。でも、建築史やデザイン史、社会学など多様な観点に触れることによって、自分の中に評価軸ができてきました。

ーー評価軸とは?

機能性、美しさ、新しい建物の建て方、技術的な開発など。

でも、難しいのは、建築は時代や文化的背景によって「美しい」の定義が変わるので一概に「これが美しい!」と言えないんです。歴史的背景や文化背景を学ばないと見えてこないんですよね。

ーーだから建築史やデザイン史など、歴史的観点も含めて学ぶんですね。

そうなんです。美しさ以外にも、技術や機能性など評価の軸も色々あり、同年代の建物でも評価が違うのが、学んでいて面白かったです。

ーー学べば学ぶほど建築・デザインにのめり込んでいったんですね。建築・デザイン専門にしている中塚さんは、いつごろから執筆や編集を始めたんですか?

社会人1年目ですね。同じ建築・デザインを専門とする知人と、都市のあり方や建築デザインなどの記事を掲載する「ちがう山をおりる」に取り組んだのが執筆活動の原点です。

自分の考えをストックしたり、面白い人に記事を書いてもらって思考を垣間見れるのがいいなと思って始めたんです。でも、書いているうちに、建築・デザイン専門以外の人にも広めたい気持ちや、他の分野にも携わりたい気持ちがでてきて、執筆や編集に本腰を入れ始めたんです。

「なんだかいい」から「これがいい」。デザインの知識で意思決定を変えていく。

ーー建築と執筆はかけ離れると思うのですが、建築での経験が執筆活動にいきていることはありますか?

言葉にする能力は、今の執筆活動に活きていますね。

インプットだけではなく、考えたこと、感じたことを書き出すアウトプットの講義もありました。例えば、「あなたはどういったものを、空間や場所と思っていますか?次回までに書いてきてください」と課題が与えられるんです。拙いながら1000文字くらいで自分の考えを言葉にすると、徐々に言葉にすることができるようになっていきましたね。他にも、教授が僕たちの空間や場所に対する考えを分類してくれてたり、学生同士でディスカッションしたり。対話を通して徐々にデザインに対する理解を深めていきました。

ーー私も編集者からフィードバックをもらうと、「この視点足りてなかった!」とハッとすることがよくあります(笑)。

新しい視点を得るだけで学びになりますよね。

僕はデザインという視点を皆さんに提供したいんです。そもそも、デザインって人の無意識な部分に働きかける行為なんですよね。普段使っているコップも「なんとなく可愛い」「なんとなくおしゃれ」で購入しませんでした?

ーー確かに、購入した気がします(笑)

お気に入りのコップが、実は曲線がオシャレさを体現しているんだとわかると、何だかちょっとわくわくしません?(笑)

僕が書くものを通して、全員がデザイナー並の知識を身につけてほしいとは思っていないです。デザインの知識をかじって、好奇心を掻き立てられてほしい。例えば、人の目線はこう動くとか、この色にはこんな印象を抱くとか、より開放感を感じる窓の付け方はこうだ、とか。ちょっと知るだけで、いつも見ている風景の見方が変わるような記事を届けることができるようになりたいです。

デザイナーを助ける編集者に。

ーーデザインの知識をかじって誰でも好奇心を掻き立てられてほしいとのことでしたが、今デザインを仕事にしている人たち対しては、どういう影響を与えたいですか?

影響を与える…というよりは、デザイナーに「中塚にきけば、なんか情報もっているだろう!」と頼られる編集者になりたいですね(笑)。編集やライターは膨大な情報量を扱いながら、複数の分野を横断できるのが特権ですから。

ーーデザイナーの助けになるような編集者に。

そうですね。僕が知識の共有をより潤滑にすることで、イノベーションのきっかけになってくれれば嬉しいです。日本ではデザイナー主導でのイノベーションがまだまだ少ない。業務外で時間が取れなかったり、デザイナーに事業開発の知識が少なかったり、様々な要因があると思います。でも、そんな障壁を飛び越えられるくらいのハブになれれば嬉しいと思っています。

ーーデザイナーからイノベーションが生まれてほしいなと思ったのは、いつ頃からですか?

大学院生時代に、携わった劇団の稽古場兼貸しスタジオの設計をしたのがきっかけです。この案件は予算が少なかったので、大工も一部しか雇えず、なんと天井部分は自主施工に(笑)。部屋一面の天井に貼れるものをホームセンターで必死に探した結果、アルミホイルを天井一面に貼ることにしました。

ーーアルミホイルを天井に?

そうなんです、アルミホイルを天井に貼ってしまうんです(笑)。天井高が低いスタジオなのですが、アルミホイルが光が反射して圧迫感がないんですよね。また、夜は外の通りからスタジオを見上げると、天井に書かれたロゴが明るく見えるようになっています。それに結構カッコいいんですよ。

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ーーへえー!おもしろい!

今ではこの施工方法は第三者へ積極的にシェアしていて、建築家の方や東工大のコワーキングスペースでも用いられてます。めちゃくちゃ安いので皆さんびっくりして採用してくれます。

それ以来、新しい条件や情報はイノベーションの種だと思っています。持っている知識では諦めていたことも、僕の記事を読めば打開策が手に入るような、そんな文章を書いていきたいと思っています。



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