菊地浩之さんの『日本の15大財閥』と『日本の地方財閥家30家』を読む。
菊地浩之さんの『日本の15大財閥』と『日本の地方財閥家30家』を読了。菊地さんは、家系図や企業集団の研究をしている人だそうで、興味深い本ばかり書いている人だ。
本の一番最初に書いていたのだが、財閥という言葉はコンチェルンとか地主とかコングロマリットとかに比べると定義が曖昧な言葉らしい。
『日本の15大財閥』の方は三井、三菱、住友などの歴史なのだが、わりとどの財閥も似ている内容だった。
太平洋戦争直後はGHQによる財閥解体というのがあり、三井、三菱等の名前は禁止され、同族グループを分解しなければならなかったらしい。
その後サンフランシスコ講和条約でその「過度経済力集中排除法」がなくなると、グループ名と同族企業の合併もおこなえるようになり、グループが復活する。
その流れや社長会というグループ間連絡会みたいなのがある等どのグループもわりと一緒であった。
詳細な企業系統図、グループ内の株式の持ち合い、まったく一般の人ではない濃ゆい家系図などはとても見応えがあり、それだけでもすごい価値のある本だ。
三越事件、バブルの頃の芙蓉グループバッシング(その後みずほへ統合)や『金融腐蝕列島』のモデルとなった総会屋、メガバンク統合の流れもこの財閥間の歴史の中でしっかりと理解することができた。
東宝の社長シリーズや次郎長三国志でお世話になっている森繁久彌さんの名前は、森繁さんの父親が三菱財閥の岩崎久弥とも交流のある実業家だったというのが由来だというのも初めて知って面白かった。
そして『日本の地方財閥30家』の方はムチャクチャ面白かった。こちらの方は室町時代や江戸時代からの、麻生元首相の麻生財閥をはじめとする九州の石炭財閥、日本海や捕鯨で栄えたマルハの中部家など時代時代の産業にあわせてのしあがったり滅んだりの栄枯盛衰的冒険譚にあふれて読み物としてエキサイティングだった。
特に島根県の山林王田辺家の部分は特にこういう内容が読みたい、という部分だったのでとても勉強になった。
江戸時代は松江藩の製鉄事業を支え、現代においては竹下登元首相を応援していたという山林王である。
膨大な山林や土地を所有している財閥、というのはお金持ちといっても港区のベンチャー企業の社長とはかなり違う。もう一般ピープルからは隔絶された生まれも育ちも違うまさにお金持ちの世界であり、面白い。都会に住むものにとってお金持ちというのは資本主義社会の中で企業と関係してなるものだ、とイメージしがちなのだが、大地主や豪商出身のガチお金持ちの世界が日本にももちろんあるのだ。
この辺りの地域による乖離は面白い。
東宝の社長シリーズで、小林佳樹の相手役でお世話になっている司葉子さんもこの田辺家と関係のある庄司家という鳥取の大地主の一族なのである。
あと2冊をみるととにかく膨大な量の銀行が生まれて消えて、どうやって今の三井、三菱、みずほ、りそな等になっていくかが全部書いてあり壮観である。
島津製作所の島津家、中島飛行機から現スバルの中島家、セイコーとエプソンの服部家等は現代でもなんとなく名前がつながり、イメージしやすかった。
そしてやはり財閥ということで、とにかく本家やら分家やら婿養子やらのオンパレード。奥さんのサザエさん家に同居しているマスオさんぐらいが感覚的に想像しうる最大一族構成という首都圏郊外団地っ子のオイラにとっては理屈ではわかるんだけど、体感的によくわからない世界。婿養子の方は周りにも何人かいるのでよくわかるのだが、分家というのは横溝正史ものの映画以外では見たことも聞いたこともないので、マジでよくわからないのだ。
こちらの『日本の地方財閥家30家』はエリア編と業種編に分かれていた。せっかくなのでおもなところをメモってみた。
☆甲州財閥
若尾家
根津家 東武グループ
☆江州財閥
伊藤忠兵衛 伊藤忠、旧丸紅
飯田家 高島屋 近江の国高島郡だから高島屋
☆名古屋
伊藤次郎左衛門 松坂屋
岡谷家
瀧家 タキヒヨー
紅葉屋 神野家・富田家 名鉄グループ
森村家 ノリタケ TOTO
☆九州 炭鉱
貝島家
麻生家
安川家
☆阪神
岩井家 日商岩井
本嘉納家 菊正宗
白嘉納家 白鶴
辰馬家 白鹿 白鷹
岡崎家 現あいおいニッセイ同和
川西家
☆醤油と酢
茂木家 キッコーマン
浜口家 ヤマサ
正田家 正田醤油分家
館林製粉、後の日清製粉創業者一族
美智子皇后は正田一族
中埜家 ミツカン酢
☆農林水産の部
田辺家 島根の山林王
諸戸家 三重の山林王
本間家 山形県の大地主
中部家 マルハ
☆紡績の部
大原家 岡山県 クラレ
片倉家 長野県
坂口家 鳥取県 日本レイヨン
☆機械工業の部
島津家 島津製作所
中島家 中島飛行機 現スバル 富士重工
服部家 セイコーとエプソングループ
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