のぞみちゃんは牛乳をかかさない

買い物袋は両手にさがってる。右のほうが重い。指に思いきりめりこむ重さだ。まとめ買いしたトマト缶を詰め込んだからだ。じゃがいもも入っている。かといってのぞみは、2つの袋の重さがバランス良くなるようにはいれない。いちばん重いものから軽くて潰れやすいものを、ひたすら順番にいれていくだけだ。

スーパーから家までの途中に、人通りのやたら多い商店街がある。顔が異様なまでにそっくりで母と娘と思われるベージュのセーターを着た女性二人組、ひょっとこのお面をかぶっている若い男、ラーメンを食べられる屋台をひいているねじりはちまきのおじい、青いアネモネのような色の毛を持つキツネのような犬を連れたおばさん、その他諸々大勢。大勢だ。じっくりと見ていたら、相当な時間潰しになるけれども、のぞみにとってはいつもの風景だった。通りは人でひしめいているにも関わらず、静かだった。
そんなことよりのぞみの頭の中は、明日家に遊びに来る双子のあみとあこをどう驚かせてやるかでいっぱいだった。彼女たちは常識的だが、のぞみの、味噌汁にえ、イチゴはいってるんだけど、どういうこと?といったかんじの人格を、味噌汁にイチゴはいってるね、そうだね。と日常にするすると持っていってくれるふたりなのであった。

#フィクション

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