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冷蔵庫の中の豆乳パック

わたしは豆乳が好きだ。

牛乳よりも断然、豆乳派。

といってもそのまま飲むわけではない。
普段はブラックで飲むコーヒーに気まぐれに入れてソイラテにしてみたり、プロテインを飲む時に使っている。
イソフラボンをお手軽に摂取できて、牛乳よりもまろやかで飲みやすい気がするし、常温保存ができて賞味期限も長い。

メリットはそんなところだが、飲むようになった理由は別にある。

豆乳といえば思いつく二大メーカー、キッコーマンとマルサンは紙パックを畳むと「たたんでくれてありがとう」の表記が出るのだ。
(他もそうなのかもしれないけどわたしはこのふたつが好きで飲用しているので!)

豆乳を飲むようになったのは営業の会社で働いていた新卒の頃だった。
入社してたった半年、すでに仕事内容も面白さが分からず、人間関係にも躓いていた。ストレスと不摂生で肌も荒れ、体に良いものを摂取しなければという思いで、小さいサイズの豆乳パックを買った。
飲み終わり、捨てる前にパックを畳んでふと見ると「たたんでくれてありがとう」の文字が見えた。
なんだか滲んで見えたのは豆乳パックのインクがおかしかったからではない。

その頃、殺伐とした職場の空気に疲れていた。
営業に行くため事務所を出て乗り込もうとしたエレベーターの扉を目の前で閉められるのは日常茶飯事。わたしが用意した備品を「あるじゃん、ラッキー!」と言い放って使っていく先輩たち。
誰かが用意したものに対して、感謝の言葉すら述べない職場に殆疲れていたのだ。

だれかに「ありがとう」って言われたの、久しぶりだな。

もっとも“言われた”わけではないのだが。

久しぶりの温かい言葉に目頭は熱くなり、少しだけ自己肯定感が上がった。

それからだった。
わたしは豆乳を意識的に買うようになった。
たためば必ず感謝してもらえた。
それはどんな毎日でも同じで、わたしの心の支えだった。
今思えば相当追いつめられていたんだと思う。
最初はコンビニでよく目にする小さいサイズの紙パックでコーヒー味やバナナ味を好んで飲んでいたが、ある日大きな紙パックの豆乳を買った時に気づいた。
大きな紙パックだと大きな「ありがとう」が書いてあることに。
なんだかひとまわり大きな感謝を伝えられているようで、それから大きな紙パックの豆乳もわたしの家の冷蔵庫の中で定番化した。

ところで、少し関心が出て調べてみると「たたんでくれてありがとう」と言ってくれる(しつこいようだが言ってはない)のは牛乳にはないようだった。
牛乳は「リサイクルしてくれてありがとう」が多い。
リサイクルをしないとありがとうが受け取れないのでわたしには少々ハードルが高いように思う。その点、たたむだけで「ありがとう」を伝えてくれる豆乳。

きみにこそいつもありがとうだよ。

ちなみにマルサンのごまはちは「ありがとうにゅう」って言ってくれる(言ってはry)

ありがとうにゅう

かわいいね。

今では「ありがとう」があふれる職場に落ち着き、特にそういったストレスからは解放された。でも冷蔵庫の中にある豆乳パックは今でもわたしのお守りだ。


わたしも小さな感謝をコツコツ伝えられる人間でいたいと思う。


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